ビジネスの処理速度を倍速に?ワーキングメモリの意外な鍛え方

ビジネスの処理速度を倍速に?ワーキングメモリの意外な鍛え方

  • 幻冬舎ゴールドオンライン
  • 更新日:2022/08/06
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ビジネスで課題を処理するのに必要な情報を、記憶のデータベースから検索をして見つけ出し、最適な情報を引っ張り出して脳のメモ帳に書きます。その情報を参照しながら目の前の課題を処理することで、スムーズに作業を進めることができるようになります。記憶力日本選手権大会6回の最多優勝者の池田義博氏が著書『世界記憶力選手権グランドマスターの 驚くほど簡単な記憶法』(日本能率協会マネジメントセンター)で解説します。

注目されるワーキングメモリは脳の機能

■処理能力を高めるワーキングメモリ

コンビニエンスストアに行って次のものを買いました。全部でいくらになるか暗算してください。

ミネラルウォーター 100円
雑誌        730円
サンドイッチ    310円
乾電池       500円
のど飴       210円

いきなり暗算などさせてしまって、申し訳ありません。ちなみに、合計は1850円ですが、合っていましたか? しかし、これは皆さんの計算力を試す目的で解いていただいたわけではありません。脳の「ワーキングメモリ」という能力とはこういうものだと実感していただくことが目的です。

暗算ですからメモは取れず、頭の中で計算するしかありません。つまり、次々と値段を足していくためには、途中の計算結果を頭の中に保持しなければならないというわけです。このように、思考するときに参考情報をメモ帳のように留めておく脳の機能のことを、ワーキングメモリ、日本語では「作業記憶」といいます。

ワーキングメモリも記憶の種類には違いないですが、一般的によく知られている記憶とは、機能が少し異なります。それは、ワーキングメモリが働く場所が、一般的な記憶が行われる場所とは違うことからもわかります。

その場所の1つは、思考や創造性といったものをコントロールする「前頭葉」というエリアです。このことから、「覚える」というよりも、どちらかというと「考える」ときに利用される能力ということです。ワーキングメモリは、近年注目されている脳の機能です。頭の回転の速さ、課題に対する処理能力などに大きく関わってきます。

例えば、仕事においてある課題に直面したとします。効率よく処理するためには、すでに自分が持っているノウハウを活用することが効率的であり、合理的です。このような状況が、まさにワーキングメモリの活躍する場面なのです。

課題を処理するのに必要な情報を、記憶のデータベースから検索を掛けて見つけ出し、最適な情報を引っ張り出して脳のメモ帳に記述します。その情報を参照しながら目の前の課題を処理することで、スムーズに作業を進めることができるようになるというわけです。

ワーキングメモリが働いている状態をよりわかりやすくするために、テレビなどで落語家さんたちが行う「大喜利」を例にあげてみます。落語家の皆さんは、司会者からのお題に対して素早く的確な答えを返します。このとき、落語家の皆さんの頭の中では、ワーキングメモリにスイッチが入り、お題に関する情報を記憶の中から猛スピードで探し出し、その情報の中から最適解を選び出すことが行われているのです。

ワーキングメモリの能力を高める2つの方法

ここで、皆さんの学習スタイルを少し思い出してください。誰でも、多かれ少なかれ得意な学習のスタイルというものが存在します。「見る」ことで学習効率が上がるタイプ、「聞く」ほうが理解がしやすいタイプ、また、言葉からの情報よりも絵やイメージで学習することに向いているタイプ、実際に体を動かして体感することで理解を深めるタイプと、人それぞれに習得がしやすい学習タイプが存在します。

当然、自分の学習タイプに合った形で勉強を進められれば、それに越したことはありません。一方、現実的には、常にそれぞれの学習タイプに即した形で学習することはほぼ不可能です。しかし、ワーキングメモリの能力を高めることで、この問題も解消できる可能性があるのです。

イギリスの高校生を対象にしたある調査において、ワーキングメモリの能力が高い学生は、どんな学習スタイルで行われた授業でも好成績を修めることができるという結果が出たのです。この結果は、ビジネスの場面の処理能力においても直結させられるのではないでしょうか。

ただし、このワーキングメモリは、一度に保持しておける記憶の容量はあまり多くありません。心理学的には「マジカルナンバー7」とよび、一度に保持できる情報の数は7個±2個などといわれていました。

最近では、もっと少なく5個±2個くらいでないかともいわれています。数字では、最初の3個を抜いた携帯電話の番号くらいといえばわかりやすいでしょうか。トレーニングによって多少は改善できるようですが、そこに注力してもあまり効率はよくありません。ワーキングメモリで鍛えるべき能力は、先程紹介したように、既知の記憶と眼の前の課題の照合能力です。これがビジネスにおいても、課題のスピード処理を可能にします。

ワーキングメモリの能力を高める方法は、大きく2つあります。

方法の1つは「運動」です。先程、ワーキングメモリが働く場所の1つが脳の前頭葉という話をしました。近年の研究により、この前頭葉の機能を高めるための一番効果的な方法は運動だということがわかってきました。運動といっても、激しいことをする必要はありません。ウオーキング程度でいいのだそうです。

ただし、研究の結果から、ゆっくり歩くのではなく、早歩きが効果的とのことです。日課としてウオーキングを取り入れて、通勤などでも積極的に歩く距離を増やせば、体力強化を図りつつ脳も鍛えられて、一石二鳥というわけです。

そして、ワーキングメモリの能力を高めるもう1つの方法は、やはり「イメージ」なのです。ワーキングメモリは、脳の中で特に「ACC(前部帯状回)」という部位が活発に働いている人ほど能力が高いということが、大阪大学の苧阪満里子招聘教授の研究によりわかっています。覚えるべき単語を「イメージしてください」と伝えてから絵に描いてもらうという、

まさに記憶法そのもののような実験を行ったところ、脳内でACCが活動しているのが見られたということです。ワーキングメモリ能力向上は、ACCの活性化が決め手ということになります。

イメージングによって高性能のワーキングメモリを手に入れ、ビジネスの処理速度を倍速にしましょう。

池田 義博
記憶力日本選手権大会最多優勝者(6回)
世界記憶力グランドマスター

池田 義博

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