スバルが本格的レースマシンに「アイサイト」を初搭載した狙い

スバルが本格的レースマシンに「アイサイト」を初搭載した狙い

  • JBpress
  • 更新日:2022/09/23
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スーパー耐久シリーズ2022に参戦する「Team SDA Engineering BRZ CNF Concept」(筆者撮影)

(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)

スバルが本格的なレースで運転支援システム「アイサイト(EyeSight)」を使用したことが、自動車業界で大きな話題になっている。

スバルは、国内選手権スーパー耐久シリーズに今シーズンからワークスチーム(メーカーが直接運営するチーム)で参戦している。その第5戦「もてぎスーパー耐久 5Hours Race」(9月3日、4日)のST-Qクラスで、ゼッケン61番の「Team SDA Engineering BRZ CNF Concept」がアイサイトを使って走ったのだ。

ST-Qクラスは、次世代技術の開発を目的として設定されたカテゴリーである。トヨタが水素を燃料として使う「ORC ROOKIE GR Corolla H2 concept」で、またマツダが次世代バイオ燃料を使う「MAZDA SPIRIT RACING MAZDA 2 Bio concept」で参戦している。

さらに、製造過程でCO2排出量を抑えたカーボンニュートラル燃料を、日産の「Nissan Z Racing Concept」、トヨタの「ORC ROOKIE RACING GR86 CNF Concept」、そしてスバルの「Team SDA Engineering BRZ CNF Concept」という3台が使用して参戦している。

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高度運転支援システムのベンチマークに

アイサイトは、ステレオカメラと呼ばれる2つのカメラの画像認識技術を主体に使う高度運転支援システムだ。

量産車では、1999年、レガシィランカスターの最上級グレードに採用されたADA(アクティブ・ドライビング・アシスト)がアイサイトの前身である。その後、2010年代前半に、テレビCMなどで「ぶつからないクルマ」として衝突被害軽減ブレーキ(通称:自動ブレーキ)によるアイサイトの予防安全技術を広く訴え、世の中で周知されるようになる。現在は、スバル量産車のほとんどに標準装備されている。

アイサイトは自動ブレーキのみならず、前を走る車を定間隔で追従したり、車両の側面に接近したクルマがいるとドライバーに音や表示で注意を促す機能も備える。

現在、こうした高度運転支援システムは、トヨタ「セーフティセンス」、日産「プロパイロット」、ホンダ「ホンダセンシング」など、自動車メーカー各社が量産車に標準装備するようになったが、アイサイトは技術面でのベンチマークになっている状況だ。様々な評価指標でアイサイトの性能の高さが証明されていることがその大きな理由である。

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「Team SDA Engineering BRZ CNF Concept」のリアビュー。車両後部から専用機器でカーボンニュートラル燃料を給油する(筆者撮影)

レースでの使用場面は?

スバルが今回耐久レースでアイサイトを使ったのは、「スバルの代表的技術をレースで活用することへのトライ」だという。

そもそも、今年(2022年)3月のシリーズ開幕戦(三重県鈴鹿サーキットで開催)の時点で、マシンの鉄製のロールゲージの上部が、アイサイトが装着できるような形状に加工されていた。シリーズ中のどこかのタイミングでアイサイト導入の可能性を示していたのである。

今回マシンに装着されたのは量産型アイサイトのユニットで、実際に機能を作動させたのは練習走行のみ。予選中や決勝レース中は使用していないが、参戦ドライバーの一人である山内卓人選手は、「レース(環境)でのアイサイト活用は以前から魅力を感じており、今後が楽しみだ」とコメントしている。

スバルは「今後、(決勝)レースで活用するかどうかはまだ分からないが、FCY(フルコースイエロー)でのクルーズコントロールの使用を含めて検討をしていきたい」という。

FCYとは、決勝レース中にコース上で事故が発生したり故障車がいる場合、全車両が先導車の後ろを走り、コース全域で追い越し禁止の低速走行をするというレース規定である。FCY中は、ドライバーは車内でマシンの各種データを確認したり、ピットと無線交信してマシンの状況を伝えて今後のレース戦略について情報交換する。

その際、前車の後ろを一定間隔で追従走行するアイサイトのクルーズコントロール機能を使えば、ドライバーはそうした作業をリラックスしながら的確に行えるようになるかもしれない。

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「Team SDA Engineering BRZ CNF Concept」の運転席周辺(筆者撮影)

スバルは、次戦のスーパー耐久第6戦(10月15~16日に岡山国際サーキットで開催)の練習走行でもアイサイト搭載のマシンを走らせ、データ収集を行う予定だという。

2030年死亡事故ゼロは実現できるのか

スバルは自社の将来技術を総括的に説明する場として、2020年1月に「SUBARU技術ミーティング」を実施し、スバルの目指す方向性を発信している。

それによると、同社には大きく2つの目標がある。1つが「2030年に(スバル車の)死亡事故ゼロを目指す」こと。もう1つが「個性と技術革新で脱炭素社会の実現へ貢献していく」こととしている。

つまり、スーパー耐久シリーズで走らせる車は、そうした2つの目標達成のための“走る実験室”と言うこともできるだろう。

スバルは事故の原因を自車起因と他車起因に分け、自車起因については、アイサイトなど高度運転支援システムによって65%の削減を目指し、他車起因については、自動通報技術の革新と衝突後の安全強化を進めることで35%削減を目指すという。あわせて「2030年の死亡事故ゼロ」を実現するとしている。

今後もスーパー耐久シリーズでのデータ収集を含めて、スバルが持つ資産をフル活用して死亡事故ゼロの実現に向けて歩んでいくことになろう。同社は「『事故ゼロ』の実現に向けて、一般道より厳しい条件であるレース(環境)でアイサイトの画像認識などを鍛えていく」という。

だたし、本格的モータースポーツの運転は、今後も、あくまでもドライバーが主体だろう。高度な運転支援に対するシステムの介入については、ある時期に一定の制限が設けられる可能性もありそうだ。

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「Team SDA Engineering BRZ CNF Concept」のエンジン。量産車をベースに一部を改良(筆者撮影)

桃田 健史

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