日本株市場、いよいよ「マネー大逆流」でこれから本当に起きる「ヤバい現実」

日本株市場、いよいよ「マネー大逆流」でこれから本当に起きる「ヤバい現実」

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2020/09/15
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株式市場、ヘッジファンドに「異変」あり…!

株式市場は、高値水準を維持しつつも乱高下を見せながら不安定な状況が継続している。新型コロナウイルスの悪影響とさらなる拡大懸念は薄れつつあるが、経済および業績見通しの悪化と株式市場の上昇の矛盾、乖離は拡がる一方であり、強気・弱気が錯綜する混沌とした市場環境になっているようだ。

そして、コロナ・ショック期も含め、足元の混乱相場までその影響を強く受けている投資主体がある。株式の世界で長い間隆盛を極めていたヘッジファンドだ。

ヘッジファンドは、その名の通りに市場の騰落に左右されずに損失をヘッジ(回避)する運用手法を活用し、安定的に絶対リターンを獲得する主体と定義される。運用のプロ中のプロが、高度な投資技術を用いて資産を淡々と増殖させている印象だ。そして、その彼らの投資パフォーマンスが、足元で冷静さを欠いている。

以下の図は、ユーリカヘッジ社が算出している世界のヘッジファンド・パフォーマンスのインデックスの推移だ。

図:世界のヘッジファンド指数の推移

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図:世界のヘッジファンド指数の推移 出所:Datastream

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長期的には、驚異的と言っていいほどの良好なパフォーマンスを積み上げている。

過去の大きな金融・経済危機の環境下ではさすがにリターンを棄損する場合もあるが、その後にすぐに持ち直し、再び直線的に安定したリターンを生み出すサイクルを繰り返している。

しかし、2018年以降からはパフォーマンスがまったく安定しない。

パフォーマンスを見ると…

たしかに、2018年以降は、米中貿易摩擦の深刻化や今回の新型コロナウイルスの感染拡大など、立て続けにショック級のネガティブ・イベントが発生したために、過去のように立て直す暇もなくパフォーマンスが軟調となったのかもしれない。

足元ではパフォーマンスが急回復しており、最悪期は脱出したように見えるが、これが本質的な運用成績の好転なのか、コロナ・ショックの一時的な反動なのかは現段階では判断が難しい。

少なくとも定量的には、ITバブル崩壊後の2002年から米中貿易摩擦前の2017年、そして2018年以降から現在までのパフォーマンスを定量的に比較すると、説明するまでもないほどの大きな隔たりが存在する。

図:2002年~2017年と、2018年以降のヘッジファンドのパフォーマンス比較

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図:2002年~2017年と、2018年以降のヘッジファンドのパフォーマンス比較 出所:Datastream

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過去に比べて直近は、リターンは半分程度に減少しているものの、標準偏差(パフォーマンスのプレ)は増加し、安定リターン指標であるシャープレシオは3分の1以下にまで激減している。

この点では、足元のリターンの急回復も投資リスクを高めているだけで、「安定リターンの獲得」という本来の存在意義からは逸脱している印象をぬぐえない。

では、なぜこのような事態に陥ってしまったのか、そしてこの状況が株式市場にどのような影響を与えうるのか(どのように銘柄選択に活用できるのか)について考えてみたい。

「割安」より「割高」が買われるワケ

まずは、前提知識としてヘッジファンドが過去からどのような投資スタイルを取り、それがどのように変化してきたのかを概観することから始める。

余談だが、本分析においては、前掲の世界のヘッジファンド指数と比較検証する目的から、世界で最も資金が集中する米国株市場をサンプルとして用いている。最終的には日本株のアイデアに落とし込んでいるが、直近数年だけを見ても、日本株市場と米国株市場の主要ファクターの投資効果の傾向は酷似しており、米国株のデータから導き出された結論をそのまま日本株に当てはめても大枠は問題ない。

さて、まずは過去からの投資スタイルの変化だ。以下の図は、ITバブル崩壊後の2002年5月から今回ヘッジファンドのパフォーマンスが悪化する直前の2017年末までと、2018年以降のそれぞれの主要なファクターの投資効果を比較したものである。

図:2002年~2017年と、2018年以降の主要ファクターの投資効果の比較(米国株、年率)

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図:2002年~2017年と、2018年以降の主要ファクターの投資効果の比較(米国株、年率) 出所:Datastream

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過去と直近で変化が目立つ点としては、PER、PBRなどの割安系の指標が大きくマイナスとなり、逆にROEが強いプラスのリターンを出していることだ。

ボラティリティやベータなどのプラスの効果がほぼゼロになったのは、単にリスク回避傾向の高まりだろう。EPS成長率、自己資本比率などもプラスの効果は強いが、これは過去と比較して傾向は変わらない。噛み砕いて表現すれば、割安な銘柄よりも割高な銘柄が強く買われるようになり、その根拠としてROEの高さが極端に評価されるようになったということだろう。

ほぼ真逆

また、割高化した銘柄がさらに買われ続けるモメンタム投資がブームともいえる状態であるにもかかわらず、短期のリターンリバーサル(逆張り)が依然として高い効果を発揮しているのは意外だ。これについては、長期のモメンタム傾向は堅いものの、短期的には頻繁に利食いなどの需給にさらされているということだろう。

さて、これを踏まえて、過去のファクターの投資効果と、ヘッジファンドのパフォーマンスとの連動性(相関)を検証してみたい。以下の図は、前述と同様に2002年から2017年と2018年以降に期間を2つに分け、それぞれについて各ファクターの月次の投資効果とヘッジファンド指数のパフォーマンスとの相関係数(週次)を比較したものだ。

図:2018年以前・以後ヘッジファンドと米ファクターの相関

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図:2018年以前・以後ヘッジファンドと米ファクターの相関 出所:Datastream

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2002年から2017年と2018年以降では、明確に傾向が異なる。そのまま解釈すれば、2017年まではベータやボラティリティの高い割安株投資が主体(配当利回り除く)で、ROEなどの収益や財務の質を見るファクターは嫌われていた。

そして、2018年以降はそれがほぼ逆の傾向となる。これは、先ほどの期間別のファクターの投資効果と比較しても大部分で整合的であり、ヘッジファンドが投資スタイルを時代に応じて適切に選択していたことを示し、一貫した高リターンを獲得できたのも納得の結果だ。

しかし、すでに述べたように直近3年間程度はヘッジファンドのパフォーマンス自体が振るわない。そこで、2018年以降に限定して、ファクターの投資効果と、ヘッジファンド・ファクター間のパフォーマンスの関連性(相関)を並べて比較してみたのが以下の図である。「ヘッジファンドは何がいけなかったのか」を視覚的に理解できる絵だ。

図:2018年以降の米ファクター効果とヘッジファンドリターン相関

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図:2018年以降の米ファクター効果とヘッジファンドリターン相関 出所:Datastream

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逆流現象が起きる…!

実際の投資効果とヘッジファンドの投資スタイルの間で大きな矛盾を見せるのは、赤い四角で囲った短期のリターン・リバーサルと、自己資本比率である。ベータやボラティリティも乖離はあるが、前二者と比べれば片側への偏りは弱く影響は小さいだろう。

定量的な観点からは、足元数年間のヘッジファンドは短期的な順張りを嫌い、自己資本比率の低い銘柄を好んで投資しためにパフォーマンスが悪化したと結論付けることが可能だ。

短期のリバーサルの無視は、彼らの資産の増大に伴って身軽さが失われたことが原因かもしれない。一方で、あえて低自己資本銘柄を好んだ背景は、少ない資本を有効活用して高い利益成長率とROEを実現し、PBRを切り上げつつもさらに上昇する、まさにアメリカンなイメージの成長株を中心に据えていたのだろう。

しかし、ヘッジファンド以外の世界中の投資家はそう考えておらず、資本の効率性よりも財務の健全性が重要という両者の見解の違いがあったようだ。何にせよ、保有銘柄のケアを怠ったこと、そして財務の健全性を軽視したことが、昨今のヘッジファンドの苦境を招いたことは事実だ。

では、これらの結果を踏まえて、最終的にどう投資アイデアに利用できるかを考えたい。もし、足元のヘッジファンドの好転が一過性の反転現象で、今後も彼らの苦境が継続する場合、ファンドの縮小などから保有銘柄の解消、つまり逆流現象が発生する。その際、順張りに投資されたポジションの巻き戻しからバリュー、リバーサル相場が発生しやすくなるが、同時に低自己資本比率の保有銘柄も売却の必要があるため、自己資本比率の高い銘柄が相対的にアウトパフォームしやすくなる可能性が高い。

いまこそ仕込むべき「凄い銘柄」全実名

一方で、仮に継続的な回復軌道に乗っても、今後もさらに高いパフォーマンスを求めるには、現在までの投資の失敗は修正し、スタイルの変更を迫られるのは自明だ。大枠では成長銘柄の純張りを継続するにしても、今後は短期の逆張りに機動的に対応する必要があるし、単に成長性だけでなく、財務の質の高さも考慮しなければ、今以上の高リターンは狙えない。

図:ヘッジファンドの今後とそこから導き出されるファクターの動き

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図:ヘッジファンドの今後とそこから導き出されるファクターの動き 出所:智剣・Oskarグループ

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つまり、ヘッジファンドが過去の栄光を取り戻すにしろ、このまま苦境が継続するにしろ、彼らの需給によって短期リバーサル、自己資本比率のファクターは今後プラスに動く可能性が高い。

コロナ・ショックが落ち着きを見せ、彼らの活動が前向きにも後ろ向きにも再度活発化する前に、こういった属性の銘柄を事前に準備しても決して無駄な努力にはならないだろう。

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