
出資は「住民の同意」が前提
関係者によると、兵庫県福崎町の太陽光発電事業は契約を結ぶ上で「住民の同意を得ること」が前提になっていた。そしてこの部分において懸念がないという三浦容疑者側の説明が社長を出資へと動かしたという。三浦容疑者は社長に対して、「(住民から)書面での同意は得られていないが、好意的な回答を得ています」と伝えていたという。
【画像で見る】三浦容疑者は、逮捕後、無罪を主張するコメントを発表した(全文)
しかしふたを開けると状況は全く違っていた。福崎町に残る資料からは、契約が交わされた2019年6月時点で、この太陽光発電事業は“協議を一からやり直し”という状況だったことがわかる。
同年3月25日付の町議会議事録には「地元の役員から厳しい意見が出ている」「住民の同意を得るにはまだかなりの時間を要する状況」という記載がある。三浦容疑者はこうした状況を隠して出資を提案していた可能性があるのだ。
町議会議事録を書き換え?
さらに三浦容疑者が出資を募る上で利用したのが、町議会の“議事録”だったという。社長側に提出された“議事録”には住民の意見について「後ろ向きの者もいる」などと記載されていたようだが、町に残る本物の議事録には「住民にも反対者がいる」とはっきり記載されていた。
さらに提出された“議事録”には本物にはない「役所の許可を前提に条件付きの賛成としたい」という一文も加筆されていたという。
社長を説得するために議事録が書き換えられていた可能性がある。しかし当時は知るすべがなかった社長は結局、2019年6月に契約書を交わし、10億円の出資を行うこととなった。しかし前述の通り、太陽光発電事業は進むわけもなかった。
告訴の容疑は“詐欺”
関係者によると、社長は三浦容疑者と仲違いをして争う道を選ぶよりも自発的に回収を促す方が得策と考え、歩み寄る姿勢を見せていたという。
しかし三浦容疑者は自己の言い分を繰り返すのみだったらしい。社長はもはや話し合いによる解決の余地はないとして、詐欺容疑で告訴するに至った。一方、特捜部は、告訴を受けて捜査を進めたところ、業務上横領容疑で立件するのが適切と判断したとみられる。
三浦容疑者は逮捕後、弁護士を通じてコメントを発表した。
「このたびは、刑事事件の被疑者として強制捜査を受け、お取引先様をはじめとする関係者の皆様にご迷惑をおかけしたこと、深くお詫び申し上げます。再⽣可能エネルギープロジェクトの開発というリスクの⾼い業界にあって、当初予定された利益を⽣み出せなかった点について、反省すべき点はございますが、私は、業務上横領にあたるような罪を犯したことは決してありません。これまで、当局に最⼤限協⼒して理解を求めてまいりましたが、⾒解の相違によりこのような事態に⾄ったことは⼤変残念に思っております。私は、今後とも無罪を主張してまいります」
(フジテレビ社会部・司法クラブ)
社会部