五輪パラ表彰式で定番の「メダルかみ」 なぜ口元に運ぶのか、調べてみた

五輪パラ表彰式で定番の「メダルかみ」 なぜ口元に運ぶのか、調べてみた

  • 神戸新聞NEXT
  • 更新日:2021/09/15

57年ぶりの国内夏季開催となった東京五輪とパラリンピック。表彰式では定番の「メダルかみ」でアスリートの笑顔が光った一方、選手の努力の結晶を突然くわえ、批判を浴びた市長もいた。ところで、人はなぜ食べられないと分かっていてメダルを口元へと運ぶのだろう。(藤村有希子)

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東京五輪の柔道で兄妹そろって優勝し、金メダルを口に当てる阿部一二三(左)と阿部詩=7月25日、東京・日本武道館

今回の五輪で日本が獲得した金27、総数58のメダル数は、いずれも史上最多。兄妹そろって頂点に立った柔道の阿部一二三(24)と阿部詩(21)=いずれも神戸市兵庫区出身=がメダルを口に近づけ、写真に納まった姿は記憶に新しい。

東京五輪の大会組織委員会は「公式見解」としてツイッターに「メダルは食べられません」とジョークを投稿。話題になった。

日本選手で五輪のメダルをかんだ第1号は、1996年アトランタ五輪の柔道男子71キロ級で優勝した中村兼三という説が有力だ。2日後、同60キロ級を制した野村忠宏も続いた。

その後、メダルをかむしぐさは、報道各社のカメラマンによるリクエストで定着していった。

単に首から掛けただけの状態だと、メダルと顔の間に余分なスペースができ、写真の中で顔が小さくなってしまう。限られた取材時間でより良い写真を撮るための工夫といえるかもしれない。

日々、スポーツ取材に携わる神戸新聞映像写真部の記者は「かむことで、顔とメダルがコンパクトに写真に収まり、表情がより読者に伝わる」と分析。「かむと、選手の表情も和らぐ」といい、どうやら緊張した選手から笑顔を引き出す効果もあるようだ。

女子マラソンの高橋尚子や、レスリング女子の吉田沙保里らの「メダルかみ」を捉えた写真は、今も多くの人の心に残っている。

さらに取材を進めると、重大な証言が飛び出した。

「私のメダルには歯形が付いていますよ」

92年バルセロナ五輪の柔道女子72キロ超級で銅メダルを獲得した石角(旧姓坂上)洋子さん(53)=神戸市灘区。当時、日本女子の不振が続いた最重量級での快挙に、国内は沸いた。

数年後、石角さんは長崎市内の母校の小学校で講演し、メダルを披露して児童に触ってもらった。触れられなかった子もいたため、石角さんの父が自宅に招いて見てもらい、「かんでもいいよ」と促すと、1人の子ががぶりとやったという。

石角さん自身はメダルをかんだことはないそうだが、「自分一人で取ったメダルではない。それで皆さんに喜んでもらえるのなら」とほほ笑む。石角さんのメダルを口にした子は、きっと栄光の味をかみしめたに違いない。

■現代スポーツで風習復活?!人々は昔、金属をかんでいた

メダルを首に掛けられた選手は「重い」とよく表現する。厳しい鍛錬の道のりからそう感じるのかと思いきや、本当に重い。

東京五輪のメダルの重さは金556グラム、銀550グラム、銅450グラム。金と銀は夏季五輪史上最重量となった。

東京パラリンピックは金526グラム、銀520グラム、銅430グラム。視覚障害者らにもメダルの違いが分かるよう金に一つ、銀に二つ、銅に三つのくぼみを側面に施した。パラ史上初めてだという。

メダルの素材は再生金属だ。「都市鉱山からつくる! みんなのメダルプロジェクト」と銘打ち、使用済みの携帯電話や小型家電を広く集めて再利用。五輪とパラで計約5千個のメダルが作られた。

実は昔、人々は素材を確認するため金属をかんだ。

「時代劇で小判をかむ場面が出てきますよね」とメダル製造販売会社、平山商会(神戸市中央区)の平山一哉社長(63)。小判が流通した江戸時代、かんで軟らかければ金の純度が高いと判断した。

かつての風習がまた違った意味合いで現代に復活したといえるかもしれない。

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