半導体の強さは金属的にとらえることができる、名大が新たな計測手法を開発

半導体の強さは金属的にとらえることができる、名大が新たな計測手法を開発

  • マイナビニュース
  • 更新日:2021/02/22
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名古屋大学(名大)は2月18日、半導体に外部から光(フォトン)と力(フォース)を同時に入射する手法を新たに開発し、転位(内部のシワ)の運動が光照射で変化する現象をナノスケールで計測することに成功したと発表した。

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同成果は、名大大学院 工学研究科の中村篤智准教授、同・松永克志教授、独・ダルムシュタット工科大学のシューフェイ・ファン博士、東京大学大学院 工学系研究科 総合研究機構の幾原雄一教授、同・栃木栄太助教らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、米科学雑誌「Nano Letters」に掲載された。

現在の半導体はナノスケールの構造を持つため、材料の信頼性を評価する上で、同スケールでの構造的な強さを評価する必要がある。そうした中、最近になって、半導体材料の可塑性(加工性)や破壊特性など、構造的な強さに対して光環境が影響することが明らかになってきた。周囲の光環境に依存して、半導体の構造的な強さが強くなったり弱くなったりもするというのだ。こうした光環境の影響は予想以上に大きいため、各種半導体材料の強さに関する過去の計測結果を再検討する必要があるほどだという。

その一方で、光環境を考慮した上で半導体の強さに関する性質(特に可塑性)を計測しようとしても、従来手法では限界があった。特に、従来の研究が通常の実験室(環境光のある明るい部屋)で行われ、光環境が制御されていなかったことで、実験結果の信頼性が失われてしまったのだという。

また、先進半導体は小型化が進んで表面積が増大しているため、光の影響がますます大きくなっている。こうしたことから、実際のナノスケールの構造物に対応でき、かつ光環境を完全に制御可能な、ナノスケールの強さに関する計測手法の確立が求められていたのである。

国際共同研究チームが今回、光制御環境下での材料におけるナノスケールの強さを評価する手法の開発するに際して、特に「圧子」と呼ばれる力を発生させる部位自身によって影を生じたりしないよう、注意が図られた。そして開発されたのが、低角度かつ2方向から光を照射できる装置だ。光ファイバーを通して光(フォトン)と力(フォース)を同時に入射する仕組みで、半導体の転位(半導体内部のシワ)の発生とナノスケールの運動に対して、光環境依存性を正確に評価することが可能となったという。この装置によって計測する手法は「光インデンテーション法」と命名された。

その新装置を用いて評価が行われたところ、転位の発生には光があまり影響しないことが判明。その一方で、転位の運動には光が強く影響するという非常に重要な科学的新発見がなされたのである。なお転位とは、結晶における原子配列連続性における乱れの一種であり、結晶の形状変化(塑性変形)を支配するものである。

そして、この新発見については、以下のように考えられるという。

転位の発生時は、転位源から転位が張り出す必要があるが、この張り出しを支配する転位の線張力は転位のひずみエネルギーに依存する。
このひずみエネルギーに、光励起キャリア(過剰な電子や正孔)と転位の相互作用はほぼ影響しない。
その一方で、転位のすべり運動時には、光励起キャリアが静電的相互作用により転位に引きずられるため、光励起キャリアと転位の相互作用が強く影響する過程となっている。

こうした過程の違いが、光に対する応答の違いを生じた原因と考えられるとしている。

今回新たな装置が開発されたことで、光環境制御下で表面近傍の構図的強さ、特に転位の運動を計測する手法が確立された形だ。これにより小さなサンプルから、もしくは材料の表面から、材料の強さに及ぼす光の影響を評価することが可能となったとする。

また今回の研究においては、統計的な手法を組み合わせることで、小さな荷重(数十マイクロニュートン)と、小さな変異(数ナノメートル)で半導体の強さの評価にも成功。半導体においても、転位の発生応力が「理論せん断強度」(結晶において、特定の結晶面に沿って一斉に横ずれ=せん断を起こすのに必要な応力のこと)とほぼ一致することが明らかとなった。これは、変形や破壊といった力学的性質に関して、半導体材料も金属材料とほぼ同じ取り扱いが可能であることを意味するという。

これまで、多くの場合、半導体は単にもろく壊れやすいと考えられ、力学的性質を深く検討されてこなかった。今後は、今回の手法により理解が進むことで、壊れにくい半導体の開発やより小さな半導体構造の実現につながることが考えられるとしている。

また今回開発された実験装置は、半導体だけでなく、あらゆる固体材料に適用可能である点もポイントだという。つまり、さまざまな材料について光の影響を調べることができるということだ。とりわけ、変形や破壊の起点は材料表面であることが多く、また表面は酸化などにより半導体的性質を併せ持つ材料が多いことが知られている。この点で、材料表面のナノメートルスケールの領域から光環境制御下の材料の強さを正確に計測できる手法を確立できた意義は大きいという。従来は考慮されていなかった、材料表面における力学的性質の解明も進むことが期待されるとした。

また今回の研究は固体材料の強さを原子配置から考えるという一般的な考え方に一石を投じるものでもある。従来は原子の分布とシンプルな男性論で材料の強さをおおよそ理解できるという前提があった。しかし最近、光や電界などの外場により材料の強さが大きく変化することが報告されつつあり、原子より小さな電子や光子の運動を固体材料の強さを考える学術分野に加える必要性が認められつつあるとする。

今回の研究はそうした材料の強さにおける量子レベルの効果を改めて証明するとともに、その評価手法が確立された形だ。この点で、材料の強さという分野のパラダイムシフトにおいて、大きなマイルストーンを達成したといえるとしている。

波留久泉

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