リアル店舗でカフェ運営「黒字化のため交通費のみにします」大学生たちが商品開発から経営計画まで実践【長崎】

リアル店舗でカフェ運営「黒字化のため交通費のみにします」大学生たちが商品開発から経営計画まで実践【長崎】

  • NBC長崎放送
  • 更新日:2023/05/26

全国的にも珍しい “授業” として実店舗を運営している大学生たちがいます。
長崎県佐世保市の長崎県立大学では『起業家教育』の一環として、地域企業とタイアップして『商品開発』から『経営計画』まで自分たちで考え、実践するゼミがあります。

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目指すは 黒字決算!

授業で学んだことを実践で活かし、実践で得た経験を授業に反映します。
カフェによって地域に賑わいを創出し、卒業後も“起業家”として 地元に残ることも期待されています。

大学生が平戸市で運営するカフェ「 WeCH(ウェッチ)」です。

男子学生:「ポテト、アジフライ、バタクレ、シュガー、飲むコーヒーゼリーです」

注文を受け慌ただしくなる店内。
飲食店で働いているのは全員大学生ですが “アルバイト” ではありません。

学生全員:「ここは私たちが企画・運営しているカフェ"WeCH"です」

アメリカ西海岸のカフェをイメージした『WeCH』は長崎県平戸市にあります。
平日は大学の授業があるため、営業は土日・祝日だけです。

アジフライに平戸牛──地元食材にも こだわったメニュー開発

メニューは学生達が一から考えました。
クレープや軽食など、全てテイクアウトできる商品です。
オリジナリティを出すため、地元の食材にもこだわっています。

長岡 駿平さん(3年):
「平戸にある店なので、平戸産のものを使いたいなと思って。
自分たちで調べて、今は期間的に"平戸夏香"というのを使っていて」

一番人気はホットサンド。
貝殻の形をした特製のパンに”平戸産アジフライ” か ”平戸牛入りのメンチカツ”を挟んだ逸品です。
WeCHの焼き印で仕上げます。

「マネージメント」「新商品開発」…全員で役割分担 店舗改装も

佐世保市にある長崎県立大学。

田代 智治 准教授:
「自分たちの作った商品が”売れるかどうか”なんてことは、理論をいくら積み重ねても、分からない部分もある訳なんだけれども」

WeCHを運営しているのは、経営学部・田代准教授のゼミ生です。
平戸市の企業とタイアップし、2022年4月にオープンしました。

36人のゼミ生が『マネージメント』『新商品開発』など役割分担し、全員でカフェの運営に当たっています。

鶴山 すみれさん(3年):
「今からマネージメントチームの営業報告を行いたいと思います」

昨年度は月平均26万円、1年間で約300万円以上を売り上げましたが、最終的には “赤字” となりました。
当面は学生が節約することで黒字化をめざします。

鶴山 すみれさん:
「新規人件費の累計が2万2千円、収益がプラスになるまでは、マネージメントチームは “交通費のみの支給” に変更したいと考えています。
(それによって)収支は2,557円の黒字の見込みとなっています」

田代 准教授:
「学び、調査し、研究して、実践をする。これが両輪だから効果が出るんですよね」

”WeCH”があるのは、田平港近くのバスターミナルビル。
人口減少などで利用者が減り、かつての賑わいがなくなったといいます。

田代 准教授:
「平戸市の玄関口なんですよね。そこに、こうやって活用されていないものがあるって、見た目も良くないじゃないですか。
だからここを地域活性化の意味も含めて何かできないか──大学と連携しながら何かやれないか というところから、このプロジェクトがスタートしたんです」

老朽化した待合室の一部を改修し、店舗にしました。
タイル貼りやペンキ塗りなど改装工事も、ゼミ生自身が半年かけて取り組みました。

いつ 何が売れたのか?データ駆使して”経営戦略” ”新商品開発”

大学生が飲食店で働く姿は、一見アルバイトのように見えますが、経営者としての将来を見据えた思いが秘められています。

中原 実咲さん(3年):
「アルバイトだとマニュアル通りに、ただ業務をこなすだけなんですけど、常に思考しながら動くと言うのは、すごい違うところなんだなと。
常に向上心を持ちながら」

力岡 航平さん(3年):
「売り上げが伸びたら嬉しいし、伸びなかったら、なんで売れないか一緒に考えたり。毎週火曜日がゼミなので、集まって話し合う」

マネージメント・チームの学生は、過去の売り上げ実績を参考に、今年の経営戦略を立てていきます。

鶴山 すみれさん(3年):
「去年の何月だったら、どんな商品がたくさん売れていたのかと言うのを、今年度の売り上げ目標個数に生かすために、ここ(過去のデータ)から個数を見て」

新しいメニューを考えるチームもあります。今年の春は長崎県が発祥とも言われる”いなほ焼き”に挑戦しました。

回転焼きの形をしながら 中身は “あんこ” ではなく “野菜”などが入った『いなほ焼き』
WeCHではオリジナル色を出そうと、チーズや魚介類など様々な具材を試しました。

前川 華映菜さん(3年):
「ピザ用チーズ(で作った試作品)と、こっちがクリームチーズ(で作った試作品)なんですけど…
最初”ピザ用”で試作してみたときに、溶けちゃって。生地に味が吸われて、あんまりチーズ感がなかった。
クリームチーズで作ったら、チーズの味が濃いので(商品化しました)」

商品名は”ベイクドWeCH”。
海鮮・明太餅・あんバター・クリームチーズの4種類が完成し、今月から発売を始めました。

田代 准教授:
「売れる商品をどうやって作るのか── “インスタ映え” するものを地方に持ってきても、やっぱり売れないんですね。
本当にこの地域に合うものを、いかに作っていくのか」

長岡 駿平さん(3年):
「売れていけば、味も増やしたいと思っているし、味の問題だけじゃなくて、提供方法とか、提供スピードをどう上げていくか、回転率をどう上げていくかという問題もある」

目指すは黒字化「飲食店の裏側ってこうなってるのか」

開店から1年を迎えた”WeCH”
人気のメニュー”ホットサンド”だけでなく、新発売の『いなほ焼き』も含め、商品に対する客の評価は高いようです。

女性客(佐世保市から):
「お好み焼きみたいな感じなんですけど、結構素材の味を楽しめるというか」

男性客(福岡県久留米市から):
「長崎に来たらアジフライ。地域を盛り上げるために頑張って欲しいね」

地元にも溶け込んできた”WeCH”
2年目は「売上アップ」と「経費の削減」で黒字決算を目指すといいます。

鶴山 すみれさん(3年):「ただのバイトじゃ経験できない、飲食店の裏側ってこうなってるのかなとか、この”WeCH”を通して学ぶことができた部分は、大きいなと思います」

全国的にも珍しい、大学の授業で行う実店舗の経営。学生たちが卒業後も地元に残り、新たな事業で地域活性化につなげることが期待されます。

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