NIMSなど、レーザー方式の粉末3Dプリンタでニッケル単結晶の造形に成功

NIMSなど、レーザー方式の粉末3Dプリンタでニッケル単結晶の造形に成功

  • マイナビニュース
  • 更新日:2022/06/23
No image

●高温用部品としてのニッケル基超合金単結晶造形体製造の課題

クリモトと日本積層造形が、金属3Dプリンティング事業で協業を開始

物質・材料研究機構(NIMS)と大阪大学(阪大)は6月22日、照射面強度分布が均一でビーム半径が大きいレーザーをニッケル粉末に照射することにより、欠陥が少なく結晶の方向がそろった単結晶を3Dプリンタのように造形することに成功したと発表した。

同成果は、NIMSのジョディ・デニス・エドガードNIMSジュニア研究員(九州大学(九大)大学院生)、NIMS 構造材料研究拠点 接合・造型分野 積層スマート材料グループの北嶋具教主幹研究員(九大大学院 准教授)、NIMS 構造材料研究拠点 接合・造型分野の渡邊誠分野長、阪大大学院 工学研究科の中野貴由教授、同・小泉雄一郎教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、添加剤に関する全般を扱う学術誌「Additive Manufacturing Letters」に掲載された。

近年、金属3Dプリンタ技術の進展により、高温用金属材料であるニッケル基超合金の部品に対する造形技術も開発されるようになってきた。ニッケル基超合金の部品は向きが異なる複数の結晶で構成されため、破壊の起点となりうる結晶粒界を有する多結晶体よりも単結晶体の方が高温強度に優れることから、高温用部品にニッケル基超合金の単結晶造形体の製造が求められているという。

しかし、従来の電子ビームを用いた装置による単結晶造形は、高真空を必要とするため、運転コストが高く、装置の普及率が低いという課題を抱えていた。また、積層造形装置の単結晶造形手法として、種結晶の上に敷いた粉末をビーム照射により溶融し、種結晶と同じ構造の単結晶を成長させる例が報告されているが、高価な種結晶を事前に準備する必要があったとする。

一方で、レーザー方式の造形装置は安価だが、普及しているレーザーのビームの照射面強度分布は正規分布であるために、固液界面の結晶成長方向を一方向に制御することが難しいほか、凝固時の大きな熱収縮ひずみに起因する結晶欠陥が造形体に導入されるため、単結晶を造形することができなかったとする。

導入コストと運転コストが安いため普及しているレーザー方式の造形装置で、高価な種結晶を使用せずに単結晶を造形することができれば、ニッケル基単結晶超合金とその造形体の研究・開発の加速が期待されることとなる。例えば航空機エンジンの高温部位へのニッケル基単結晶超合金が搭載されれば、CO2排出量の削減につながるとされる。

●種結晶を用いずに金属粉末から単結晶体を造形する技術を開発
そこで研究チームは今回、レーザー方式の造形装置で、種結晶を使わずに金属粉末から単結晶体を造形する技術を開発することにしたという。研究には、凝固後に高温から低温への過程で結晶構造の変化が起こらない純ニッケルの粉末が使用されたとする。

今回の取り組みポイントは、フラットな強度分布を持つレーザービームの適用だとする。レーザー方式の造形装置で、直径が大きく、照射面強度分布がフラットなレーザービームをニッケルの粉末床に照射し、造形条件で最適化することにより、粉末溶融時に形成される溶融池の形状を平面状に制御したという。これにより、凝固時の結晶成長方向をビーム照射方向とほぼ平行の一方向への制御が実現された。造形体は直径12mm、高さ30mmの円柱だとする。

従来の正規分布の照射面強度分布では固液界面が溶融池側に凸になり、凝固時に成長する結晶が中央でぶつかり、そこに結晶粒界と呼ばれる面状の欠陥が形成される。それと同時に、その界面付近で冷却時に大きな熱収縮ひずみが生じてしまうが、フラットな強度分布を持つレーザーでは、凝固時にフラットな固液界面から結晶がビーム方向に成長する。その際、造形中に前の層で凝固した結晶が種結晶のような役割を果たし、成長方向に優先的な方位を持つ結晶が徐々に選択されながら成長するという。なお、この凝固時の熱収縮ひずみは、正規分布のレーザー照射に比べて抑制されるとする。

このように、成長する結晶の方位は一方向にそろい、凝固時に結晶がぶつかってできる結晶粒界や、ひずみで導入される線状と面状の欠陥密度を低く抑制することができ、単結晶を得ることができたという。

研究チームは今後、レーザー方式による単結晶造形技術をニッケル基超合金に展開し、単結晶造形材の開発を加速する予定とする。この造形では凝固時に導入される熱収縮ひずみが小さいことから、従来、レーザー方式の造形で凝固時に割れを起こしていた合金組成への適用も期待できるという。そのため、積層造形用の合金組成の幅が広がることが期待されるとした。同時に、ほかの金属や合金(チタン合金やアルミ合金など)に応用し、結晶異方性や欠陥密度を制御した構造部品の開発に展開していくとしている。

波留久泉

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加