五輪期間外で報道されない女子選手 「ちゃん」付け「〇〇娘」で子ども扱いも

五輪期間外で報道されない女子選手 「ちゃん」付け「〇〇娘」で子ども扱いも

  • AERA dot.
  • 更新日:2021/07/20
No image

バレーボールやサッカーの日本代表、テニスの大坂なおみら五輪で注目される女子選手は多い。だが、報酬面などで深刻な男女格差がある (c)朝日新聞社

スポーツ界が抱えるジェンダー問題が深刻だ。女子選手の報道の扱われ方や性的マイノリティーの選手たちに対する偏見など、多くの問題を抱えている。「五輪」特集のAERA 2021年7月26日号から。

【図】リオ五輪期間中 スポーツニュースに取り上げられた選手の性別と国籍はこちら

*  *  *

報道にも偏りがある。愛知工科大学の小林直美准教授は過去3大会で五輪期間中に夜のニュース番組に登場した選手の国籍と性別を調査した。前回リオ五輪で日本の男子選手が49%、女子選手が40.3%で、外国選手は男女ともに5%前後だった。男女の差はあまりないように見える。だが、五輪期間外の地上波テレビでのスポーツ放送時間の調査(日本スポーツとジェンダー学会編『データでみるスポーツとジェンダー』)では、女子選手はわずか8.7%だった。小林さんはこう分析する。

「国内の五輪報道は日本選手のメダルがフォーカスされる傾向がある。五輪のメダル数は男子選手が5割強、女子選手が4割強なので、女子選手も多く取り上げられます。が、五輪以外では圧倒的な格差があります」

描かれ方にも違いが見られるという。女子選手の場合、家族などプライベートの話題がよく取り上げられる。ニックネームでは男子選手は「王者」「エース」「史上最速」といった選手個人の実績や技量にちなんだものが多い。一方、女子選手は「ちゃん」付けや「〇〇娘」といった子ども扱いが目立った。ニュージーランドの研究者、トニー・ブルース氏の研究でも、報道量などで同様の傾向が指摘されている。

スポーツとジェンダーを考える際に忘れてならないのは性的マイノリティーの選手たちだ。男女二つのカテゴリーに分かれるスポーツの世界では、長らく「見えない存在」とされてきた。だが、今回の東京五輪でトランスジェンダーを公表した選手が初めて出場する。重量挙げ女子87キロ超級のニュージーランド代表ローレル・ハバード(43)だ。男子の国内ジュニア記録保持者だったが、性別の違和感から20代で一度引退。30代で性別適合手術を受け、女子選手として競技復帰した。

国際オリンピック委員会(IOC)のガイドラインでは、男性ホルモンの一種、テストステロン値が一定以下の状態が12カ月以上続けば、トランスジェンダー女性は性別適合手術の有無に関係なく女子種目に参加できる。ハバードは規定をクリアした。それでも「フェアじゃない」「ドーピングみたいなもの」といった批判は強い。

■差別受ける性的少数者

スポーツとジェンダー・セクシュアリティー研究が専門の井谷聡子・関西大学准教授は言う。

「身体的性別が男性だからといって、全ての男子選手が女子選手より優れた選手とは限らないのに、トランス女性がスポーツで活躍すると差別的言動にさらされる現実がある」

スポーツ現場では同性愛嫌悪も根強いという。井谷さんはこれらの背景には三つのイデオロギーが潜んでいると指摘する。

「男性のほうが優れているはずだという性差別意識や、生物には男と女しかないという性別二元性、異性愛を当然とする考えが一部の選手を排除します。たくさんの女性が五輪に出場するようになっても、こうした問題から目を背けたままではジェンダー平等の実現は程遠い」

男らしさに価値を置いたスポーツ文化を変えようと動き出したのが、今年9月開幕の日本初の女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」だ。競技レベル向上だけでなく、性別にとらわれずに一人ひとりが輝く社会の実現を理念に掲げる。同リーグ理念推進部の小林美由紀部長は言う。

「女性アスリートはパフォーマンスより外見やプライベートを取り沙汰され、性的な視線などを向けられることもある。こうした風潮を変えて、自分らしく夢を追いかけられるよう、サッカーを通じてエンパワーメント(力づけ)したい」

(編集部・深澤友紀)

※AERA 2021年7月26日号より抜粋

深澤友紀

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加