菅政権が発足 "実務家"...見えぬ国家像

菅政権が発足 "実務家"...見えぬ国家像

  • 西日本新聞
  • 更新日:2020/09/17
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菅義偉氏が「安倍1強」を引き継ぐ形で、国のかじ取りを担うことになった。野党時代から担当する記者として、菅氏が2012年に官房長官に就任した直後、何に取り組みたいのか聞いた。答えは「内閣人事局」。政策や理念を尋ねたつもりだったが、官僚を掌握することを最優先に挙げる姿に、「実務家」としての印象を強くした。

菅氏はその後、農協改革、外国人労働力の拡大、携帯料金値下げといった政策を次々と実現。「官僚はまず『できません』って言うんだよ」と口癖のように語り、勉強会や人事を駆使してそれを覆していく手法は、強権的とも評された。

他方、菅氏から国家観を聞いたことはない。政策の柱として掲げる「自助・共助・公助」は10年に改定された党綱領に記されており、「菅カラー」と呼ぶには無理がある。菅氏の言動からは、目指すべき国の将来像がいまひとつ見えないのだ。本人も14年に雑誌のインタビューで「正直言うと、国家観というものがなかった」と打ち明けている。

菅氏は、省庁改革、規制緩和、地方活性化といった各論を相次いで打ち出すことで求心力を高める「パッチワーク型」と言えるだろう。日本は人口減社会に突入し、国際社会では自国第一主義が広がり、米中による「新冷戦」が激化している。これまでの価値観が揺らぐ時代、国家としての方向性が示されないまま、方法論ばかりが先行するようでは心もとない。

菅氏を新首相の座に押し上げたのは、安倍政権の権力構図を維持したいという自民党内力学に他ならない。党総裁選で5派閥の合従連衡が実現したのは、菅氏が「継承」だけを旗印に掲げたからだ。

ただ、アベノミクスは行き詰まり、デフレ脱却は道半ば。「責任をもって引き継ぐ」と言うだけでは展望は開けない。森友、加計(かけ)学園問題についても「すでに結論は出ている」との立場を変える気配はなく、不信感はくすぶったままだ。

こうした問題を引き起こした一因として官僚の忖度(そんたく)が指摘されるが、「政策反対なら異動」と明言する菅氏の下で、政官のいびつな関係は温存されることにならないか。

安倍政治の功と罪に等しく向き合い、政策と制度のゆがみを修正できなければ、国民の期待は長くは続かないだろう。 (政経部次長・山口卓)

西日本新聞

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