家族がカルト、陰謀論、マルチにハマったら... 目を覚ますには何をすればいいか

家族がカルト、陰謀論、マルチにハマったら... 目を覚ますには何をすればいいか

  • NEWSポストセブン
  • 更新日:2022/08/06
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家族がカルトにハマったら…(写真/イメージマート)

安倍晋三元首相(享年67)の銃撃事件から約1か月。山上徹也容疑者が凶行に及んだ動機とされる、旧統一教会に関する報道を見て、「なぜハマるのか」と理解できず驚いている人もいるだろう。だが、あなたの家族が被害者になる可能性は大いにある。都内在住の須田裕子さん(仮名・44才)が話す。

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「高校時代に仲のよかった同級生から連絡があり、10年ぶりにランチをしたんです。昔話に花が咲き、とても楽しくおしゃべりしていました。ですが、彼女が突然タブレットを取り出して、『見てほしい映像がある』と2時間以上も宗教団体の勧誘動画を見せてきて……。だんだん『これが真理なのかも』と思えて、危うく信じ込みそうになりました」

明星大学心理学部准教授の藤井靖さんが警鐘を鳴らす。

「カルト宗教などに対し、『ハマってしまう方が悪い』『自分は絶対にハマらない』と考える人がいます。しかし、ハマるかどうかは“運”ともいえます。正直、状況しだいでは私自身もハマってしまう可能性を否定できない」

カルト宗教の勧誘は、サークル仲間や“友人の友人”といった、「一定の関係」を築いて行われることが多い。心理的に、即座に拒否するのが難しい状況を作るためだ。さらに、一度断っても継続的にアプローチをかけ続ける。

「人というのは、感情や体調にムラがあるものです。継続的に接触していれば、疲れ果てて弱ったタイミングに当たることもある。そのときに、『わが団体に入れば大丈夫。すべての悩みが解決して幸福になれる』と言われたら、憔悴している人は飛びつきたくなるものです」(藤井さん)

身近な人や自分自身が、不運にも危険なものにのめり込んでしまった場合、私たちは何をすべきだろうか。

“ヤバい人”の境界線

精神科医で岡田クリニック院長の岡田尊司さんは、「依存」は現代人にありふれた問題だと話す。

「宗教に限らず、患者の中にはスマホゲームに何千万円もお金を使ったという人や、占いに何十万円もつぎ込んだという人もいました。彼らにとって、それが心のよりどころになっているため一概に否定はできませんが、全財産をつぎ込むほど心酔するのは危険サインです」

特定のものに対して過剰な依存に陥りやすい人は「依存性パーソナリティー障害」の疑いがある。さらに、依存を超えて「狂信」という段階に至る場合には、「妄想性パーソナリティー障害」を有していることが多いとされる。

「前者は強い不安にさいなまれていて自信がなく、自分よりも確信を持っている人に頼りたいと考える特徴がある。暗示にかかりやすく、マインドコントロールを受けやすい。一方、『妄想性〜』の人は不信感が強く、裏の意図を勘ぐり、何に対しても怪しむ傾向があります」(岡田さん)

のめり込んでいる団体が「趣味の範疇」なのか、「危険」なのか、それを見抜くポイントが3つある。藤井さんが解説する。

「1つめは、のめり込んだ『経緯』です。本人から近づいて行ったのなら趣味とも言えますが、何度も勧誘を受けた末にハマったのなら、善良な団体ではない可能性がある。2つめは『状況』です。その団体の思想や活動が人生において最優先になっていたり、依存先が特定の団体に限定されていたら要注意。危険な団体は、『自分たち以外は悪』と排他的なことが多いのです。

3つめは『お金』です。基準がわかりにくいと思うかもしれませんが、洗脳されている人は何百万円といった異常な大金を持ち出す。身近な人であればすぐに気づきます」

1つでも当てはまる場合は注意が必要だ。

認知症で陰謀論にハマる

岡田さんは、洗脳の解き方には大きく2種類あると話す。

「北朝鮮から帰国した拉致被害者の蓮池薫さんは、兄の透さんが徹底的に論破し、相手の信念を崩したとされます。ただ、かなりの荒療治であり、失敗すると互いの関係性が壊れてしまう恐れがある。

もう少し一般的なのは、外堀から埋めていくアプローチです。相手が信じているものに対し、『信じることも含めて、あなたを受け入れます』と受容すると、出口が開かれ、信仰や依存にも揺らぎが起こる。これまで目をつむっていた矛盾や問題が意識されやすくなり、目を覚ますことにつながりやすいのです。依存している行為や教団しか居場所がない人に、新たな居場所を作ってあげることが大事なのです」

藤井さんは、こんな相談を受けたと話す。

「夫を亡くし、心理的にひどく落ち込んでいた高齢の母が、友人に誘われて投資系のマルチ商法のセミナーに参加したそうです。寂しい気持ちが紛れて救われたらしいですが、背後にはカルト教団がいて、ついには家を売る寸前まで状況が悪化した。

そんな母に悩んでいた息子さんから相談され、マルチをやめる、やめないといった話よりも、お母さんにマルチ以外のことに時間を使ってもらう提案をしました。孫のお守りなど、あれこれ頼み事をしているうちに母親は多忙になり、頼られている実感も生まれ、最終的にマルチから離れることができました」

いくら家族でも、自分たちの力だけで洗脳を解くのは簡単ではない。場合によっては、医療機関を頼ることも必要だ。藤井さんが続ける。

「精神疾患が原因で依存が起きている場合もあるので、精神科や心療内科に相談してもいいでしょう。ただし、カウンセラーは資格のない怪しい人の可能性もあるため、公認心理師と臨床心理士の資格を持っている専門家がおすすめです。本人不在で、家族が相談するだけでも構いません。

高齢者の場合は認知症や幻覚、妄想によって陰謀論などにハマることもある。治療を受け、疾患が緩和したら自然と落ち着いた人もいます」

行政サービスの無料相談窓口へ行けば、ソーシャルワーカーが必要に応じた手段を提案してくれることもある。また、金銭的な被害が出ている場合は、霊感商法に強い弁護士に相談するのもいい。リンク総合法律事務所所長の紀藤正樹さんが言う。

「陰謀論に興味を持つ人はカルト教団に接触されやすく、最近はSNSでの発言をきっかけとしたカルトへの勧誘が活発になっています。マインドコントロールの程度が浅ければ家族の声かけで元に戻ることもありますが、深みにハマっているとそうはいかず、弁護士のところへ相談に来る人が多い。

カルトでは、霊感商法などのほか、極端な低賃金で働かされることもあるので、常識として社会的におかしいことを指摘しながら話し合いを重ねます。やり方やタイミングはその時々の状況によって変わるため、専門家がタイミングを計ることが極めて重要になる。

今年は2人の女性がある団体を辞めるサポートをしましたが、2年かかりました。ただ、団体を離れたり、仮にお金が返ってきても、精神的被害が回復するのは数十年単位となる。予防に勝る被害救済はありません」

長い期間、説得を続ける家族が冷静さを維持するためにも専門家の援助は不可欠だ。

「第三者の支援がなければ家族の心が折れてしまう。苛立って本人に怒りをぶつけると、本人はますます意固地になり、悪循環になりやすい」(藤井さん・以下同)

引っ越しなどで、環境を一変させるという方法もある。しかし、中途半端なやり方では失敗する可能性が高い。

「海外転勤や長期入院がきっかけで、カルト団体と物理的な距離が生まれ、そのままマインドコントロールが解けたケースもあります。しかし、引き離せばいいわけではない。団体と引き離そうと考え遠くに引っ越した家族がいましたが、洗脳されている当人は電車で3時間かけて教会に通い、団体と接触し続けていました」

カルトや陰謀論にハマった家族を「恥ずかしい」と考え、性急に解決しようとするのは逆効果。専門家の助けを得ながら根気強く向き合えば、解決策が見えてくるはずだ。

※女性セブン2022年8月18・25日号

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