着たい服が入らない!日本の服のサイズ、ちょっと小さすぎませんか?

着たい服が入らない!日本の服のサイズ、ちょっと小さすぎませんか?

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2020/10/16
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服を買いに行って、「あ! これ素敵!」と体に当ててみる。そして、唖然とする。なんで、こんなにサイズが小さいのだろう……。もっと痩せなくちゃ、着れないの?と途端に楽しかったショッピングがブルーに。

太っている痩せているに関係なく、こういった経験ありませんか?

SNSなどで、体型に関するポジティブなメッセージを配信し続けている、プラスサイズモデルの吉野なおさん(モデル名:Nao)。この連載では、過去の摂食障害に至った経験や、体型や見た目に関する問題などを執筆しています。

そんななおさんが今年5月、『どうしたら日本のファッションでサイズ展開が広がるのか増えるのか考えてみた』という記事をnoteにアップしました。この記事、さまざまな体型の人から大きな反響があったといいます。今回は、そのときの記事の反響や感想も踏まえ、「日本の服のサイズ展開の問題点」について、改めて執筆してもらいました。

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好きな服を着たい、でもサイズが合わないと思う人は、どんな体型の人でもいる。photo/Getty Images

売っている服が小さすぎる!

数年前から『服が売れない』というアパレル業界の問題をよく耳にするようになった。経済状況や時代が変化し、あらゆるものの価値が変わってきてるという話も聞く。しかし、普段XLサイズの服を着ている私にとっては『服が売れない問題』ではなく、『服が売っていない問題』を、自分で服を買うようになった20年以上前からずーっと感じていた。

『服が売っていない』と感じるの最大の原因は、日本の店頭で取り扱われるレディースアパレルアイテムのサイズ展開の狭さにある。日本のレディースサイズは、S・M・Lサイズの取り扱いがあればまだいい方で、ワンサイズや2サイズ展開のブランドも多く、それらレギュラーサイズからはみ出たサイズの女性は店頭で服を探すことは難しい。服だけでなく、下着や靴に関しても困っている女性が多いのではないだろうか。

近年、性別や生き方など『あらゆる多様性を認めよう』という雰囲気になってきてはいる。しかし、日本のレディースのアパレルアイテムとなると、その多くは「限られたサイズの女性たち」に向けて作られている印象を受ける。日本において、このアパレルのサイズ問題は『女性の体はこうあるべき』という社会的プレッシャーを強める一因になっていると私は感じるのだ。

20年前と変わらぬ、多様性のないサイズ感の市場

例えば、自分の体よりサイズの小さい服に出会ったとき「痩せなきゃな」と思ってダイエットを意識したり、「私が太っているのがいけないんだ」と自分の体に嫌悪感を覚えた経験はないだろうか?

私は中学生頃、メンズ服を買っていた。店頭では自分に合うサイズの女性用の服が売っていなかったからだ。当時、仕方なくメンズの服を着ていると、女性としての自分が社会に存在してはいけないような、社会から排除されているような感覚がして悲しく、深く傷付いていた。そして、サイズ問題に困ることなく自由にファッションを楽しめる『痩せた体の女性』に憧れた。そのことは、その後の過度なダイエットと摂食障害に陥った原因のひとつにもなっていった。

一方で、アパレルブランド側の『サイズ展開を狭めなければならない経営的事情』も耳にする。経営側としても、レギュラーサイズ以外のアイテム(プラスサイズはもちろん、ミニマムサイズについても)を取り扱いたい気持ちはあるが、それらを店頭で売ることは生産コストや在庫問題の都合で難しいことも聞いた。

簡単に言うと「売れるものだけを作る」「イレギュラーサイズは、かけたコストほど売れないから作らない」という話で、『日本人女性の平均サイズ』をもとにした商品が作られ続けている。

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海外では小さいサイズも大きいサイズも豊富。日本では対応メーカーはまだ少ない。photo/iStock

そんな理由もあって、日本のアパレルメーカーのショップでLサイズ以上の服を売っているところを私はほとんど見たことがない。下着だって店頭で種類が多いのはアンダー75サイズまで。あっても80サイズまでだ。売っていないから買えない。下着の場合、ジャストフィットなサイズ感は重要なので試着したいのだが、店頭にないので買えないという問題も発生している。

『店頭にあるものが小さくて着れない!』という経験をすると、買うのを諦めるか、ネットで大きいサイズのアイテムを探すか、店頭で買えるアイテムのサイズに合わせようとダイエットするなどという道に分かれる。積極的に店頭で買い物するのは、必然的にレギュラーサイズの女性たちだけになっているのではないだろうか。

プラスサイズブランドもあるが、テイストは限られているし、同じショッピングモール内で安易にお店をハシゴして気軽に買うことは難しい。数年前から、日本のアパレル業界でもレギュラーサイズの他にプラスサイズのアイテムを取り扱うブランドは少しずつ増えてきた。しかし、そのほとんども『大きいサイズはWEB限定商品』である。

国際化を目指すなら、サイズ対応こそ必要では?

昨今、ユニクロ・GU・しまむら・H&M・ZARAなどの、いわゆるファストファッションブランドが人気だ。価格が安く、日本全国に店舗があって誰でも買いに行きやすく、トレンドをおさえられる。実際、週末にそれらのお店に行くと、店内に人がごった返し、試着室やレジに長い行列ができていたりする(コロナ禍の現在ではでそれほどでもないかもしれないが)。

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スウェーデンのファストファッションメーカーの『H&M』。豊富なサイズ感も魅力だ。photo/Getty Images

上記のようなファストファッションブランドは、プラスサイズ女性にも人気だ。なぜなら他のアパレルショップには置いていないようなLサイズ以上のものが店頭で試着でき、買えるからだ。

外国人女性の友達からもよく「日本の服や下着が小さすぎて入らない。どこで買えばいい?」と聞かれる。彼女たちはプラスサイズという訳ではなく骨格的な問題でサイズが合うものを探すのが難しいという。そんなとき、私は外資系ファストファッションブランドを案内するが、果たしてそれでよいのだろうか?と思う。それらのブランドの多くは、彼女たちの国にもあるお店で、彼女たちはせっかく日本に来ているのに、ジャパンメイドを買えないのだ。

日本だから日本人女性の体型に合わせて作られる服が多いのは分かるが、コロナ禍以前の日本は、東京オリンピックに向けて『国際化社会』『インバウンドビジネス』で湧き立っていたのに、アパレルショップのことを考えると、なんだかモヤモヤする気分になってしまう。

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細身でも外国人には日本の服は小さいという声も多い。photo/iStock

アパレル勤務の女性たちからも上がった矛盾の声

今年の5月、このサイズ問題について、『どうしたら日本のファッションでサイズ展開が広がるのか増えるのか考えてみた』と題しnoteに書いてみた。予想以上の反響があって、私自身とても驚いた。サイズに困り惨めな経験をしたという共感の声はもちろん、アパレル業界で働く方からも様々な声が届いたのだ。

ランジェリーショップで働いていた女性からは、「そのサイズはお作りがないです、申し訳ありません」と言う案内を何度も経験して「こんなに需要があるのに、作っていないサイズが多すぎる」と常々疑問に抱いていた話を伺った。

また、9号サイズではない女性パタンナーたちが、自分では着ることがない9号サイズの服を作っていた話。ショップ店員としてお店の服が着こなせるよう必死にダイエットをしていたが骨格的に華奢になれなかった話……などなど。アパレル業界で働きながら『女性のためのサイズ』にジレンマを感じていた女性たちが多かったのだ。

そして、ファストファッションブランドが大きいサイズを店頭で取り扱うことができるのは、事業規模が全国展開だったり、国際展開していることが大きいという話も聞いた。実店舗経営できているプラスサイズブランドについても、よく調べると経営母体が大きいアパレル会社であることが多い。多くのショップがレギュラーサイズのみを取り扱うことは、生産コストや過剰在庫リスクを下げるためには仕方ないことなのかもしれない。

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コロナ禍も人気が高いユニクロ。海外展開もあり、サイズ対応も多いが、日本では大きいサイズはweb販売だ。photo/Getty Images

プラスサイズイベントで感じた『潜在需要』

基本的にファッションは、身に纏うことで安心感を与えたり気分を良くしたり前向きにさせてくれるものであると私は思う。嫌な気分になりたくて服を選ぶというのはあまり聞いたことがない。

レギュラーサイズ女性の人口が多いことは確かだと思うが、レギュラーサイズではないからこそ、試着してから買う方がいい。女性の体はお肉の付きどころが人それぞれ異なり(男性の場合も骨格の違いなどあると思う)、同じ体重や背丈であっても、似合う服は違うケースは非常に多い。また、素材の肌触りや実際に着てみたときの服の着心地なども感じながら選びたいのが心情。最近、オーバーサイズファッションが流行っているが、ダボっとしたシルエットは似合う似合わないが難しいので、これも試着は欠かせない。

先日、Instagramでプラスサイズ女性に1123人にアンケートをとってみた。

『通販で大きいサイズの服を買う時、サイズ感がわからないから「失敗してもいいように」と安い服を選んだことがある?』という質問をしたところ、84%が「ある」と答えた。

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なおさんがinstagramで行ったアンケート。

誰だって『確実なものにお金をかけたい』と思うのは当たり前だと思う。「高いものは怖くて買えない」「最近は返品交換無料サービスなどもあるが、時間と手間がかかることでファッションから遠ざかっている」「試しに安いものを選んだけど、結局やっぱり失敗してしまった」という意見もあった。

昨年、プラスサイズのファッション誌の『ラファーファ』が、『ラファーファショップ』というイベントを数日間開催した。普段はネットショップ運営だけを行うプラスサイズブランドが複数出店。服や下着、靴などをその場で試着でき、その場で購入できるというイベントだったのだが、運営側の予想を遥かに越えた数のお客様が来店した。

私もモデル兼ショッピングアドバイザーとしてイベントに参加し、会場の様子を見ていると、試着して気に入ると同じ商品を色違いで買ったり一人で数万円分爆買いしていくお客様がとても多かったのだ。いわゆる『潜在的需要』を目の当たりにして驚いた。

また、このイベントで試着できたことで、各ブランドのサイズ感を把握できたことは大きなメリットにもなる。ブランドのサイズ感がわかることで、その後ネット通販で同ブランドのアイテムを買うハードルを下げることにつながるからだ。そんな風に、普段はネットショップにしかないプラスサイズアイテム(或いはミニマムサイズアイテム)でも、店舗限定や期間限定で店頭で試着購入できる取り組みがあったら、もっと買いやすくなるのでは、と肌で感じたのだ。

自分の体をどんどん愛せなくなっていく世の中

ダイエットビジネスはいつの時代も『痩せている女性は美しい』『女性は体型を気にするものだ』というメッセージを発信し続けてきた。一方、アパレル業界では『限られたサイズの女性』のためのアイテムがデザイン豊富に用意され、新作ブランドが次々に出来る。そこに当てはまらない女性たちのサイズは「売れない」という経営的都合でバッサリ切り捨てられていく。

アパレルにとってはビジネスだから仕方がない。が、この当たり前になっている循環が、社会の中で「偏った女性像」を作りあげているように感じる。海外通販を利用するなど工夫する方法は色々あるが、日本で既製品を買い求める以上、私たち女性はこのビジネス中心の社会が求める『あるべき女性の体』を常に意識させられてしまうのだ。

極端なダイエットや摂食障害、身体醜形障害に陥ったり、自分の体を愛せなくなる女性がなぜこんなにも多いのか……。それは個人の問題だけではなく、こうした社会の背景や影響もあると感じているのは私だけだろうか。

私は既述のイベントで「好きな服が着れた!」と試着室から出てきた女性たちのうれしそうな笑顔を見たとき、仕方なくメンズ服を着ていた過去の自分が成仏したような気分だった。どんな体型の人にとっても、ファッションは自分の体を肯定的に受け入れ、心地よく包み込んでくれるものであって欲しいと思ってやまないのだ。

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「どんな体型の人でもポジティブに服を選べる社会になって欲しい」となおさんは、好きな服や下着姿もSNS上に公開している。写真/吉野なお

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