大変な時期に会社を引き継いだと悩む、すべての二代目社長へ 「デキる社長」と「ダメ社長」の境目とは?

大変な時期に会社を引き継いだと悩む、すべての二代目社長へ 「デキる社長」と「ダメ社長」の境目とは?

  • J-CASTニュース
  • 更新日:2020/11/22

コロナ禍のいま、業績不振に悩んでいる経営者は少なくないだろう。特に先代社長から会社を引き継いだ二代目社長ともなると、「なぜ、こんな時期に社長になったのか」と、やりきれない思いを抱えているかもしれない。

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本書「先代は教えてくれない 二代目社長の生き残り戦略」(合同フォレスト)は、「先代と比較されるプレッシャーに、もう苦しまなくてもいいんです」と、すべての二代目社長にエールを贈る本だ。

二代目らしさを発揮しながら、社会貢献できる企業へと会社を成長させる方法を伝授している。

「先代は教えてくれない 二代目社長の生き残り戦略」(大澤希著)合同フォレスト

父と対立ばかりしていた二代目

著者の大澤希(けい)氏は、株式会社フィールドプロテクト(埼玉県狭山市)の代表取締役社長。1971年生まれ。高校3年時の夏の甲子園大会に捕手として出場。明治大学に進学し、六大学野球を経験、島岡吉郎監督の薫陶を受けた。

卒業後も東芝府中で社会人野球の選手として活躍。1996年、父が創業したフィールドプロテクトに入社し、古紙の回収業務やビルメンテナンスの仕事からスタートした。44歳の時に父が急逝したことから、会社を継承。2016年、現職の代表取締役に就任。現在は環境サポート、健康サポート、教育サポートと事業を多角化している。

大澤氏は父と対立ばかりしていたという。会社は、ある大型公共施設の運営を受託し、過去最高の売上を更新するほど業績が伸びていた。儲かっていたので、クルーザーを所有していた時期もあったそうだ。

しかし、父が存命中の2006年、その公共施設の運営権を失い、売り上げの3分の1を失った。会社の業績は右肩下がりで売上高は半分近くまで落ち込んだ。

「このままではつぶれてしまう」

そんな危機感から大澤氏は新たに介護事業を立ち上げ、軌道に乗せた。そして代表権のない取締役社長になった。

先代は最大の味方だった

その頃、父は代表としての動きをしていないように見えた。それでも「俺の会社だ」とよく口にするため、大澤氏は反発した。亡くなる前に「お前の最大の味方は俺だぞ」と話した真意を理解できたのは、父が亡くなってからだという。父に変わってもらうことばかり考えていた、と悔やむ。

「私が変われば、父は、父としても先代経営者としても、最高の味方となったのです」

先代はリソースと思え。超えるものでもライバルでもない、と書いている。

本書の構成は、以下のとおり。

第1章 新米社長が会社をつぶす本当の理由――経営のWHYとHOW第2章 二代目社長はやりたいことをやろう――社員が辞めることを恐れない第3章 二代目社長のメンタルの保ち方――非難や反発とどう折り合うか第4章 社長は自ら社員に好かれようとしてはいけない――適度な距離感で主体性を引き出す第5章 社員を幸せにするのは社長の仕事ではない――社長という肩書の価値観を壊す第6章 会社経営では捨ててはいけないものがある――捨てない選択基準

最初に二代目社長の試練は、先代と比較されることだ、とも書いている。先代と比べられるため、チャレンジや改革がことごとく否定されがちだ。そこから「守り」に入ることを戒めている。

二代目社長が自分を発揮して、事業を通して社会に貢献できる企業に会社を成長させるためには、人材や事業、会社そのものなど、今すでにあるものさえ「手放す覚悟」が必要だ、と力説している。

すでに会社や社員、事業基盤があるからこそ、二代目社長は思い切り新しいことにチャレンジしやすい立場だとも。起業家よりもはるかにアドバンテージがあるのだ。

環境の変化に「適応」できるか

会社を伸ばす二代目、会社をダメにする二代目。その違いは環境の変化に「適応」できるか否かだと説く。法令や規制、制度、ルールなど会社を取り巻く環境の変化に適応できるかどうかだ。

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、オンラインでの会議や商談が当たり前になった。「大企業じゃないから、そんなのムリ」と対応を拒んでいると、経営戦略に大きな差が出ると指摘する。

いくつか参考になりそうな項目を抜き出してみよう。

・二代目社長の意外なメリットは事業領域の拡大・失敗してなんぼ。挑戦し続けることが会社の歴史をつくる・ベンチマークはしても、そのまま真似はしない・社長が「いい人」と言われたら危険信号・「家族経営」から離れる覚悟をもつ・社内のリソースが足りなければ、外注を活用すればいい・受け継ぐ魅力を家族以外が感じない会社に未来はない

このままでは日本の中小企業は滅びてしまう

菅義偉首相のブレーンで、成長戦略会議メンバーの元金融アナリストのデービッド・アトキンソン氏が「世界的に日本の生産性が低いのは、中小企業の経営者に原因がある」と指摘していることにふれ、「私たち中小企業は滅びゆく存在であるということを突きつけられているわけです」と書いている。

これに反発するのではなく、意外にも大澤氏は素直に受け止めている。米国・ラスベガスで開かれた家電見本市CESにかつて足を運び、中国や韓国のベンチャー企業の熱量の大きさに圧倒されたことがあった。

世界が変わっているのだとすれば、その流れに乗るために、経営者としてどうすればいいかと自問したという。大澤さんの会社が続けてきた廃棄物の収集・運搬は取り残されそうな業界の最たるものだと考えている。介護や教育、保育事業など新分野へ進出した背景にはそうした危機感もあったようだ。

中小企業では無理だと思われていた1日8時間労働、完全週休2日制も2020年から導入した。有給休暇の100%取得、在宅ワークの導入も始めた。2019年には、ベアを実施したため、人件費が10%上昇した。だが、やってみたら何とかなったという。中小企業だからできないと言い訳をせず、チャレンジする姿勢に感銘を受けた。

大企業のトップの言行は、しばしばメディアに登場する。だが、ふだん中小企業の経営者が何を考え、どう行動しているかは、ほとんど知る機会がない。

本書は「二代目社長の生き残り戦略」と銘打っているが、中小企業の生き残り戦略としても読むことができる。健闘を祈りたい。

「先代は教えてくれない 二代目社長の生き残り戦略」
大澤希著
合同フォレスト
1500円(税別)

J-CASTニュース

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