「ネットで人脈構築」のつもりが犯罪集団の一員に

「ネットで人脈構築」のつもりが犯罪集団の一員に

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  • 更新日:2021/04/08
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(廣末登・ノンフィクション作家)

昨今、我が国において外国人の犯罪が増えているのではないかとの憶測が、一部のマスコミで取りざたされている。たしかに、ベトナム人による家畜泥棒などは、我々日本人には、とてもセンセーショナルに映った。

さらに、関東圏で話題になった、ネパール人の半グレ集団「東京ブラザーズ」や「ロイヤル蒲田ボーイズ」などのニュースを見るにつけ、外国人犯罪グループの台頭を恐れる市民感情は理解できなくもない。

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外国人による犯罪は減っている

結論からいうと、外国人犯罪は増えてもいないし、凶悪化もしていない。下記は、警察庁のデータから見る外国人犯罪検挙人員の推移である。

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外国人による刑法犯 検挙件数・検挙人員の推移(出典:『令和元年版 犯罪白書』)

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平成15年から17年の検挙人員が高いのは、来日外国人犯罪が多かったためである。コロナ禍で短期滞在ビザでの入国が厳しい現在、外国人犯罪はこの表の平成30年よりも下がっていると思われる。なぜなら、令和2年度の犯罪認知件数は、戦後最低の記録を更新したからである。

外国人による犯罪ではヒット・アンド・アウェイ型の窃盗が多い

そもそも外国人犯罪とは、ヒット・アンド・アウェイ型が多い。どういうことかというと、観光ビザなどの短期滞在ビザで入国し、犯罪を遂行した後、母国に逃げ帰るケースが多かったからである。だから、外国人犯罪のピーク時の犯罪をみると、それは凶悪なものではなく、窃盗が過半数を占めていた。なお、2019年度の特別法犯は、入管法違反が半数以上を占め、覚醒剤取締法違反、大麻取締法違反、風営適正化法の順である。

2019年における外国人犯罪の検挙人員の内訳、在留資格別でみると「短期滞在」が2437人(20.9%)で最も多く、他に「留学」2121人(18.2%)、「技能実習」2103人(18.0%)など。外国人の就労拡大のため19年4月に新設した「特定技能」は摘発者がなかった(日本経済新聞 2020年4月3日)。

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来日外国人による刑法犯 検挙件数の罪名別構成比(出典:『令和元年版 犯罪白書』)

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外国人半グレのシノギの対象は同国人

現在、関東圏を中心に活動している「東京ブラザーズ」などのネパール人半グレ集団にしても、シノギのターゲットは日本人ではない。だから、前回の記事「『半グレにもランクが』当事者が語った闇社会の実像」で紹介した半グレの分類には加えていない。

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彼らがシノギの対象とするのは、同国人である。たとえば、飲食店などの経営者から、ミカジメ料や高額なイベント参加費を徴収したりしている。

たとえば2018年6月には「エンターテインメント(娯楽)、インスピレーション(霊感)、ユニティー(一体感)」を名目に、ネパール人を対象としたフットサルトーナメントを開催している。

一見、微笑ましい親睦会のようだが、参加費は4万1000円。参加を断れば暴行が待っているとされるのだから、値段が欧州の一流リーグのチケットより高くても行かない選択肢はない(文春オンライン 2020年11月11日)。

彼らが、中国残留孤児の2世、3世の犯罪グループで結成された半グレ集団『怒羅権』のように変質する可能性はゼロではない。だからといって、外国人を見たら半グレ予備軍と思えというような短絡的な見方が広まっては堪ったものではない。

差別とイジメが半グレ集団「怒羅権」を生んだ

先述した半グレ集団「怒羅権」にしても、その結成は、日本人による差別やイジメが原因であった。技能実習生をはじめ、多くの外国人を受け入れつつある日本社会が、排外思想を持つことは、多様性社会の構築に逆行する。もし、彼らの子弟を排除し、受け入れない不寛容な日本社会があるとしたら、第二、第三の「怒羅権」を生み出す危険は否定できない。

在留外国人が犯罪に走る理由としては、留学生や技能実習生などの待遇や就労環境が悪く、退学、離職したものの行き場がなくなり、やむなく犯罪に手を染めるケースが指摘される。

日本社会は、少子高齢化の問題を抱え、外国人労働者を受け入れなければならない状況にある。そうであるなら、多様性を認め、彼らを酷使・差別することなく、日本社会に受け入れ、長く働いてもらうことが、お互いの安心・安全な社会づくりのために不可欠なのではないだろうか。

中国人特殊詐欺グループに巻き込まれた日本人青年

ただ、そうはいっても、日本人の全てが善人ではないのと同じで、外国人にも一定数、悪い人は居るものである。以下では、中国人半グレの手下に使われて人生を棒に振った日本人青年の実例を紹介する。

筆者が保護観察所の依頼により就労支援した人の中に、個人でネットサイト出店から業者とつながり、人生を棒に振ってしまった青年がいた。

ネットというバーチャルな空間を通して人とつながることが、いかに恐ろしいか、考えさせられる事例である。彼は、筆者と初対面の時、「親玉は中国人だった。怖かった。警察に捕まった時は心底ホッとした」と語った。

身長は165センチほどで痩せ型。知能指数は一般的なレベルで、発達障害などはみられない。入れ墨などもなく普通の青年だ。筆者との面談時点で31歳だったから、犯行時の年齢は27歳くらいと思われる。

特徴的だったのは10種類ほどの資格を所持していること。その中には、難易度の高い国家資格も複数含まれていた。

性格特性としては、「明るく社交的で、活動性も高いが、軽率で調子に乗りやすい」との調査票の所見があった。実際、自身がインターネットの個人出店で、月に30万円程度儲けていたことから、インターネットに潜む犯罪及び危険性に対する警戒心は低く、取り調べ面接時にも「『こんなこともあるのですね』等と発言していた」と記されていた。

この人は両親の元、長男として地方の都市に生まれたが、5歳の頃に親が離婚、その後は母親に養育されている。7歳の時に母親が再婚し、8歳の時、異父弟が誕生したが、この弟に障害があり介助が必要だったという。

本人は18歳の時に工業高校を卒業し、大手企業に就職した。その後、年収は500万円を超えた。さらに21歳で結婚し、一般的なサラリーマンとして順風満帆な生活を送っていた。

24歳の時、知人の紹介でネットワークビジネスを始めた。この年、第一子が誕生。27歳の時、ネットワークビジネスと並行して、インターネットビジネス(ネットオークション)を開始。これらの副業だけで、月に20~30万円を稼いでいたという。しかし、ある日、会社から帰ると突然、妻から離婚届に署名するように言われた。理由は不明とのこと。

同年、会社を辞め、インターネットサイトの個人事業を開始。ネットの世界で成功するには、人的ネットワークが必要と考え、ネット上で積極的に同業者や異業者と交流を持つように努めたそうだ。

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その中の1人から「お金を運ぶ仕事」の依頼を受け、時間に余裕もあったことから引き受けたとのこと。ネットワーク構築が目的でお金を得たいがためだった訳ではないと主張している。

しかし、依頼された仕事の詳細を聞いた時、すぐに犯罪行為と気づいたものの、その時点で、グループの背後に中国マフィアが存在すると聞かされ、仕事を断ると家族にも危害が及ぶと脅されて断れなかったと言う。

大手の会社を辞職して、2カ月後に逮捕されるまで、4件の事件に巻き込まれている。結果、28歳で詐欺、窃盗、詐欺未遂の罪で有罪判決を受け、懲役刑に服した。

出所後は帰住地を変え、しがらみの無い土地で一からやり直したいということで、筆者の就労支援対象者となった。国家資格を複数所持していたため、スムーズな就労ができた。「もう、二度と同じ過ちは繰り返しません」と、固い意思をもって就労したから、この方は、半グレグループに戻ることはないと思う。

このケースは、特殊詐欺の親玉が中国人であったという稀有なケースだが、悪人は国籍を問わず一定数存在する。筆者が更生保護就労支援で対応した青少年の多くは、日本人犯罪者に利用され、使い捨てにされた「つまようじ」人材である。

「私たちは大丈夫」という幻想を捨てよ

「私は大丈夫」、「うちの子に限って被害に遭うはずがない」――などということは、スマホを持っている以上、誰しも断言はできない。半グレは結構身近に存在することを肝に銘じて頂きたい。更生保護の表の社会、アングラ社会取材時の裏の社会で、様々なケースをこの目で見た筆者は、この点に力を込めて忠告したい。我々の何気ない日常にこそ、犯罪の脅威は潜んでいる。

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『だからヤクザを辞められない――裏社会メルトダウン』(廣末登著、新潮新書)

拙著『だからヤクザを辞められない――裏社会メルトダウン』において、様々な犯罪のケースをリアルに紹介しているのは、コロナ禍にある日本社会への警告のためである。十代の子どもさんを持つ保護者の方から、孤独を感じて誰かと繋がりたい社会人まで、幅広い層の方に読んでもらい、スマホの中など――いまそこにある危険に備えて頂ければ幸いである。

あえて付言しておくと、宅配業者を装った、またはZOZOタウンの前澤友作氏を語る偽メールなどは、地方都市に住む筆者でさえ月に数回は送られてくる。日本語が歪だから、冷静に読めば詐欺メールと看破できる。「100万円進呈」という甘言に、読者の皆様には厳に警戒頂きたい。

廣末 登

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