岸田内閣は親中派なのか?発言撤回が目立つ首相が外交でも難しい舵取り

岸田内閣は親中派なのか?発言撤回が目立つ首相が外交でも難しい舵取り

  • bizSPA!フレッシュ
  • 更新日:2022/01/15

2022年の夏には、参議院議員選挙が控えています。2021年10月の衆院選は発足後すぐに実施されたため、岸田文雄内閣の審判を問うものにはなっていませんでした。今夏の参議院選が、実質的に岸田内閣にとって国民の審判を初めて受ける国政選挙です。それだけに、岸田首相は気が抜けません。

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2022年はアメリカや中国で政治的にも大きな動きがあるため、岸田首相の外交手腕が注目される

特に2022年は外交政策が重要になってくると予想されています。なぜなら、今年はアメリカで中間選挙が実施される年でもあり、結果次第ではジョー・バイデン大統領の再選にも影響が出てくるからです。

外交政策が問われる1年に

また、中国でも秋に5年に1度の党大会が開かれます。ここでは、習近平総書記の去就が注目されています。これまで江沢民・胡錦濤両総書記が2期10年で退任したのはあくまでも通例に過ぎません。総書記の任期は特に定めがないため、習近平総書記の3期目が濃厚とされているからです。

こうした事情から、2022年は日米関係・日中関係などの外交政策が問われる1年になりそうです。岸田内閣は諸外国とどのような関係を築こうとしているのでしょうか? 首相官邸や政界の取材歴が10年超のフリーランスカメラマン小川裕夫(@ogawahiro)が、岸田首相の人事から外交政策を読み解きます。

岸田内閣の国民からの評価は上々

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岸田内閣は2022年1月2日に発足から3か月を迎えました。発足当初、“分配なくして次の成長なし”を掲げた岸田内閣肝煎りの「新しい資本主義」は、すぐにトーンダウンしました。そのほかにも、岸田首相が掲げる政策は短時間で修正・撤回されることが多く見られます。

それだけに頼りなく映る場面も多く見受けられましたが、先の衆院選で自民党は261議席(追加公認を含む)を獲得。大勝利を収めました。また、第二次岸田内閣発足後の政権支持率は少しずつ上昇しており、国民からの評価も上々のようです。

参議院選挙以前に取り組む課題は山積み

今夏には参議院議員選挙が控え、これを乗り切れば約3年間は大きな国政選挙はありません。それだけに参議院選の動向が早くも注目されているのです。岸田首相は2021年末に官邸で実施された記者会見で、記者から参院選についての質問を受けています。

岸田首相は「まだ半年も先のこと」として、明確な回答を避けました。当然と言えば当然の答弁ですが、岸田首相・自民党にとって2022年の参議院選挙は何がなんでも勝ちたい選挙です。

選挙に勝つためにも、オミクロン株による新型コロナウイルス第6波への対策、また長らくコロナ禍で疲弊した経済の立て直し、さらには岸田内閣が新しい資本主義として掲げた成長と分配の好循環など早急に取り組まなければならない課題は山積みです。そのほか子育て・教育、脱炭素、デジタル化推進でも手を抜くことはできません。

日米関係を大きく左右する大統領選が

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写真はバイデン氏の公式ツイッターより

選挙では、あまり票につながらないとされる外交政策も2022年は重要です。今年は、アメリカで中間選挙が実施される年だからです。アメリカの上院は民主党が50議席、共和党が50議席と拮抗。下院は民主党221議席、共和党が213議席。(下院は欠員1)

下院は民主党が議席をリードしていますが、民主党は政策や主張が異なる議員が多くいる寄り合い所帯でもあるため、金融・財政政策や気候変動で統一歩調を取れない弱点があります。バイデン大統領は就任から1年が経過し、支持率は低調です。それだけに中間選挙はバイデン大統領の再選を左右する選挙になるとも言われているのです。

私たち日本国民はアメリカの大統領選の選挙権を有しません。しかし、アメリカ大統領選は日本にとっても大きな関心事です。なぜならアメリカは日本最大の同盟国で、大統領が交代すれば日米関係が大きく変わる可能性があるからです。

もっとアメリカとの関係を深めるべき

2021年末、岸田首相はアメリカ・ニューヨークで開催される予定だった核不拡散条約(NPT)の再検討会議に出席することを表明していました。これは岸田首相が広島出身で核廃絶に力を入れているからです。しかし、渡米を予定していたのは、NPTへの出席だけが目的ではありません。バイデン大統領と会談する予定も進められていました。

結局、岸田首相とバイデン大統領との首脳会談はセットされることがなく、参加を望んでいたNPTも延期になりました。こうした事情もあって、岸田首相は2022年の早い時期にバイデン大統領との首脳会談を望んでいるとされます。

日本とアメリカは同盟国です。両国の首脳が会談して互いの意見を交換し、友好を深めることは不自然なことではありません。むしろ、もっと濃密な関係を築いてもいいでしょう。しかし、安倍晋三元首相・菅義偉前首相と比べると、岸田首相はアメリカとの仲を深めようとしていないようにも映るようです。そのため、主に自民党の支持者から「岸田内閣は親中」という見方をされています。

岸田内閣は親中派なのか?

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実際に、岸田内閣(もしくは岸田首相)は親中なのでしょうか? 岸田首相の頭の中を見なければ本当のことはわかりませんが、少なくても側近・腹心の人事を見ることで、そのあたりを探ることはできそうです。

側近・腹心といっても、首相のそばには国務大臣をはじめ、官房長官・副官房長官などたくさんのスタッフがいます。また、秘書官や補佐官もいます。数多くいる首相側近・腹心の中でも、第二次安倍内閣から注目されるようになった役職があります。それが、内閣広報官です。

首相の仕事場でもある官邸には、官邸広報室と呼ばれる部署があります。内閣広報官は、この官邸広報室を統括する官僚ではありません。内閣広報官は官邸広報室とは切り離された役職で、他省庁から抜擢されることもあれば、1度は退官した元官僚、民間人から起用されることもあります。それだけに、内閣広報官の起用には首相の思惑が色濃く滲みます。

安倍首相から信頼されていた“ある人物“

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首相在任時だけではなく、首相退任後も安倍晋三議員から絶大な信頼を寄せられていた長谷川榮一氏

内閣広報官は、官邸で実施される記者会見で司会進行役を務めます。第二次安倍内閣で内閣広報官を務めたのは長谷川榮一氏でした。長谷川氏は第一次安倍内閣でも内閣広報官に抜擢されているほど安倍首相から信頼されている人物です。

ちなみに、第二次安倍内閣は首相秘書官や首相補佐官を歴任した今井尚哉氏をはじめ、経済産業省出身者が要職を占めたことから経産省内閣とも揶揄されました。長谷川氏も経産省出身です。

安倍首相は退任後も長谷川氏を重用しています。それを端的に示したのが、桜を見る会などをめぐる問題で安倍議員の公設第一秘書が政治資金規正法違反の罪で略式起訴されたときでした。2020年12月24日、安倍首相は桜を見る会や秘書が略式起訴された件を弁明するために記者会見を開きました。この記者会見は、長谷川氏が司会進行役を務めています。

記者会見の司会進行役は、その名称から抱くイメージとは異なり、記者会見を取り仕切る重要な仕事です。質問しようと挙手している記者を指名する権限や質問内容が不明瞭もしくは長い場合は質問者に注意を促す権限を持っています。記者を指名する権限があるということは、不都合な質問をする記者を指名しない権限も持っているということです

首相にとって懐刀ともいえる存在

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菅首相の長男との違法供応接待問題により内閣広報官を辞任した山田真貴子氏

第二次安倍内閣では、ずっと長谷川氏が内閣広報官を務めました。そのため、首相に不都合な質問をする記者を指名しないという状態が続いきました。

2020年9月に菅内閣が発足すると、内閣広報官は山田真貴子氏に交代します。山田氏は総務省出身の元官僚で、総務大臣を務めた菅首相からも厚い信頼を得ていました。内閣広報官に就任する前、つまり総務官僚時代に山田氏は菅首相の長男と会食をしていたこともあります。それが違法供応接待問題として国会で追及されて、辞任に追い込まれました。

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前任者の辞任を受けて菅内閣の内閣広報官に就任した小野日子氏

山田氏の後任には、小野日子氏が就任。菅首相の退陣で、小野氏も内閣広報官を辞しています。そして、岸田内閣が誕生して、新たに内閣広報官に就任したのが四方敬之氏です。

ここまで見てきたように、内閣広報官は首相に信頼される人物が就任していることが窺えます。つまり、首相にとって懐刀ともいえる存在なのです。四方氏は外務省から内閣広報官に抜擢されました。四方氏を見れば、岸田外交の方向も朧げながらに見えてくるのです。

米中どちらも重視していることが窺える

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岸田内閣で新しい内閣広報官に抜擢された四方敬之氏

四方氏は1986年に外務省に入省。北米局や中東アフリカ局など、多くの部署を経験しています。なかでも注目すべきキャリアが、2018年12月から約7か月間にわたる在中華人民共和国日本国大使館特命全権公使と2019年7月から約11か月にわたる在アメリカ合衆国日本国大使館公使です。

米中どちらの公使を務めた人物を内閣広報官に起用していることからも、岸田外交は米中どちらも重視していることが窺えます。

安倍内閣ではほとんど中国と接触することはありませんでした。また、菅内閣でも安倍外交路線を踏襲しています。

しかし、ずっと中国と没交渉の状態でいることは非現実的です。国際的にも、日本にとっても中国は無視できるような存在ではありません。経済成長が著しく、少なくても今後20年間は世界各国が中国をなんらかの形で意識せざるをえません。

岸田内閣には難しい舵取りが求められる

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安倍首相の記者会見では、指名される記者が事前に決まっていたと安倍首相本人が国会で答弁している

また、日本は拉致問題やミサイルなどの北朝鮮に関わる問題で、中国と連携を取る必要が出てくる可能性は否定できません。そのときに中国との窓口がなければ何も始められません。何かあったときのためにも、中国との窓口を準備しておかなければならないのです。

これは岸田内閣がアメリカを軽視しているということではありません。また、中国国内で起きている人権侵害や弾圧など国際的な非難を許容することでもありません。

岸田内閣は、安倍・菅両内閣で冷え切った日中関係を温め直すという役割を課せられているのです。岸田首相にはアメリカとの関係を深めながらも隣国・中国との関係を修復するという難しい舵取りが求められているのです。

政権発足から岸田首相は発言を撤回したり、修正したりと軸がブレている部分が目立ちました。外交において、打ち出した政策を即時に撤回するような政治家は信用を失います。世界情勢が混迷するなか、岸田外交に注目が集まります。

<TEXT/フリーランスカメラマン 小川裕夫(@ogawahiro)>

【小川裕夫】

フリーランスライター・カメラマン。1977年、静岡市生まれ。行政誌編集者を経てフリーに。首相官邸で実施される首相会見にはフリーランスで唯一のカメラマンとしても参加し、官邸への出入りは10年超。著書に『渋沢栄一と鉄道』(天夢人)などがあるTwitter:@ogawahiro

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