「マザウェイズ」絶好調に見えたのに破産した理由

「マザウェイズ」絶好調に見えたのに破産した理由

  • 東洋経済オンライン
  • 更新日:2022/06/23
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全国に100店舗近く展開した子供服チェーン「マザウェイズ」

子供服チェーンの「マザウェイズ」を覚えていますか。女の子向けのかわいらしくて手ごろな値段の商品を展開し、2010年代後半、全国に100店近くを展開した人気ブランドです。子育て世代ならば、ご記憶の方も多いのではないでしょうか。

しかし、運営主体のマザウェイズ・ジャパンは、2019年7月に破産しました。

「女児服のユニクロ」とも呼べるビジネスモデルで成功した人気ブランドが、なぜ破綻してしまったのか。どうすれば破綻しないですんだのか。創業社長に取材して考えました。

倒産を30年取材してきた日経トップリーダー編集部が、帝国データバンクと東京商工リサーチの協力を得てまとめた『なぜ倒産 令和・粉飾編 ― 破綻18社に学ぶ失敗の法則』からの抜粋。取材は2019年夏頃、事実関係は基本的に2019年9月1日現在です。取材にご協力いただいた創業社長は仮名にしてお伝えすること、ご了承ください。

創業社長、無念を語る

「考えられる手立ては尽くした。何とか延命策を施したとしても、この先1、2年が限界だと判断し、経営を断念した」

このように語るのは、首都圏を中心にベビー・子供服のSPA(製造小売り)を展開していたマザウェイズ・ジャパン(大阪市、以下マザウェイズ)の松本亮社長(仮名)だ。同社は2019年7月16日、大阪地方裁判所から破産手続きの開始決定を受けた。

破産申立書によると負債総額は 59億6000万円。関連会社の根来(ねごろ、大阪市)とネイバーズ(同)も連鎖して倒産し、3社の負債総額は約77億円に上った。

マザウェイズと長年取引があった会社の社長は、「(倒産は)青天のへきれきだった」 と話す。「取引額はここ数年で増え続け、支払いの滞りもなかった。少子化時代でも成長を続ける優秀な会社と認識しており、下請けの我々にもありがたい存在だった」。

2019年1月期の売上高は81億円に上り、店舗数は98店、従業員は854人に達していた。破綻4カ月前の3月も大阪、群馬などに3店をオープンしたばかりだった。

マザウェイズは1991年、前身のマザーケア・ジャパンとして設立された。大阪・ 船場にあった大手現金問屋の根来が、世界展開するベビー・子供服の英国マザーケア社と日本での販売ライセンス契約を締結して生まれた会社だ。初代は根来の社長だった父が兼務していたが、実質的な経営は次男の亮氏が受け持っていた。

やがてライセンス販売の制約条件に窮屈さを感じるようになると、亮氏は自社ブランドで勝負する戦略に転換し、韓国の縫製工場に生産を委託。2000年に商号をマザウェイズ・ジャパンに変え、亮氏が社長に就任した。

「女児服のユニクロ」

女児のベビー・子供服が8割を占め、「かわいらしさ」を強調した商品を展開。「商品の企画から製造まで、すべて自社で手がけることを強みにした。 40人の専属デザイナーを使い、最新のデザインと機能にこだわった」(松本社長)。ユニクロと同じSPAだ。

価格帯は3000円前後に設定。1000円前後である格安店と5000円以上の高級店との間をうまく突いた。「デザインと縫製の良さから、『ユニクロ』や海外ファストブランドにはないお買い得感があった」(40代母親ユーザー)の声が象徴するように、ファンを着実に増やしていった。

勢いづいた松本社長は「子供が身に着けるものすべてを売る」「マザウェイズに行けば何かある」というコンセプトを掲げ、カバンやアクセサリーなどの雑貨も加えることで、「1万円でフルコーディネートできる」という戦略を立てた。

2008年からは東京近郊への出店を強化。「イオンモール」や「ららぽーと」をはじめとするショッピングモール内に100坪規模の店を次々と出した。出店は多い年で18店に及んだ。元幹部社員によれば店舗開発費は1店当たり2000万~ 5000万円。「会社の売り上げが伸びて銀行の融資条件が良くなった」ことから、出店をさらに加速させた。「どこにでも素早く出店できるように候補先を常に5つ以上準備しておくことが慣例だった」(同)。

拡大戦略が進んだ理由は、2010年から韓国の生産拠点を中国に移したことにもある。 約40もの契約工場を確保したことで、4000アイテムを毎シーズン作れる生産体制を整えたのだ。

その際、商社との取引をやめ、仕入れにかかるコストを半分近くまで減らした。これにより3000円前後だった主力商品を1000円値下げした。店頭での中心価格を1990円と明示して、同じ価格帯で競合するユニクロのほか「ZARA」や「H&M」などの海外ブランドに対抗できる値頃感とデザイン性との両立を追求した。

出店の拡大と大量生産によるさらなるスケールメリットを得たことで、松本社長は2011年に「ブランド元年」を宣言。「インターネット通販やスマートフォン用アプリ、 アウトレットにもチャネルを拡大し、どんなお客様でも取り逃さないようにした」(松本社長)。

その宣言から2年後となる2013年1月期、マザウェイズの売上高は47億円から73億円に伸びた。商品が定価で売れる割合を示す指標「プロパー消化率」は、90%を記録。アパレル企業の多くの 50~60%を上回った。豊富な品ぞろえでお客1人の購買点数も5、6点に倍増し、純利益は過去最高の 2億円を確保した。

しかし、この拡大路線の経営は、結果的に薄利多売による利益率の低下と常に大量在庫を抱える状況を招いた。暗雲が垂れ込めたのは、2013年下期から始まった円安。

日本円の対ドル相場はその後の1年で20円以上も下落。中国の人件費上昇も加わり、 3割未満だった製造原価が5割を超えた。

「円安も人件費の上昇も予測せず、3年先まで1ドル90円前後の想定で発注していたため、取り返しがつかなくなった」(松本社長)。

値上げと顧客ターゲットの拡大でも好転せず

2014年、松本社長は利益率の回復を目指して2つの方針を打ち出した。

1つは、商品価格を平均10~15%値上げしたこと。

2つ目は、顧客ターゲットを拡大したことだ。もともとマザウェイズが対象にしていた「身長130センチ」までのサイズを、「身長160センチ」までに拡大した。

「小学4年生までだったこれまでのユーザーを、小学6年生まで広げた。母親でも着られる服も新たに展開して、スケールメリット拡大を狙った」(松本社長)。

だが、値上げによって客離れが進み、プロパー消化率は65%まで下落。しかも、サイズ展開がこれまでの倍に当たる10種類にもなっうえ上、新たなユーザーも取り切れずに店舗の在庫は増え続けた。

少しでも在庫をさばこうと、2カ月ごとだったセールを毎月実施するようにしたため、「いつでもセールをしている」とのイメージを客に与えた。「定価で買わない客」 が増え、シーズンごとに投入した新作でもすぐに値引きをしないと売れない悪循環に陥った。さらにこの時期、百貨店の子供服ブランドのセカンドラインなどが、マザウェイズの主戦場であるショッピングモールに次々と進出。「価格」と「商品力」の両面で競合との差を打ち出せなくなり、固定ファンを減らす状況も生まれた。

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ショップの元店長によれば、「毎週商品が次々と届く一方で、毎月割引セールをしていた状況だった」という

2017年1月期には売上高84億円と過去最高を記録した。しかし、商品の大幅な値引きが常態化しており、純利益率が1%にも満たない薄利の経営になっていた。

「2019年1月期の純利益1267万円から計算すると、1店舗当たりの純利益は年間約12万9200円。売上原価から推計すると在庫は約9カ月分あった。ここ数年は、過剰在庫で財務的にかなり苦しんでいたと考えられる」(帝国データバンク大阪支店)。

慢性的な在庫を抱えるところに天候不順が追い打ちをかけた。2018年秋から冬にかけて続いた暖冬、 19年の春先に続いた寒波の影響により在庫がさらに増加。 2019年4月には短期借入金の返済ができなくなり、資金繰りも行き詰まったことで経営を断念した。

なぜ拡大路線を捨てられなかったか

破産を未然に防ぐ方法はなかったのか。松本社長は、「拡大策でしのぎ続ける方法しか思いつかなかった」と振り返る。「店舗を閉鎖し、事業縮小やリストラを進める対策も考えたが、金融機関から『業績停滞』だと警戒されたら資金調達が困難になると見て踏み切れなかった。ここ数年、 20億円前後の在庫を常に抱えていた」という。

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マザウェイズのような拡大志向がもたらす行き詰まりは、実は「アパレル企業に共通の課題」と指摘するのは、事業再生に詳しい経営コンサルタントだ。アパレル市場の主力はトレンド重視の商品から、丈夫で長持ちする実用品に移ってきた。そこにネットを使って各社を比べ、無駄なものは買わない人が増えた。

これに対して「メーカーは、数を売る習慣が染みついていて、自社の実力を過信して商品を作り過ぎる。安易に生産を増やさず、厳しく商品管理しないと、大量の在庫を抱えてすぐに破綻しかねない」。

大きな時代の変化を、マザウェイズは読み切れなかった――。次回は、経営破綻から2年後、再び取材に応じてくれた松本社長の独白をお伝えする。拡大路線を捨てられなかった理由を元経営者が振り返る。

(日経トップリーダー編集部)

日経トップリーダー編集部

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