Glass Animals、「Heat Waves」なぜロングヒット継続中? 多くの人の“パーソナル”と共鳴する楽曲の成り立ち

Glass Animals、「Heat Waves」なぜロングヒット継続中? 多くの人の“パーソナル”と共鳴する楽曲の成り立ち

  • Real Sound
  • 更新日:2021/10/14
No image

Glass Animals『Dreamland』

参照:https://spotifycharts.com/regional/global/weekly/latest

Spotifyの「トップ50(グローバル)」は、世界的に最もストリーミング再生された曲をランク付けしたチャート。本連載では、同チャートを1週間分集計した数値のデータを元に、グローバルな音楽シーンの潮流をお届けする。第3回となる今回は、10月7日公開(9月30日~10月6日)のチャート見つつ、「Heat Waves」がロングヒット中のGlass Animalsを紹介していく。

(関連:バイラルチャートを賑わすバンド、Måneskinとは何者か? ロックをベースに多彩なグルーヴ奏でるイタリアの新世代

1位と2位は先週から同じくザ・キッド・ラロイとリル・ナズ・X。Glass Animalsの「Heat Waves」が3位に上昇し、2020年にリリースされた楽曲にも関わらず上位をキープしている。先週から再度大きく上昇したのは、CKayの「love nwantiti (ah ah ah)」である。先週は36位から16位に上昇していたが、今週は16位から9位になっており、なんと今週はリミックスバージョンも17位にチャートインしている。「love nwantiti (ah ah ah)」は2019年にリリースされており、Glass Animalsの「Heat Waves」やMåneskinの「Beggin’」同様、新曲ではない楽曲がバイラルになりチャートインするという、ストリーミング時代ならではの傾向も見ることができる。

■Glass Animals「Heat Waves」多くの人の心に響いた理由

イギリスのオックスフォード出身のバンド、Glass Animals。プロデューサーとしても知られるデイヴ・ベイリーが率いる彼らの音楽性はインディー・ロックやサイケデリック・ポップスとして形容されることが多く、全てのアルバムがデイヴ・ベイリーによってセルフプロデュースされている。

2012年に、<XL Recordings>の一部である<Kaya Kaya Records>から1st EP『Leaflings』をリリースしたGlass Animalsであるが、当時デイヴ・ベイリーは大学で医学を学んでいた。しかしGlass Animalsのライブを見たアデルのプロデューサー、ポール・エプワースに見出されたことがきっかけで、デイヴは医学大学を中退し、音楽活動をより本格化させた(※1)。

2014年にはデビューアルバム『Zaba』をリリースし、2015年の世界ツアーでは1年間で130公演を開催。そんなGlass Animalsが2016年にリリースした2ndアルバム『How to Be a Human Being』はコンセプトが非常に面白い作品となっている。この作品は、ツアー中に出会った人々をインタビューし、その人物たちについて書いたものであった。そんな「他人のストーリー」を理解し、作品として落とし込んだ『How to Be a Human Being』は2017年のマーキュリー・プライズ賞にノミネートされている。

2ndアルバムで「他人のストーリー」を表現したGlass Animalsにとって、大きな転機となったのが、ドラマーであるジョー・シーワードの交通事故であった。デイヴ・ベイリーは、親友であるジョーが脳手術を受けるほどの交通事故にあい、しばらく「前を向けなかった」と語っている。彼はメンバーの交通事故がいかに3rdアルバム『Dreamland』に影響を及ぼしたかを説明している。

このアルバムのアイデアは、混乱と定かではない感情から来ている。親友が入院していて、予断を許さない状態だった。未来が怖くて、不透明だった。病院にいる数週間、前を向くのが難しく、昔のことばかりを考えていた。昔の記憶を掘り起こして、心地よくないものでも、そこに居心地の良さを見つけていた。(※2)

このような出来事があったのもあり、『Dreamland』は、今までのGlass Animalsの作品以上にパーソナルな内容となっている。ジョー・シーワードが復帰するまでの間、デイヴ・ベイリーは頻繁にロサンゼルスに足を運び、6LACK、キング・プリンセス、カリードなどのアーティストたちのプロダクションに携わっていた。そこで他のアーティストたちの制作を間近で見ることにより、「自身のストーリー」を歌詞として落とし込むインスピレーションを得たという(※3)。

この「他人の経験」と「パーソナルな経験」の組み合わせが、アルバム『Dreamland』がリリースされてから1年経った今でも「Heat Waves」が大ヒットしている理由の一つであると感じる。現役グループとして英国外で最も売れた曲になった「Heat Waves」であるが、この楽曲のMVはロックダウン中のイースト・ロンドンで隣人たちの協力を得て撮影されたものであった。デイヴはこのように語っている。

この楽曲のMVは、ライブミュージックや、ライブ文化というものへのラブレターだ。ロックダウンのピークに近所で撮影したんだ。大切なものを失い、切望し、最終的にそれを救えないことに気がつくという曲だ。(※4)

なぜリリースされてから1年以上が経っている「Heat Waves」はここまでのロングヒットになっているのだろうか。デイヴ・ベイリーは「わからないし、自分でも驚いている」と心境を明かしている。しかし本人たちは、ジョーの事故で活動を休止したことが楽曲にさらなる「共感」をもたらしたのではないか、と仮説を立てている。『Dreamland』はジョーの入院により、前を向けなくなったデイヴが過去を思い出して、ノスタルジックな気持ちを表現した作品である。特にMVでも「失った日々への愛とその寂しさ」を表現した「Heat Waves」が、パンデミック中の人々の心と共鳴したのではないか、とデイヴは考えているようだ。

また、そのノスタルジックな感情がクリエイターたちに刺さったのも事実だろう。パンデミック中に『Dreamland』がリリースされ、レーベルに「プロモーションできないから、もう次の作品を作り始めよう」と言われたが、Glass Animalsは諦めずにリミックス大会や、バーチャルライブなどを行い続けたのだ。その後も多くのプレイリストに追加され、人気サッカーゲーム『FIFA 21』にも収録された。プレイリストの追加とともに、徐々にSNS動画に「Heat Waves」を使用し、バズるクリエイターたちが増えたとデイヴは語っている。

絵を描いたり、ダンスしている人たちの動画にタグづけされるようになったんだ。人々がクリエイティブに呼応してくれてるし、それを求めていた。(※5)

2ndアルバムで「他人の経験」を理解し、そこに自分の「パーソナルな経験」を組み合わせたGlass Animalsの楽曲は、多くの人の「パーソナル」と共鳴しているのだろう。

(※1)https://www.billboard.com/articles/columns/pop-shop/5800830/glass-animals-choose-music-over-med-school-work-with-adeles
(※2)https://www.udiscovermusic.com/news/glass-animals-announce-dreamland/
(※3)https://americansongwriter.com/dreamland-glass-animals-album-interview/
(※4)https://www.nme.com/en_au/news/music/glass-animals-share-new-single-heat-waves-2698109
(※5)https://www.bbc.com/news/entertainment-arts-56667366

(Kaz Skellington (Steezy, inc.))

Kaz Skellington (Steezy, inc.)

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加