エヴァ好き中国オタクが作った『原神』なぜ世界中で大ヒット?わずか2年で売上は東京ディズニーリゾートに匹敵=牧野武文

エヴァ好き中国オタクが作った『原神』なぜ世界中で大ヒット?わずか2年で売上は東京ディズニーリゾートに匹敵=牧野武文

  • マネーボイス
  • 更新日:2022/11/25
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現在、世界中で人気を博しているRPGゲーム「原神」ですが、エヴァを愛する中国の小規模なオタク集団が生み出しました。どのようにしてお金のないオタク達が、東京ディズニーランドに匹敵するほどの売上を達成するまで成長したのか?その道程を探ります。(『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』牧野武文)

90年代生まれの中国人のビジネス発想

みなさん、こんにちは!ITジャーナリストの牧野武文です。今回は、アクションRPG「原神」(げんしん)を開発した米哈游(miHoYo)についてご紹介します。

ゲームというのは好きな方は好き、興味がない方はないとはっきり分かれるため、特定のゲームや特定のゲーム企業を取り上げると、半分以上の読者にとっては興味のない記事になりかねません。

「vol.149:中国スマホゲームの進む2つの方向。海外進出とミニプログラムゲーム」で、「羊了個羊」(ヤンラガヤン)というゲームを取り上げたのは、ゲーム産業がWeChatミニプログラムを利用して収益の拡大をねらうという新しいビジネスモデルが生まれる可能性があったからです。同じ手法が、他のエンターテイメントである映画やドラマ、音楽などで起こる可能性すらあります。

ではなぜ、「原神」というゲーム、miHoYo(中国名の読みはミハヨに近いですが、日本ではミホヨと読むのが一般的です)というゲーム開発企業を取り上げるのでしょうか。ゲームの内容の解説や攻略法をここでご紹介するつもりはありません。取り上げる理由は、90后(90年代生まれ)のビジネスの発想方法が、それまでの80后とは大きく違っていることをご紹介したいのです。

80后は、貧しい中国を知らない世代として中国社会の改革者の役割を担っている世代です。伝統的な習慣や考え方にとらわれず、旧習を打破し、場合によっては破壊をしていく創造者です。

ビジネスの世界では滴滴、ウーラマ、ピンドードーなどの創業者が80后です。滴滴はアプリでタクシーを呼ぶというサービスから始まっています。ウーラマはフードデリバリーというサービスを発明した企業です。ピンドードーはSNSとECを連動させました。テクノロジーを媒介にして、タクシー業界、飲食業界、EC業界の壁を打ち破ることで成立したサービスです。

では、90后はどのようにビジネスをつくっていくのでしょうか。あくまでも私個人の感覚ですが、miHoYoがその典型であるように思います。それを今回ご紹介したいのです。

壁を破る形でビジネスをつくっていく80后とどこが違うのかを意識しながらお読みください。

オタクカルチャーに染まった90年代生まれの中国人

miHoYoの創業者の中心人物、蔡浩宇(ツァイ・ハオユー)は1987年生まれであるため、厳密には80后ですが、90后の先駆け世代です。ちなみに95年以降がZ世代と呼ばれます。

そういう90后たちが、中国の文化を大きく変えようとしています。そして、この世代は基本的に全員がオタクです。ACGN(アニメ、コミック、ゲーム、ノベル)が趣味の中心であり、世代を通じた基礎教養になっています。もちろん、ほとんどがガチのオタクとは呼べないライト層ですが、「萌え」は誰もが理解する共通感覚になっています。このような世代が社会の中で活躍するようになっているのです。

これから90后が中国社会の中心になるとともに、ゲーム以外の分野でも同じことが進んでいきます。miHoYoは企業スローガンとして、Tech Otakus Save the World(テックオタクが世界を救う)を掲げています。今後の中国では、Tech Otakus Change the Chinaという現象が起きるかもしれません。

『原神』の売上は東京ディズニーリゾートに匹敵

原神というゲームの内容についてあまり深く触れるつもりはありませんが、お話を理解していただくために、ある程度はご紹介しておく必要があります。

原神は、男性または女性の主人公(自分の分身)が、仲間のキャラとともに世界を探索するアクションRPGです。デジタル解析プラットフォーム「Sensor Tower」は、原神の2年間での累積収入が264億元(約5,200億円)と推定できると発表しました。日本の企業情報を見ると、オリエンタルランド(ディスニーリゾート運営)の2021年の売上高が2,757億円となり、原神の売上高とほぼ同じです。原神は、東京ディズニーリゾート(コロナの影響で大幅減収しているとは言え)と同じくらいお金を稼いでいるのです。

原神の何が面白いのかは、さまざまな方が記事やブログで書いていますが、重要なのはあらゆる要素のレベルが高いということです。オープンワールドの作り込み、萌えキャラの際立ち方、バトルモーションの作り込みの細かさ、深みのあるバトルシステム、美しいグラフィック、継続的に広がるオープンワールドと追加されるイベントシナリオとキャラ、無課金でも遊べる課金圧の低さなど、この手のゲームに必要とされるすべての要素においてレベルが高いのです。

ゲームだけでなく、映画やドラマもそうかもしれませんが、気に入る点は人それぞれです。しかし、原神はあらゆる要素のレベルが高いので、さまざまな興味を持った人が異なる点を気に入って原神にハマっていきます。この受け止めの広さが原神のヒットの理由だと私は考えています。

原神のリリース前は、予告映像などを見て、多くの人が「ゼルダの伝説ブレス・オブ・ザ・ワイルド」のパクリーゲームという酷評をしました。しかし、リリースされてみると、そのような酷評はかなり減少しました。実際にプレイしてみると、見た目は確かに似ているところもありますが、路線の異なるゲームだということがわかったからです。

普段ゲームをやらない方も、原神はぜひインストールして、チュートリアルだけでも遊んでみることをお勧めします。「ゲームはここまで進化しているのか」と驚かれると思います。

ただし、本格バトルが始まると、ゲーム経験の少ない方にはかなり難易度が高いと思います。単純なバトルではなく、敵とキャラの相性であったり、攻撃の組み合わせ、重ね合わせをよく考えないと攻略ができません。今の時代は普通の難易度のゲームなのかもしれませんが、私にとっては正直手に余る難しさです。この難しさも人気の要素のひとつになっています。

miHoYoを生み出した天才エンジニア

今回は、原神を生み出したmiHoYoが、中国のゲーム業界をどう変えていったのかをご紹介します。

miHoYoの中心人物は蔡浩宇で、この人はオタクの天才と呼ばれています。5歳でゲームを遊び始め、8歳からアニメ制作に夢中になりました。

この早熟の天才が育ったのは、両親の影響も小さくありません。両親は二人とも済南交通専門学校でコンピューターを教える教師でした。5歳の頃、ゲームを遊び始めた蔡浩宇は、なんとゲームソフトのソースコードを開いて仕組みがどうなっているかを見るような子どもでした。両親は驚き、5歳の子どもに最新のコンピューターを買い与えました。それから、蔡浩宇はコンピュータに夢中になっていきます。

小学校の時はコンピューター制作コンテストで2等賞を最年少で受賞したこともあります。中学、高校ではデジタルアニメの制作と物理学に夢中になり、上海交通大学に進学をしました。ご存知の方も多いと思いますが、上海では復旦大学に並ぶ一流校です。

上海交通大学に進学をした2009年の冬、蔡浩宇は「格物末世録」というライトノベルを書きました。このライトノベルはネットには残っていないため、どのような内容のものかはよくわかりませんが、miHoYoの黒歴史と呼ばれています。若さとオタクっぷりに満ちた内容だったようです。

そして、ほぼ同時期にゲーム開発環境「MisatoEngine」を開発します。これはFlash上で2.5次元俯瞰型のゲームを制作できる開発ツールです。Misatoは、エヴァンゲリオンの登場人物葛城ミサトにちなんでいます。

この開発を手伝ってくれたのが、同級生の劉偉(リュウ・ウェイ)、羅宇皓(ルオ・ユーハオ)の2人でした。この3人がmiHoYoの創業メンバーになっていきます。MisatoEngineは中国科学院が主催した中科張江杯・青年技術イノベーションコンテンストに出品し、20万元の賞金を得ました。

翌年の2010年7月には、麻球ゲームというゲーム企業の講演に刺激を受けて、MisatoEngineを使って「娑婆物語」というゲームを開発します。このゲームの主人公は以前描いたライトノベル「格物末世録」の主人公・弥生奈奈月であり、アイコンとして綾波レイや惣流・アスカ・ラングレーも登場します。

2010年12月、蔡浩宇は「娑婆物語」を麻球ゲームが主催をしたゲーム開発コンテストに出品し、学生部門で優勝、インテル特別賞を受賞して3万元の賞金を得ました。

[星缈]米哈游大佬远古作品,《娑婆物语》Part0.

▲ビリビリに残っている「娑婆物語」の映像。MisatoEngineを使って開発されたゲーム。

このコンテストの後のメディア取材に対して、蔡浩宇はこう答えています。「地下鉄の中でたくさんの人が僕がつくったゲームについて話しているという夢を描くようになりました。商業的に成功するゲームをつくるのが僕の目標です。卒業後はゲームディレクターか開発エンジニアになりたい」。

まだ学生であるというのに、「商業的に成功するゲームを目指している」とはっきり言っているのです。

さらに、MisatoEngineのアップグレードをしている最中で、同時に美少女シューティングゲームも開発しているとインタビューで答えています。ゲームの名前は「Girls Gun NPCs」でしたが、これが後の「崩壊学園」になります。

そして、2011年1月、中心となっている3人と、ザン志成、CiCiの2人を加えて、miHoYoという名前のチームを結成します。このチーム名が後にそのまま社名になります。

エヴァンゲリオンを愛しすぎたオタクの失敗

そして、開発を始めたのが「fly me 2 the moon」です。いうまでもなくアニメ「エヴァンゲリオン」のエンディング曲の名前です。このゲームは上海市科学技術創業センターの大学生創業基金会が実施をしていた「鷹のひなプロジェクト」から得た10万元の資金で開発をしました。また、50平米のオフィスも無料で半年間利用できる権利を得ました。これで2012年2月、miHoYoが会社として成立します。

しかし、面白いのはここです。中心メンバーの3人+2人でmiHoYoを創業しましたが、目的は「世界で最高のアニメ制作会社になる」でした。ゲームをつくっているのに、目指しているのはアニメ制作会社なのです。当時の中国アニメというと「喜羊羊と灰太狼」(シーヤンヤン)が人気で、典型的な子供向けアニメです。

▲中国で有名な「喜羊羊と灰太狼」のアニメ。子ども向けであり、miHoYoのメンバーは、エヴァンゲリオンのようなオタクのためのアニメをつくりたいと考えた。

miHoYoのメンバーは全員が(というより当時の中国人の若者はほぼ全員が)エヴァンゲリオンのファンで、オタクのためのアニメをつくろうと集まったのがmiHoYoでした。

当然、制作をするのに従来のような手書きのセル画ではなく、コンピューターで制作をしようと考えています。つまり、娑婆物語やfly me 2 the moonはゲームというよりもデジタル制作アニメのゲームパートという感覚でした。

蔡浩宇はまずIP(キャラクター、世界観など)を成立させることが中心にあると考えました。そしてそのIPで3Dのデジタルアニメを制作し、ゲームパートの部分はゲームとして販売し、シナリオはライトノベルとして販売し、静止画の部分はコミックとして販売する。ACGN(アニメ、コミック、ゲーム、ノベル)のコンテンツの壁というものは、蔡浩宇の頭の中にはなく、もはや融合して一体化をしていました。

ひょっとしたら、蔡浩宇の感覚では、「格物末世録」はシナリオであり、「娑婆物語」は3Dアニメ部分であり、「fly me 2 the moon」はゲーム部分であり、パッケージは違っていても、同じ一つの作品の部品をつくっていたのかもしれません。

しかし、fly me 2 the moonのダウンロード数はトータルでも3,000本程度で成功とはとても言えませんでした。

たびたびエヴァの要素が出てくるように、あまりにもオタク寄りすぎたのです。

劉偉はこう説明します。「オタクは他の人たちは大きく違うと感じています。忠誠度が非常に高いのです。優れたコンテンツを開発すれば、必ず応えてくれる。私たちが毎日登場する新しいアニメにお金を使うように、優れた作品を開発すれば高い忠誠度で、お金を払ってくれるのがオタクなのです」。

つまり、自分たちもオタクであり、オタクのことはわかっている。オタク向けのコンテンツを開発すれば商業的にも成功できるという考え方だったようです。しかし、難しいのはオタクたちは自分たちがビジネスに利用されると察知することにも敏感で、それがわかるとそっぽを向きます。オタクたちにも納得されるクオリティにしなければならない、しかしあまりに濃すぎるとライトオタクの人たちがついてこれない。その辺りがまだうまくつかめていなかったようです。

初音ミクから命名したmiHoYoが本格始動

創業資金10万元と言えば聞こえはいいですが、実際にはコンピューターを買ったりするとすぐになくなってしまいます。開発を続けるには、2年で最低でも100万元は必要になります。miHoYoは、投資をしてくれる個人、投資会社を探すようになります。

これといった実績のないmiHoYoでしたが、救いは上海交通大学という一流校の学生起業スタートアップということでした。この大学の名前で会ってくれる投資家もいました。しかし、miHoYoのメンバーはみな内向的なオタクで、話はうまくありませんし、投資家に会うのにこざっぱりとした服装をするという常識もありません。投資家から見れば、みすぼらしい学生がやってきてボソボソと話をしてお金を出してくださいと言われることになります。しかも目論見書には「世界で最高のアニメ制作会社になる」と書いてあるのに、具体的なプランというのも特にありません。

しかし、斯凱網絡科技(SKY)という企業が投資を申し出てきます。担当者はオタクとアニメに理解があり、miHoYoのメンバーが住んでいた(この時はまだ大学院生です)学生宿舎にまで会いにきてくれ、100万元の出資を申し出ました。これが最初のmiHoYoへの投資となります。

miHoYoにはさらにもう2人加わり、7人体制となりました。役割ははっきりとしていました。蔡浩宇がコンテンツ制作のプロデューサー兼ディレクター兼アニメーター兼プログラマーで、技術関係も担当しています。羅宇皓が商品設計と販売を担当しています。劉偉が経営と総務を担当しています。劉偉が表向きの代表者です。そして、蔡浩宇と羅宇皓の名前は偶然にもHaoYu、YuHaoと似ているため、HとYを使う社名にし、さらに初音ミクのmiを使ってmiHoYoとしたと言われています。

蔡浩宇は新しいIPとして「崩壊学園」を構想し、キャラクター設定、世界観設定を進めていきます。どのような形でアプトプットするかをメンバーで話し合い、スマホゲーム、コミック、アニメ、音楽に展開をすることに決定します。

その中でも、最もつくりやすいスマホゲームの開発を最初に行うことにしました。

2012年末には「崩壊学園」(日本発売になった崩壊学園はこの次のバージョンです)をリリースしました。6元の有料アプリです。しかし、これも空振りでした。

劉偉は言います。「2013年は、miHoYoが最も苦しい時期でした。投資家の資金は得られてもお金が稼げない。私たちは自分の給料を4000元に設定していましたが、同級生たちは卒業をして1万元だとか2万元の給料をもらうようになっています。つらかったですね」。

2013年、miHoYoの年間収入は130万元(約2,500万円)でした。7人の会社ですから、とても回っていきません。投資資金もほとんど底をつく状態になりました。

この数ヶ月間、7人は毎週週末は会議をしていたといいます。どうやったらmiHoYoを続けていくことができるかということがテーマです。失敗はしたけど崩壊学園のIPをさらに展開をしていくか、それとも当時流行っていた安直なカードバトルゲームを開発して資金を稼ぐかというものでした。

その結果、崩壊学園のIPで、もう一度スマホゲームを開発をして勝負をしてみようということになりました。わずか7人で質の高いスマホゲームを開発するという無謀な挑戦を行うことにしたのです。

劉偉は開発現場を抜け出して、投資家の間を回りましたが、成果は得られませんでした。崩壊学園はオタクの間では評価をされて、企業の担当者は投資話に乗ってくるのですが、経営層から断られてしまいます。

ついに出たヒット作「崩壊学園2」

2014年にリリースをしてヒットとなったのが「崩壊学園2」です(これが日本発売の崩壊学園になります)。美少女横スクロールシューティングゲームです。

miHoYoはこの「崩壊学園2」で「崩壊学園」の10倍の売上を目標にしていましたが、実際は100倍を突破するという大成功になりました。この頃には、中国の若い世代の多くがスマホを使うようになっていたことも大きな要因でした。これでようやくmiHoYoの経営は安定をします。

しかし、7人は休む暇もありません。崩壊学園2リリース後3日目にはサーバーがダウンをしました。蔡浩宇はサーバーの前に座り込んで監視をし、4時間ごとに再起動をしなければならなくなりました。さらにアプリからは大量のバグが発見され、課金もうまくできない現象まで起こりました。コールセンターなどもないため、代表の劉偉自ら電話に出て顧客対応をしていました。当時は全員が朝方3時まで働いて、翌朝9時には出勤するという生活だったそうです。

崩壊学園2の運営が落ち着いてみると、miHoYoには大金が残りました。これにより、人を雇うことができ、エンジニアチーム、アニメーターチームをつくり、次の「崩壊3」(崩壊3rd)の開発が始まりました。

この「崩壊3」はもはや3Dアニメといってもいいほどクオリティが高くなりました。ゲームは美少女シューティングですが、そのモーションが多彩で滑らかで見事なのです。3Dアニメのバトルシーンだけを抜き出してゲームにした構造です。このモーションの見事さ、多彩さ、滑らかさは「原神」にも受け継がれます。

崩壊学園2がヒットをすると、あれだけこちらから回っても相手にしてくれなかった投資家や企業が向こうから出資を申し出ることが相次ぐようになりました。しかし、このような申し出をmiHoYoはすべて断りました。理由は簡単です。開発資金ならたっぷりあるからです。彼らが商業的に成功をしたいと言っているのは、自分がお金持ちになりたいからではありません。次の作品の開発資金が欲しいだけなのです。これ以降のmiHoYoは、お金があればあるだけ制作に賭けてしまい、クオリティーが上がっていく状態になりました。

この「崩壊3」も大成功で、崩壊学園2とは1桁違うお金が入ってくるようになりました。すると、miHoYoは当然のようにそのお金を次の作品の制作に使っていきます。そこから生まれたのが「原神」なのです。

原神はなぜ成功することができたのか?

原神の特徴は多様性です。主人公も男性か女性を選べるようになっています。これは男性が自分の分身キャラを男性にするか女性にするかを選べるというだけでなく、女性も分身キャラを男性か女性を選んで遊べるということです。実際、原神を遊ぶ女性は珍しくありません。

また、登場する都市も西洋風、中華風、日本風とさまざまな文化の都市が登場します。これも世界中で遊ばれることを意識したものです。

しかし、蔡浩宇は「全人類に共通する美しい風景がある」と言います。原神ではその美しい風景がふんだんに登場します。ゲーム開発環境「Unity3D」を使っているため、ゲームの背景は常に3Dでリアルに描かれます。美しい風景を画像として挿入するというのではなく、ゲーム世界を移動している間にふと美しい風景に出会うのです。

原神では、光の方向と物体の反射については細かいチェックが入り、何度でもやり直しをします。ゲームの中では1日の時間が流れていて、昼間もあり夜もあり、太陽、月は一定のルールで方向が変わり、光の強さも変わっていきます。風景もこの光の変化によって変わっていきます。

これにより、「美しい風景の場所が用意されている」のではなく、ゲーム世界内で移動している時に偶然、美しい風景に出会う、発見するということが起こります。そのため、それぞれのプレイヤーが、自分だけの「美しい風景」に出会っているのです。

原神の最初のリリース版では33名のキャラクターが用意され、毎年17名ずつ追加されていきます。このキャラクター設計も独特です。あまり質の高くない萌えゲーの場合、髪は「ロング、ショート、ポニーテール」、色は「黒、茶、金髪」などという要素を選び出して、順列組み合わせでキャラを生成していくようなことをします。しかし、このやり方だとキャラに感情移入ができず、飽きがきてしまいます。

原神では先にシナリオ設計が行われます。シナリオが決定してから、その登場人物としてキャラ設定が行われます。

そのため、キャラとシナリオがしっかりとリンクをし、記憶に残るため、愛着が湧いてくるのです。

しかも、キャラ決定権を持つ監督という役職がありません。一定の資格を持つスタッフが参加できるキャラ決定会議があり、そこで全員一致で採用されるまで何度でも練り直します。

美術スタッフが原案を描き、それを3Dモデル化したデータを元に全員で全員が納得いくまで話し合い修正を加えていきます。ですので、監督個人の趣味が全面に出てしまい、偏ったキャラばかりになるということも起きません。

この他、ゲームの細かい話をしていたらキリがありません。一言で言えば、崩壊3で大きな資金を得たため、原神では自分たちがこだわりたいところを徹底的にこだわった仕事をしたということなのです。そして、人を雇用することもできるようになり、原神は約800名のスタッフで制作されました。出世作の崩壊学園2の7人から比べると100倍以上のスタッフです。

テンセントからの出資話にも袖を振る

原神は2020年9月にリリースされますが、この直前、テンセントが接触をして投資を持ちかけています。しかも、株式を保有させてもらうだけで制作内容には一切口出しをしないという好条件でした。この話もmiHoYoは断ります。理由は簡単です。お金はもうじゅうぶんにあるからです。

miHoYoの中心メンバーがどのように考えているのかは、インタビュー記事などから推しはかるしかありませんが、彼らは自分の人生の経済的成功には無関心です。というより保有株だけで富豪と呼べるほどの資産家になっているため、それ以上の経済的成功を求めることに意味を感じていないのだと思います。現在の持ち株は蔡浩宇が41%、劉偉が22.6%、羅宇皓が21.4%、杭州米芸投資が15%となっていますが、米芸投資は最初に投資をしてくれた斯凱の投資会社「斯凱投資」を引き継いだ投資会社です。

それよりは、次の作品にじゅうぶんな制作予算を確保することを考えています。今のところ足りているので、外部の投資は受けていませんが、今後、必要だと思えば上場をするか投資を受けるかをするのだと思います。

miHoYoは、原神で儲けたお金をどうするのでしょうか。当然、次回作の制作費に使います。つまり、次回作は原神よりもさらにレベルアップすることは間違いありません。

すでに次回作「絶区零」(ジュエチーリン、Zenless Zone Zero)の予約受付が始まっています。まだリリース日も決まっていないのに、すでに280万人を超す人が予約をしています。同じくUnity3Dを使っていますが、今度の舞台は都市の中になるようです。

『ゼンレスゾーンゼロ』公式サイト

▲miHoYoの新作「絶区零」の公式サイト。iOSとAndroidで配信予定。原神を超える質の高いゲームになることはほぼ確実。

アニメシリーズのように進化する「原神」

この原神の最大の特徴は、形としてはゲームなのですが、miHoYoもプレイヤーもゲームというより、ACGN(アニメ、コミック、ゲーム、ノベル)の総合作品だと感じていることです。現在でも定期的に新しいマップが追加され、新しいシナリオが追加され、新しいキャラクターが追加されていきます。まるで、アニメシリーズが配信されているような感覚なのです。

miHoYoは、人から問われたら「私たちはゲームをつくっている」と答えるでしょうが、自分たちはゲームというより総合コンテンツをつくっているのだという感覚なのです。つまり、創業当時に「世界で最高のアニメ制作会社になる」「IPを確立して、それをさまざまなコンテンツに展開していく」ということを原神で実現してしまいました。

好きな世界観を作る90后の発想

90后の発想は、業界という先人がつくった枠組みの中にいったん入って、その壁を打ち破って、異業種を結合していくという80后のやり方と異なり、自分が好きな世界観を表現するために、アニメでもゲームでも先人がつくった枠組みを利用してつくってしまい、結果として異なる業界にまたがった新しいビジネス領域をつくってしまうことです。ビジネス側の発想で新しいビジネスを発想していくのではなく、消費者側からの発想で新しいビジネスを発想していくようになっています。

似たような発想で生まれたのが中国ドリンクカフェ「喜茶」(HEY TEA)です。創業者のニエ・ユインチェンは1991年生まれの90后でしたが、香港のミルクティーや台湾のタピオカティーなど、アレンジ中国茶で人気となっています。人気の秘密は、岩塩入りクリームチーズをトッピングした中国紅茶など、それまで飲んだことのなかった新しい中国茶にありますが、それだけでなく、カップやペーパーバッグ、 店舗インテリアなども人気です。つまり、お茶という飲料を提供するだけではなく、「こんな素敵な場所でこんな素敵なグッズに囲まれて、優雅に中国を楽しむ」という体験を実現するために、中国茶ドリンクの開発だけでなく、グッズデザインなどもして消費者に提供をしています。

行列ができる秘密はここにあります。デリバリーで飲むのでは楽しみが半減をしてしまうのです。やっぱりお店で飲みたいのです。

90后のビジネスは、このような消費者の目線で発想をし、必要なものを業界にこだわらず集めてきて実現する。そういうビジネスが目立つようになっています。今後、さまざまな分野で90后の活躍が目立つようになってくると思います。

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