つぶらな瞳に長い耳。ぴょんぴょん跳ねて人を和ませる...

  • 西日本新聞
  • 更新日:2020/11/20

つぶらな瞳に長い耳。ぴょんぴょん跳ねて人を和ませる。そんなウサギが覆いの下で身を縮める様子を表した漢字が「冤(えん)」。ぬれぎぬの意味だ

▼鹿児島県警が2003年に起こした冤罪「志布志事件」の関係者がまた一人亡くなった。浜野博さん。享年82。「たたき割り」と呼ばれる強圧的な取り調べで、うその自白を取られた。恥辱を晴らすべく原告団長として国家賠償訴訟を起こし、最後は勝訴した

▼小春日和の日、鹿児島県志布志市のご自宅を訪ねた。共に裁判を闘った妻栄子さんが言う。「まさか警察が事件をでっち上げるなんて頭にないから…。大声で怒鳴られ驚くばかりでした」

▼まず取調室に呼ばれたのが栄子さん。捜査員の命令で交番の窓から「浜野栄子は2万円と焼酎2本をもらいましたーっ」と叫ばせられ、健康を損なう。次に聴取された博さんは頑として否認したが、捜査員に「妻をまた引っ張るぞ」と脅され観念した。泣きながらうその供述調書に署名した

▼焼香を終えて帰り際、栄子さんが漏らした。「県警の人間は誰一人謝りに来(こ)ん。それが許せんでねえ」

▼法治国家でなぜ冤罪が絶えないのか。全事件で取調室の全面可視化(録音・録画)が急務だ。冤罪は捜査関係者のミスや時には悪意から生まれる。無罪の証拠を隠すなど不適切な捜査で冤罪の端緒をつくった者を戒める制度も必要では。次の哀れなウサギを出してはいけない。

西日本新聞

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加