中国軍、台湾有事の際には在日米軍基地に先制ミサイル攻撃か

中国軍、台湾有事の際には在日米軍基地に先制ミサイル攻撃か

  • JBpress
  • 更新日:2021/11/26
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沖縄の米軍嘉手納基地を飛び立つFA18戦闘機(資料写真、出所:米海軍)

(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)

米国議会の政策諮問機関が11月中旬に米中関係についての報告書を公開した。その報告書では、台湾有事の際に中国が日本国内の米軍基地への先制ミサイル攻撃を想定していることが明らかにされていた。

また同報告書は、中国側のその種の攻撃を抑止するために日米が連携して実施すべき各措置についても提起していた。日本が台湾有事への具体的な対応を迫られるという現実の情勢が明確になったといえるだろう。

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実際に攻撃を開始できる態勢を強化

米国議会の米中経済安保調査委員会は11月17日、2021年度の年次報告書を公表した。同委員会は元々、米中間の経済関係が米国の国家安全保障にどのような影響を及ぼすかの調査を主目的に2000年に発足した。連邦議会上下両院の超党派の有力議員がそれぞれ任命した合計12人の専門家の委員の下、米中関係に関する学者や研究者、軍人らの協力を得て恒常的に調査と研究を続け、毎年1回、年次報告書の形で議会と政府とに政策を提案している。

2021年度の同報告書には、「台湾海峡抑止の危険な時期・台湾での戦争への中国の軍事能力と決定」と題する章が盛り込まれた。全体の約500ページのうち50ページを使ったこの章では、中国側の台湾への軍事攻撃の能力や意図と、米国側の対応策が詳しく述べられていた。

中国の状況について同報告書は「人民解放軍は台湾を軍事的に攻略し占拠する能力を初めて取得したといえる段階に近づき、実際に攻撃を開始できる態勢を強化している」という趣旨を強調した。

そのうえで同報告書は、「米国には中国の台湾への軍事侵攻を阻止する能力が今なおあるが、中国側は急速に追いついている」と述べ、中国側が米国の軍事能力や軍事介入への意思の強さを誤認した際に米中の軍事衝突のリスクが高くなるとの警告を発していた。

在日米軍基地、グアム基地への先制攻撃を想定

とくに注目されるのは台湾有事の際の日本への影響、日本の役割である。同報告書は「米国の軍事対応を阻む」という項目で、中国人民解放軍が台湾への攻撃に際して米軍の全面介入を遅らせ、阻むために、日本国内の米軍基地へのミサイル攻撃をも想定していることを明らかにしていた。

この点についての要旨は以下のとおりである。

・中国人民解放軍は台湾攻撃に際して、台湾側の軍事司令機能、情報機能、空軍と海軍、ミサイル、防空システムなどの主要拠点を破壊するためにサイバー攻撃やミサイル攻撃をかける。ただしその際に米軍が台湾への軍事支援を決め、中国側がその米軍の支援活動を事前もしくは初期段階に放置したら台湾攻略は成功しない、とみている。

・このため中国軍は、台湾有事に介入する米軍の兵力を最小限にし、その投入を最大限に遅らせる目的で、在日米軍基地への先制予防攻撃(米軍の活動を未然に防ぐという意味の予防)を想定している。その手段は、中国が最小限200基を保有するとみられる中距離弾道ミサイル(IRBM)が主体となり、在日米軍の艦艇や軍用機の破壊が目的となる。

・中国軍のこの攻撃は、在日米軍の少なくとも200機の各種軍用機やそのための司令部機能、兵站機能、滑走路などの完全な破壊を主目的とする。中国のロケット軍は、そのためのミサイルの精密照準能力を十分に取得するにいたったと判断しているとみられる。

・米軍側ではインド太平洋軍のデービッドソン前司令官が、台湾有事への米軍の大規模支援は米国本土西海岸からの出動ならば3週間はかかると証言したが、日本の基地からならばより敏速に出動でき、中国軍への脅威も増大する。このため中国軍は在日米軍の主要基地とともにグアム島の米軍基地への本格攻撃も想定している。

日本に必要な対策とは

以上のように、中国側の軍事作戦の効率化という観点からすれば、中国が台湾への軍事攻撃にあたり在日米軍基地を破壊するという意図は自然だともいえる。しかし日本にとっては日本領土への直接的な軍事攻撃であり、日本が台湾有事に直接介入することは不可避となる。

だから米中経済安保調査委員会の報告書は米国政府への政策提言として、日本の対中軍事抑止力を強化するために日本の領土や領海に中距離ミサイルを新たに配備する、あるいはミサイル防衛を大幅に強化するという措置を含む対日協議を挙げていた。

一方で同報告書は、このような在日米軍基地への先制攻撃という大胆なシナリオが中国自体に突きつける政治的リスクも指摘していた。それは以下のような趣旨だった。

・中国が台湾攻略のためとはいえ、日本と米国へ軍事奇襲をかけるという動きへの米国の同盟諸国や国際社会の反発はきわめて重大となる。日本の横田基地には朝鮮戦争時からの国連軍後方司令部もある。横田基地への中国の攻撃は国連への敵対行為ともみなされ、とくに米軍の全面的な反撃は必至である。中国首脳部はこのリスクを当然、真剣に事前考慮するだろう。

いずれにしても日本にとって、台湾の有事、つまり台湾海峡をめぐる軍事衝突という危険性は、すでに現実的に想定すべき段階になったということであろう。

古森 義久

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