プーチンだけでなく習近平もトランプを懐かしむ、中国に厳しい米バイデン政権

プーチンだけでなく習近平もトランプを懐かしむ、中国に厳しい米バイデン政権

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2022/11/25
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ジョー・バイデン米大統領の中国政策がうまくいっているかどうかは、経済学者が議論するところだ。バイデンの任期はようやく2年の節目を迎え、審査はまだ終わっていない。

しかし、バイデン大統領の明らかな実績の1つは中国が前米大統領のドナルド・トランプを恋しがっているに違いないということだ。

中国の指導者である習近平国家主席は、決して公にはそのことを認めないだろう。しかし、バイデンの巧みな方向転換によってアジア最大の経済大国である中国は以前より厳しい状況に直面していることは間違いないはずだ。トランプは早くから頻繁に中国に対して強気な発言をしてきた。しかし、トランプの実際の政策は往々にして、スムーズに経済成長を続ける中国に卵を投げつけるというネタバレ満載の茶番のように見えた。

トランプの貿易戦争は見出しを飾るような大きな混乱を引き起こしたのだろうか。もちろん、そうだ。ホワイトハウスが中国脅威論者で『Death by China』の著者であるピーター・ナバロを通商部門で起用したことで、習近平の怒りを買っただろうか。間違いなくそうだ。トランプが中国からの輸入品に課税したことで輸出企業に混乱が生じ、中国共産党を狼狽させただろうか。確かにそうだ。

しかし中国を煽り、荒らしてきたトランプの4年間で中国政府の路線や行動、習近平の大局的な野望は変わっただろうか。こじつけの逆説的な議論でなければ、トランプがそうしたと示唆することはできない。

これとはかなり対照的に、バイデンはいくらか打撃を与えている。ニューヨーク証券取引所での中国本土企業の上場廃止、半導体やチップ製造装置、その他の重要技術への中国のアクセスを制限する動きは、事実上あらゆる分野のイノベーションの未来を支配するための習近平の「Made in China 2025」計画を妨げている。

中国がバイデンの経済封鎖を回避する方法を見つけようと試みることは可能だ。すでにそうしている。しかし、見つけるには時間がかかり、習近平政権がめったに能力を発揮できない微妙な外交が必要だ。

その一方で、習近平はスーパーコンピューター、誘導兵器、新しい代替エネルギー源の考案、優れた電気自動車の製造、人工知能ツールの改良、反体制派や少数民族を監視するネットワークの拡大などで中国の力を強化する能力は、トランプが2期目を手に入れていた場合よりもはるかなものに複雑になっている。

バイデンの中国に対するアプローチの賢明さについては、地政学の専門家たちが議論を交わすだろうし、実際にそうしている。特に、インフレの高まりはバイデンにとって格好の口実となるため、トランプの効果のない関税を廃止しなかったことは依然として不可解だ。バイデンは、米国が主導し、トランプが拒否した経済連携協定の環太平洋パートナーシップ(TPP)に再加盟しないという決定を下したが、これは明らかに自分で自分の首をしめるものだ。

しかしトランプは多くの点で習近平を楽にしたことを忘れてはいけない。2017年から2021年初めまで、トランプの貿易戦争は中国に対する世界的な同情を生んだ。トランプの反中レトリックは、習近平が国内で権力を固め、世論をあおるのに役立った。新型コロナウイルス感染症のパンデミックの中、中国政府に対するトランプの外国人嫌いの辛辣な言葉は、武漢の役人に新型コロナの責任を取らせるための世界的な支持を分断した。

それから、トランプは自国経済に対して愚かな行動を取った。同盟国を次々と失った。新型コロナに対するトランプの悲惨なアプローチは、米国の成長と米政府の世界的地位を後退させた。連邦準備制度理事会に対するトランプの攻撃は中国元などドル以外の通貨を勢いづかせた。

あなたがバイデノミクスをどう思おうが、米国は中国にポイントを与えていない。もしポイントを与えているとすれば、それは稀な誤爆であり、毎週のように誤爆の連鎖が起きているわけではない。

ロシアの攻撃によるウクライナの苦境をめぐってバイデンが築いた連合は、習近平の「戦狼外交」を不安定なものにした。習近平のプーチンへの見苦しいまでの支援は中国を孤立させ、世界情勢における利害関係者の役割を果たす気がないように思わせた。また、この紛争が飛び火して台湾に対する世界的な支持が強化された。

プーチンはもちろん、ロシア政府が何度も翻弄した政治初心者のトランプを恋しく思っているに違いない。トランプがまだ大統領の座にとどまっていたら、米国はウクライナをまったく助けていなかったかもしれない。サウジアラビアでは、MBSと呼ばれる同国の指導者モハメド・ビン・サルマンも古き良きトランプ時代を懐かしく思っている。

習近平もそうだ。習近平はトランプの娘イバンカへのハンドバッグの特許や台湾の海辺沿いの土地の所有権を約束したりして、台湾問題でトランプを買収できなかったと考えるのは果たして行き過ぎだろうか。

カマラ・ハリス米副大統領が今週フィリピンの紛争中の島を訪問したことは、おそらく有益ではない。中国を突つき、見返りはほとんどない。フィリピンのフェルディナンド・マルコス・ジュニア大統領も前任のロドリゴ・ドゥテルテも中国問題には無縁だ。

それでも、バイデンの綱渡りの外交は彼に巧みに操る余地を残している。バイデンはトランプよりはるかに中国に厳しいが、最近インドネシア・バリ島で習近平と行った会談は中米関係をタイムリーに再起動させるものだった。

香港の投資調査会社Gavekal Research(ガベカルリサーチ)のエコノミストであるダン・ワンは「米中関係の悪循環がひと段落した」証拠だと見ている。ワンによると、G20会議の傍らで行われた今回の首脳会談のトーンは建設的で、おそらくかなり低かった期待を裏切るものだったという。

元米財務長官のローレンス・サマーズも同意見だ。現在ハーバード大学で教えているサマーズは米通信社Bloomberg(ブルームバーグ)に、経済協力における「建設的な動き」と思われるものを見て「勇気づけられた」と語っている。つまり、バイデンの任期の後半にはここ数年の動きのハッピーエンドに近いものが得られる余地があるということだ。

サマーズは「もし我々が自国を立て直すことから中国を引きずり下ろすことに焦点を変えるなら、非常に危険で非常に残念な選択をすることになると思う」と付け加えている。

良いニュースは、バイデンが前任者よりも米国の立て直しにより注力していることだ。その一例が、米国のハイテク産業を活性化させ、生産性を高めるための研究開発への3000億ドル(約41兆円)の投資だ。バイデンのいわゆる「インフレ抑制法」は、クリーンエネルギーの革新に勢いを与えている。

確かに、米国のアニマルスピリッツ(野心的な意欲)を盛り上げるバイデンの取り組みは始まったばかりだ。しかしそれは、習近平が見せかけのための無駄な努力ではなく、自国の経済力を再構築を図る米政権と対峙していることを意味している。

forbes.com 原文

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