【股関節の痛み】中高年で最も多い「変形性股関節症」 進行するほど治療の選択肢は限られていく

【股関節の痛み】中高年で最も多い「変形性股関節症」 進行するほど治療の選択肢は限られていく

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  • 更新日:2023/01/25
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からだの中心部にあり、体重や動作を支える大切な股関節。加齢によって股関節にトラブルが生じ、痛みが生じることがあります。中高年の股関節の痛みの中で最も多いのは関節軟骨がすり減り変形する変形性股関節症です。変形性股関節症は進行するほど治療の選択肢は限られていくため、痛みを感じたら早めに診察を受けることが重要です。本記事は、2023年2月27日に発売予定の『手術数でわかる いい病院2023』で取材した医師の協力のもと作成し、お届けします。

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股関節の痛みの原因となるおもな病気には「変形性股関節症」「大腿骨頭壊死症」「大腿骨寛骨臼(かんこつきゅう)インピンジメント(FAI)」などがあります。

「変形性股関節症」と「大腿骨頭壊死症」は立ち上がったときや歩いたときなどに股関節が痛む病気です。大腿骨頭壊死症は血流不全により大腿骨頭部が壊死する病気ですが、壊死の範囲が広く、骨頭の変形や痛みが強い場合は手術が必要です。

FAIは股関節を動かしたときに大腿骨と寛骨臼の縁がぶつかって痛みが出る病気です。生まれつきの股関節の形態異常に加え、加齢や環境変化によって痛みを生じるケースのほか、バレエやダンスなど股関節を大きく動かすスポーツ経験者にも発症リスクは高いとされています。進行すると関節軟骨のダメージが進んで、変形性股関節症へと進展します。

■関節軟骨のすり減りが進むと、変形性股関節症に

この中で患者数が最も多いのは関節軟骨がすり減り変形する変形性股関節症です。股関節は大腿骨の先端にあるボール状の「大腿骨頭」を骨盤にあるおわん状の「寛骨臼」が包み込む構造をしています。日本人は先天的に寛骨臼の面積が狭い「寛骨臼形成不全」の発生頻度が高いとされ、その9割は女性です。形態異常により股関節の一部に負担がかかってしまうため、その部分の関節軟骨が徐々にすり減り、股関節周辺に痛みが出てきます。

進行すると関節軟骨の破壊が進み、骨と骨が直接ぶつかるようになって股関節が変形し、痛みも増してきます。変形性股関節症の原因の8割以上は寛骨臼形成不全ですが、残りの約2割は生まれつき寛骨臼形成不全でなくても、FAIのほか、加齢や肥満、腰椎の変形などで発症するケースです。

神戸海星病院病院長の柴沼均医師はこう話します。

「変形性股関節症によって痛みを感じ始める時期としては40~50歳です。寛骨臼形成不全がある場合は30歳前後から痛みが出ることもあります」

その症状について座間総合病院人工関節・リウマチセンターセンター長の草場敦医師はこう説明します。

「痛み方には個人差があり、足の付け根の前側が痛む場合やお尻側が痛む人もいます。歩くと痛みが出るものの、じっとしていると痛みは出にくい。ただし、進行してくると安静時にも痛むようになってきます」

■まずは保存療法で痛みの改善を目指す

変形性股関節症は進行性の病気なので、いったん変形してしまった股関節を元に戻すことはできません。進行すると手術が必要になりますが、治療の基本は保存療法です。痛みや変形度合いが比較的軽度であれば、まずは、しゃがんだり、かがんだりなどの股関節に負担がかかる動作を避ける、和式の生活からイスに座る生活に変えるなど、生活の改善をおこないます。股関節周囲の筋力の強化やストレッチも進行の予防には有効です。

痛み止めの内服や消炎剤入りの湿布を貼付する薬物療法などもおこないます。また、2~3キロの減量によっても痛みが和らぐ人もいます。

50~60代で発症するケースの多くは閉経後の女性で、女性ホルモンの減少などの影響もあり、肥満度も高い傾向にあるといいます。

「足が痛むと運動不足にもなりがちです。医師や栄養士と相談しながら食生活を改善し、理学療法士のすすめる自宅でのリハビリメニューをこなしてもらっています。積極的に治療に参加する意識がもてると症状も改善に向かうことが多いと思います」(草場医師)

痛みをとる新たな保存療法として、PRP(多血小板血漿)療法もあります。患者自身の血液に含まれる抗炎症性物質と成長因子を利用して炎症を抑える再生医療です。効果には個人差がありますが、約7割に効果が見られるとされています。ただし、保険診療ではないので注意が必要です。

■手術のタイミングはライフスタイルに合わせて決定を

保存療法で症状が改善せず、関節の変形が進行し、安静時にも強い痛みが出るような場合には手術の対象になります。

「手術は生活の不自由具合によって医師と相談して決めるとよいでしょう。50~60代ですと子育てや仕事、親の介護、ペットの世話などですぐに受けられない人も多く、本人が納得するタイミングまで保存療法をしながら待つ場合もあります」(同)

手術には大きく分けて、関節を金属やセラミックなどの人工関節に置き換える「人工股関節置換術」と骨を温存して変形した股関節の形を整える「骨切り術」、関節軟骨の変形部分だけを取り除く低侵襲な「関節鏡視下手術」があります。

関節鏡視下手術は変形がほとんどない人向けで、治療も一時的な場合が多く、変形があって手術を受ける場合は、骨切り術か人工股関節置換術のどちらかを選択することになります。

「50代以下とまだ年齢が若く、股関節に軽度の変形はあるものの、まだ軟骨が傷んでいない場合には、骨切り術を選択できることがあります。人工的な骨折と同じ状態になるため、骨がつながるまでに時間がかかり、社会復帰に2カ月程度かかりますが、自分の骨を温存でき、術後に動作の制限がなく、スポーツも可能。活動度の高い人向きの手術です」(柴沼医師)

関節の変形が激しく、骨切り術の適応にならない場合や早い社会復帰を望む場合は人工股関節置換術がすすめられます。

「人工股関節置換術はその対象や年齢を選ばず、ほぼ確実に痛みをとることができる治療成績のよい手術で、もっとも多く実施されています。人工関節の耐久性も非常に高くなっているため、いまは40~50代の人に手術をするケースも増えています」(草場医師)

術後は数日で歩行訓練ができ、リハビリも含めて約2週間と、早期の社会復帰が可能なのもメリットです。術後は衝撃の少ない活動に制限されることもありますが、スポーツも発症前に行っていた種目に復帰することも可能です。

■ナビゲーションやロボット手術でより確実な手術が可能に

人工股関節置換術は術者の技術的な熟練度に頼るところが大きく、精度が低いと脱臼やゆるみなどの合併症を引き起こす原因になってしまいます。そこで、股関節の3D画像を用いて脱臼しにくい角度に設置できるように術前計画を立てるナビゲーションシステムの導入が進んでいます。また、一部の病院では計画通りに骨を削るためのロボット手術も導入されています。

「ロボット支援手術では、ナビゲーションシステムで角度や位置を確認しながら、ロボティックアームで傷んだ骨を削り、人工関節を設置します。確実で平均的な手術が可能です」(柴沼医師)

変形性股関節症は進行するほど、治療の選択肢は限られていきます。若年で関節の変形が少ないほど、骨切り術で自分の骨を温存できる可能性もあるため、手術を希望する場合は早めに検討したほうがいいでしょう。また、変形性股関節症は徐々に進行していくため、いったんよくなったように思えても、ふたたび痛みがぶり返すことがあります。痛みを「年齢のせいだから仕方ない」と思わずに、早めの受診が大切です。

(文・石川美香子)

【取材した医師】
神戸海星病院病院長 柴沼 均 医師
座間総合病院 人工関節・リウマチセンターセンター長 草場 敦 医師

「股関節の痛み」についての詳しい治療法や医療機関の選び方、治療件数の多い医療機関のデータについては、2023年2月27日発売予定の週刊朝日ムック『手術数でわかる いい病院2023』をご覧ください。

石川美香子

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