BLMがもたらした“ビッグなチェンジ”  白人警官による黒人殺害に「2千分の1」の有罪判決

BLMがもたらした“ビッグなチェンジ” 白人警官による黒人殺害に「2千分の1」の有罪判決

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  • 更新日:2021/06/10
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5月25日のデモで舞台に立ち、「BLMは人生を変えた」と話すチ・オセ氏(右端)。BLMをきっかけに今年、NY市議会議員に立候補した(撮影/津山恵子)

黒人男性が警察官により殺害された事件をきっかけに、「ブラック・ライブズ・マター(BLM)」運動が全米に広がって1年が経つ。一時は暴動にまで発展し、全米を緊張させた運動で、何が変わったのか。AERA 2021年6月14日号から。

【写真】「アジア系ヘイトをやめて」という手書きのサインを持ってデモに参加した人も

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2020年5月25日、中西部ミネソタ州ミネアポリスで、黒人男性ジョージ・フロイド氏(当時46)が、白人の元警官デレク・チョービン被告(45)に首を圧迫され、息絶えた。

その一部始終を撮影したビデオがソーシャルメディアで野火のように広がり、ロックダウンでゴーストタウンとなった街中に、突然数百~千人を超える若い人たちが「Black Lives Matter(ブラックライブズマター)!」(黒人の命は大切だ)と叫びながら繰り出した。新型コロナウイルスの感染が拡大する中、デモが広がってから、1年が経つ。

その規模と広がりは、少なからぬ人々を驚かせた。参加者の中心は、過去に一度もデモに参加したことがないミレニアルやZ世代だったからだ。

新型コロナウイルス感染拡大の最中、彼らをデモに駆り立てたBLMは、その後、どんな展開を見せたのか。

今年4月20日、チョービン被告のフロイド氏に対する殺人罪を問うた裁判で、陪審員は有罪評決を言い渡した。ニューヨークの観光名所タイムズスクエアにいた黒人人権の運動家アナイア・Aさんは、涙ぐみながら、カメラの前で拳を振り上げた。

「こんなビッグな評決は今までなかった。白人警官が有罪となった今、白人至上主義にメスが入り、今までにはなかったチェンジが起きる」

■2千分の1の評決

まさかの稀な評決に、全米がテレビに釘付けになった。「黒人市民を殺害したとして、勤務中の白人警官が有罪となるのは、ミネソタ州で初めて」(ミネアポリス・スター・トリビューン紙)。また、問題となっている警官による銃撃事件についても、「殺人として有罪となったのは05年から全米でわずか7件、つまり、警官が市民を殺した2千件のケースのうち1件が有罪になる確率」(ニューヨーク・タイムズ)という。

今後言い渡される量刑として、検察側はチョービン被告に「禁錮30年」を求刑した。前科がなければ、今回の推定量刑は10~15年程度だが、「警官の地位を悪用した」「犯行が残忍」「子どもが目撃する前での犯行だった」などの理由で、加算された。

実は、容疑者が白人だった場合に比べ、黒人が警察官に殺されるケースは未だに多い。ワシントン・ポストによると、警官によって銃で殺害される100万人当たりの人数は、黒人が36人に対し、白人は半分以下の15人だ。

これまで警官を有罪にするのが極めて困難だったことを考えると、チョービン被告裁判は大きな風穴をあけたといえる。

■暴動ではなく虐殺

今年5月25日、フロイド氏一周忌の集会がニューヨーク市内で開かれた。1年前であれば、BLMのデモは1千人を超える規模だったが、同日は200人ほどだった。しかし、昨年と同じく参加者の年齢層が若く、女性が圧倒的に多い。

この層は、昨年の米大統領選投開票日の4日後の11月7日、元副大統領のジョー・バイデン民主党候補(当時)が大統領のドナルド・トランプ共和党候補(同)に勝利したと主要メディアが一斉に報じた直後に公園などに集まってきた人々と重なる。大統領選の出口調査によると、バイデン候補を勝たせたのは、18~29歳の世代と黒人を始めとした非白人の有権者層。つまり、来る日も来る日も街に繰り出していたBLMデモの参加者が中心だった。

そのバイデン大統領は、5月31日、「構造的な人種差別を根絶する」とホワイトハウスで表明した。南部オクラホマ州タルサで100年前の同日、「ブラック・ウォール・ストリート」と呼ばれた黒人居住区を白人暴徒が襲撃し、火をつけたために50~300人が死亡、街は壊滅した。同大統領は、黒人から就職や富を築く機会を奪うことに国家と政府が果たした役割を「重く受け止め、認めなければならない」とまで言及した。

翌6月1日にはタルサを訪れ、事件の生存者に会った。歴史から抹殺され、死亡者の数さえ定かではない同事件の追悼のためにタルサを訪れた大統領は、バイデン氏が初となる。

「米国の同胞の皆さん、これは暴動ではなかった。これは虐殺だった」とバイデン氏は認めた。(ジャーナリスト・津山恵子)

※AERA 2021年6月14日号より抜粋

津山恵子

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