スタバ日本上陸25周年 「変わったこと」と「変わらないこと」

スタバ日本上陸25周年 「変わったこと」と「変わらないこと」

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2021/06/10
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今年日本上陸25周年を迎える、スターバックス。コーヒーチェーンのリーディングカンパニーとして最先端を走り、多くの人に愛され続けている。そのスターバックスが25年間大切にしてきた価値観を知るべく、スターバックス コーヒー ジャパンのCEOである水口貴文氏に、弊誌Web編集長 谷本有香が話を聞いた。

谷本有香(以下、谷本):スターバックス日本上陸25周年、おめでとうございます。この25年の変化を振り返っていかがでしょうか。

水口貴文氏(以下、水口):1996年に銀座に日本1号店をオープンし、この25年で店舗数は1637店舗(2021年3月末現在)にまで増えました。この間にお客様のニーズも供給側のバリエーションも非常に多様化しています。

しかし、店舗数が100店舗のときも、1600店舗を超えた今でも、私たちが大切にしていることは変わりません。ミッションである「人々の心を豊かで活力あるものにするために── ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」の通り、目の前のお客様ひとりひとりと温かい繋がりをつくることを続けてきたと感じています。

谷本:この25年の間にコーヒーショップはたくさん増えましたが、現在のスターバックスのポジショニングをどのように捉えていますか。

水口:有名コーヒーブランドの日本上陸やコンビニの参入のたびに、スターバックスにとっての脅威について聞かれるのですが、私はむしろコーヒー業界全体が盛り上がる好機と捉えています。というのも、おもしろいことに、コンビニコーヒーが始まって以降もスターバックスのコーヒーの売り上げは落ちていないんです。これはお客様の生活が多様化しているからではないでしょうか。

特にリモートワークが普及してから、自宅でも美味しいコーヒーが飲みたいとお求めになる方も増え、お客様との接点は増えています。そのなかで、クイックにコーヒーを飲みたいときはコンビニで、ゆっくりしたいときやいろんな種類のコーヒーが飲みたいときはスターバックスでというように、お客様が上手に使い分けてくださっているのだと思います。

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(写真提供:スターバックス)

谷本:お客様のライフスタイルやニーズが多様化しているなかで、スターバックスの役割は?

水口:ミッションにもある通り、「地域」や「コミュニティ」はキーワードのひとつです。それぞれの店舗が積極的にその地域に溶け込んで、人々やコミュニティと繋がりをつくることを大切にしています。例えば、スターバックス コーヒー 町田金森店は、町田市と共に認知症の方やその家族たちが交流する「Dカフェ」を店舗で開催し、地域の課題にスターバックスとして何ができるかと考えました。

他にもスターバックスの発信力は大きな武器ですので、暮らしに寄り添う集いの場となるだけでなく、その土地の伝統工芸を広めたり観光地としての魅力を高めたりすることに貢献していきたいと考えています。

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谷本:店舗数がこれだけ多くなったにもかかわらず、スターバックスではどの店舗でもフレンドリーな接客を体験できます。社員ひとりひとりに企業文化やミッションが根付いているのはなぜですか。

水口:スターバックスにはバリューズという行動規範があり、お客様に誠実に向き合うことをひとりひとりが徹底しています。私は2014年にスターバックス コーヒー ジャパンに入社しましたが、実は最初、銀座の店舗で研修したことがあるんです。実際に店舗に立ったのですが、もちろんできることは限られていて。

とはいえ、一応社長候補として入っているので、普通だったら気を遣われてもおかしくないのですが、当時の店長は「ゴミ捨てといてください」とか「お皿回収してきてください」というように、どんどん私に指示を飛ばしてくれました。お客様の前では、みんな平等。だからこそスタッフをパートナーと呼んでいるわけですし、それが実践できていて「いいなぁ」と感じました。

スターバックスでは、パートナーは約4カ月ごとに目標をたて、それと合致した行動をとると互いに褒めたりカードを送り合ったりします。「さっきのあれ良かったよ」という声かけは、日常的に飛び交っていますね。私も店舗研修時にフードケースのドーナツを並べていたら、アルバイトの大学生に「上手ですね」と褒めてもらいました。「それなら、もう少しやっちゃおうかな」と気分がよくなったものです。

谷本:ひとりひとりがオーナーシップを発揮して働いているように感じます。

水口:会社が大切にしていることと自分がやりたいことに接点が見出されると、自らどんどんやってみようと思えますよね。例えば、鹿児島仙巌園店はひとりの店長の熱意でオープンした店舗です。この店舗は、世界文化遺産である仙巌園に隣接する旧芹ケ野島津家金山鉱業事業所をリノベーションしてできました。

目の前に桜島が見えるこの場所にかねてより出店したいと考えていた彼女は、仙巌園が世界文化遺産の候補に挙がった際、いてもたってもいられなくなり、自ら建物のオーナーにスターバックスの理念やここに出店することの意義を語りに行ったんです。

地元の人が桜島や仙巌園を見てもう一度地元に誇りをもてる、そういう場になりますと。その後みんなでフォローし、最終的には4年後にオープンに至りました。地域に根差すことを大切にしている我々のミッションと彼女のパッションが重なったいい例だと思います。

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(写真提供:スターバックス)

谷本:人が中心という文化がブレずにあることがよくわかりました。

水口:文化は決断や行動の積み重ねだと思っています。「人が大切だ」と口で言っていても、いざ何かが起きたときに会社の決断が普段の言動と違っていたら、すぐに文化は崩れます。例えば、昨年、1回目の緊急事態宣言が発出されたとき、私たちは雇用を維持しながら1200店舗を閉めるという決断を下しました。

あの頃はまだコロナがどういうものか分からない状況で、必ずしも店を閉める必要はなかったのですが、役員会で「今、娘さんを店に出しますか」と言われて、これが結論なんだろうなと。決断は毎回、真剣勝負です。

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谷本:変わらないものもあれば、変わらなくてはいけないものもありますよね。どうやって時代性をよんでいますか。

水口:我々は、デジタルとの融合やサスティナビリティを意識した取り組みなど、相当早いうちから始めています。今でこそキャッシュレスが当たり前の時代になりましたが、スターバックスがプリペイドカードを始めたのは2002年です。公園内に店舗をつくったり、藤原ヒロシさんのようなデザイナーとコラボしたり、新しいことにチャレンジすることを忘れません。

そういうチャレンジは止めたらいけないと思っています。Who we are、Why we are hereという存在意義の部分は変えてはいけないけれど、HowやWhatの部分は時代に合わせて変えていくことが大切だと思います。

谷本:しかしスターバックスを見ていると、時代の変化とは違うところの動きをされていると感じることがあります。一周して、原点に戻ってきたように思うのですがいかがですか。

水口:最近だとDXが語られることが多いですが、DXをやれば全てが解決するわけではありません。デジタルにしてもDXにしても、やりたいことが明確にあるうえでどう使うかが大切です。私たちのミッションは人と人との繋がりをつくることで、デジタルはあくまでそれをサポートするもの。新しいものや流行は標準化していくからこそ、やはり存在意義の部分が重要だと思います。

例えば、コロナ以降一気にデリバリーが増えましたよね。スターバックスもデリバリー事業に参入していますが、実は始めるときに「デリバリーで人との繋がりをつくるのは難しいのでは?」という意見を多くいただきました。しかし、デジタルだろうが何だろうが、そこに心を込めることはできます。

実際に、デリバリーをスタートしてすぐ、新宿のあるパートナーがデリバリー商品に「今日はありがとうございます。またお店で会うことを楽しみにしています。こんな時ですからお食事を楽しんでください」というメッセージを添えて、お客様に喜んでいただきました。デリバリーでも繋がりができるんです。Howを変えながらも存在意義がブレないところは、こういう部分に表れると思います。

谷本:最後に今後のビジョンについて教えてください。

水口:スターバックスは居心地のいい場所として、家でも職場でもない「サードプレイス」を提唱してきました。これからは、より一層多様化するお客様のニーズや生活スタイルにフィットする自分の居場所としての「マイプレイス」としての価値を高め、同じ価値観をもつ人や同じことをやろうと思っている人が集まる「シェアドプレイス」としての役割も担っていきたいと考えます。

水口貴文◎54歳。1967年1月生まれ。2001年、LVJグループ ルイ・ヴィトン ジャパンカンパニー入社。2010年、同社ロエベ ジャパン カンパニー プレジデント&CEO。2014年9月、スターバックス コーヒー ジャパン入社、最高執行責任者(COO)。2016年6月、同社CEO(代表取締役最高経営責任者)就任。

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