「怪物中学生」と呼ばれた高知・森木、甲子園へのラストチャンス。今夏の仕上がりにスカウトは「すごくいい」

「怪物中学生」と呼ばれた高知・森木、甲子園へのラストチャンス。今夏の仕上がりにスカウトは「すごくいい」

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  • 更新日:2021/07/21
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今年7月3日、大阪桐蔭との練習試合に登板した高知3年の森木大智

【異次元な「中学野球界の怪物」】

2018年8月2日。愛媛県松山市の坊っちゃんスタジアムで行なわれた四国中学校体育大会の決勝戦。文部科学大臣杯第9回全日本少年春季軟式野球大会を制した高知中のエース・森木大智は140キロ後半のストレートを投げ込み、四国制覇へ向かっていた。付属校の高知高監督に転ずる濵口佳久監督にはなむけの試合でもあった。

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最終回の7回表、ふたつ目のアウトを2番打者から空振りで奪った次の瞬間、スコアボードには日本中学野球界で見たことのない数字が灯った。

150キローー。

「僕はベンチからあのボールを見ていましたが、レベルが違っていました」

対戦相手だった当時の西予市立三瓶中の4番で、今夏は八幡浜高の主将として愛媛大会の選手宣誓も行なった山本宙がそう語る、異次元の世界。

「自分としても目標にしていたので、思い切り腕を振って投げた」と森木。その記録により後日、全国版のスポーツニュースで取り上げられ、森木は「中学野球界の怪物」として一気にスポットライトを浴びるようになる。

その後、高知中は広島県で行なわれた第40回全国中学軟式野球大会を制し、中学軟式春夏連覇を達成。決勝戦で仙台育英学園秀光中の伊藤樹(現:仙台育英高3年)と投げ合った延長11回タイブレークを制した。そして森木は「超大物ルーキー」の称号と共に、2019年4月、高校野球に挑むことになった。

しかし......。高知高入学後の森木は「中学野球界の怪物」「150キロ」という、称号や数字の呪縛と闘う日々にさいなまれることになる。

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2018年8月、四国中学校体育大会決勝戦。森木は150キロをマークした

【「プレッシャー」「ケガ」「コロナ禍」困難な高校の日々】

「硬式野球のボールは軟式に比べて滑る感覚がある。やはり対応は難しかったです」(森木)

中学3年の秋、高知高の練習に参加し、硬式ボールを握り続けた森木はそう話した。濵口監督が「彼は本来、器用なタイプではない。積み上げて形にしていくタイプ」と説明するように、高校野球への対応には時間を要した。

その中でも、高校入学後、4月の練習試合初登板で144キロ、1年夏の高知大会で148キロを連発し超高校級の矜持を示した森木。とはいえ、「中学軟式で150キロ」が脳裏に刻まれている周囲の期待値は、彼の当時のスペックを超えるものだった。

中学で150キロを出したのなら、高校では155キロ・160キロもすぐに出るはずだし、甲子園も行けるはずーー。

そんな高い期待の代償は1年夏の高知大会決勝戦で名将・馬淵史郎率いる明徳義塾に敗れた後、右肘の違和感になって現われた。幸いにも早めのMRI検査により、「じん帯に線が入る一歩手前」で登板を回避できたが、秋のマウンド登板はまさかのコールド負けに終わった県大会準々決勝・高知中央戦での1アウトのみに終わった。

右肘を回復させ、冬のトレーニングで満を持して臨んだ2020年。今度は「コロナ禍」が襲う。夏の甲子園は中止。独自大会もオール3年生で臨むチーム方針により、2年の森木は登録なし。県大会決勝戦・明徳義塾戦で自己最速を超える151キロも出し万全の状態で臨んだはずの2年秋は、地元四国大会初戦・高松商戦で「ストレートしか頼れるボールがなくなって」(森木)と弱点が露呈し、11安打5失点5四球の乱調。「甲子園へ残されたチャンスはあと2回のみ」のプレッシャーが彼の心身のバランスを微妙に狂わせたのは想像に難くない。

【失わなかった「軸の意識」。そして「真の怪物」へ】

それでも森木、濵口監督、チームが見失わなかったこと。それは「軸の意識」だ。高知中時代は投げた後にバックステップを踏むほど思い切り腕を振る力投スタイルだった森木だが、濵口監督は中学時代から「このままではケガにつながる」とフォーム修正に着手。森木自身もレッドコードなどを用いた軸を安定させる身体づくりを土台に、「力感なく最大限出力する」形を地道に取り組んできた。

かくして迎えた2021年春。これまではまりそうではまらなかったラストピースがついにはまる。2月に左足首を負傷したことで、3月中旬の復帰後は強く踏み込んでいた左足を静かに置くようになった。それが功を奏し、「力を入れなくても強いボールがいくようになりました」と森木。春の高知大会決勝戦ではリリーフで自己最速152キロを出し、続く四国大会でも先発で151キロをマーク。決勝戦では最終回のマウンドに立ち宿敵・明徳義塾をねじ伏せると同時に、ついに世代最速(当時)となる154キロを計測した。「力感なくあのスピードが出せるのはすごい」「ドラフト1位は確実」と、NPBスカウト陣の評価も総じて高いものだった。

進化はいまだに続いている。7月3日に大阪府内で行なわれた大阪桐蔭との練習試合で森木は先発で7回を投げ9安打3失点ながら、最速152キロをマークしつつ全国屈指の強打線から11三振を奪取。投手出身のNPBスカウトが「気負っていて身体の開きが早い中でもこれだけ投げられたのは大したもの」とゲームメイク力を高く評価すれば、別の投手出身のスカウトは「プロに入ってから変化球を覚えるのは実際難しいものだけど、この時点で変化球を操れるのはすごくいい」と、スライダー、スプリット、チェンジアップ、カットボールなど多彩な変化球を用いた投球内容のよさを指摘した。

森木自身もその翌日の履正社戦後に学校を通じて「全国レベルのチーム、特に左打者と対戦できたことはいい勉強になった」とコメントを残すなど、さまざまな収穫を得ながら最後の夏に挑もうとしている。

7月18日、全国49大会最後に開幕した高知大会において第2シード・高知の初戦は22日の予定だ。「中学野球界の怪物」から「真の怪物」へ。甲子園、そしてその先にある、チーム全員の目標「全国制覇」へ。3年前の夏、坊っちゃんスタジアムで始まった物語は、いよいよクライマックスを迎える。

【profile】
森木大智 もりき・だいち
2003年、高知県生まれ。中学3年時の公式戦にて軟式球で150キロをマークし、注目される。高校ではケガに苦しむ時期を経て着実に成長。最速154キロの速球に多彩な変化球を織り交ぜる。今秋ドラフト上位候補のひとり。

寺下友徳●取材・文 text by Terashita Tomonori

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