韓国映画界が全世界に放つ、シンデレラガールを生みだしたサイキックバトルアクション『THE WITCH/魔女 ―増殖―』 主演女優シン・シア インタビュー

韓国映画界が全世界に放つ、シンデレラガールを生みだしたサイキックバトルアクション『THE WITCH/魔女 ―増殖―』 主演女優シン・シア インタビュー

  • otocoto
  • 更新日:2023/05/30

2018年製作の『THE WITCH/魔女』の続編にあたる、『THE WITCH/魔女 ―増殖―』が、2023年5月26日ついに公開される。

前作『THE WITCH/魔女』では、「梨泰院クラス」のキム・ダミが演じた田舎の女子高生ク・ジャユンが主人公。実は彼女、人体実験によって生み出された殺人兵器だったという話。素朴な外見とは裏腹に突如発現する凶暴性、そして異能を使い暴れ回る予測不能のストーリーで、観る者を圧倒した。

日本では限定公開にとどまったもののSNSで拡散され、レンタルと配信によって推定視聴者数100万人超えを記録したと言われている異例の反響を巻き起こしたサイキック・アクションだ。

この商業的成功を受けて公開される『THE WITCH/魔女 ―増殖―』は、前作の世界観を共有した”魔女ユニバース”第2弾。今回の主人公も、遺伝子操作により超人的な暗殺者を養成する”魔女プロジェクト”の実験体である、名もなき”少女”だ。

そして、この少女を演じるのが、3度のオーディションを勝ち抜き、1408人の中から選ばれた新鋭シン・シアだ。長編映画初出演で初主演のまっさらな彼女に、話を聞きながら本作の魅力を深めていきたい。

俳優を夢見る若者が憧れる映画

高校時代、週に4回も観るほどミュージカルにハマり演技の道を志したというシン・シア。彼女は、なぜ本作のオーディションを受けたのか、その経緯を聞いた。

『THE WITCH/魔女』は新人の女性が主人公になる映画ですよね。韓国では、新人が映画の主演に抜擢されるというのは、なかなかないので、私ぐらいの年代にとっては貴重な機会だったんです。しかも、前作を観てとても面白かったと感じていたので、その続編ならオーディションを受けない理由はありませんでした。

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前作主演のキム・ダミも、オーディションを勝ち抜き、映画初出演をつかんだ。これを機に怪物新人と呼ばれ、さまざまな映画祭で新人賞を総なめにし、ドラマ映画と活躍するシンデレラガールだ。
1998年生まれの25歳のシン・シア。韓国で役者を夢見る若者にとって、前作『THE WITCH/魔女』はどう映ったのか?

やはりピュアな顔をした少女が、実はすごい力を持っていたというギャップですね。そこがすごく気に入りました。また世界観を引っ張っていたのが、ク・ジャユンという1人の少女だったいうところ、そこも本当に面白いと思いました。

今回、そのク・ジャユンのいる世界に、私が入り込んで、一緒に演技をすること自体が印象的でした。撮影現場では、キム・ダミさんとして会うのではなくて、キム・ダミが演じるク・ジャユンに会いましたので、最初に共演シーンを撮ったときには鳥肌が立ちました。不思議な経験ができたと思っています。

実は私、怖がりなので、バイオレンスなシーンを見るのは‥‥苦手なんです。そういった映画を観るときは目を隠しながら観ているんですけどね (笑)。

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今作『THE WITCH/魔女 ―増殖―』では、前作ではベールに包まれていた謎が明らかになっていく。そして好奇心を掻き立てられるキャラクターの登場、それにより新たな展開に転がる物語、最先端のVFX技術により魅せる異能バトルとすべてがスケールアップしている。

とりわけシン・シア演じる少女とキム・ダミ演じるク・ジャユンが出会う終盤のアクションシークエンスは、今作の見どころのひとつだろう。

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アクションシーンについて、撮影監督のキム・ヨンホは、”今作では、前作に比べてカメラワークとアクションが、その範囲を100倍以上広げ、スピードも格段に増した”と語っている。加えて”華やかではない動きをかっこよく見せる必要があったし、単純なアクションにもスタイリッシュさが求められた”と既存の韓国映画とは異なる本シリーズ特有のスタイルを維持している。

終盤のアクションシークエンスでは、オープンセットに巨大なグリーンバックの前でワイヤーアクションを撮影しているそうだ。スクリーンでは、スローモーションと倍速、緩急をつけた動きで、サイキック+フィジカルの強さをまざまざと見せつけられるので必見だ。

偶然が引き寄せた物語との親和性

『THE WITCH/魔女 ―増殖―』のすべての撮影は、前作のエンディングの背景となっていた済州島で行われている。

作中冒頭、血だらけの少女が裸足で雪の上を歩くシーンは、非常に神秘的で観客を引き込み、かつ、この物語を象徴する素晴らしい映像となっている。まさにこの場面から撮影が始まったらしいのだが、これは偶然の産物だそうだ。

もともと台本には雪の設定はなかったんです。60年ぶりに済州島に大雪が降って、膝ぐらいの高さまで雪が積もっていました。偶然撮ることになったシーンなんですが、私は裸足で演じなければならなかったので、寒くて大変でした。

でも結果として、本当に綺麗な映像ができましたし、雰囲気もあるシーンになりました。初めての登場のシーンが、あのように撮れて良かったと、雪が降ったことに感謝しています。

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またこの冒頭の登場シーンは、シン・シアにとって、今作のなかでも忘れられないシーンだそうだ。

最も思い入れのあるのは、最初の登場シーンですね。なかなか人って身体中血まみれになるってことがないじゃないですか。身体中に血糊を塗ったとき、”あ、私は少女になったんだ”と思いました。

血まみれになった状態で白い雪原を歩いている‥‥。雪のように世の中のことをまったく知らない少女の世界に、血が一滴落ちるかもしれない、そういうことを暗示しているような気がしていて、神秘的ではありますし、少女のキャラクターと世界観を活かしてくれているシーンだと思うので、とても思い入れがあります。

この済州島の雪原シーンに登場するのが、世界的大ヒットしたドラマ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」で、自閉症の弁護士を見事に演じたパク・ウンビンだ。彼女が演じるギョンヒは、ヤクザに拉致されたところを、少女に助けられる。少女の明らかに特殊な能力を目の当たりにしながらも、人間味ある優しい心で接し守ろうとする。

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現場で一番ご一緒したのが、ギョンヒ役のパク・ウンビンさんでした。たくさんお話をしましたし、私にとって初めての長編映画出演でしたので、パク・ウンビンさんが本当に助けてくれました。

劇中の少女は、研究所から初めて外の世界に出たところをギョンヒが助けてくれるんですけども、その劇中での関係性とも似ていましたので、より役に入り込むことができました。

パク・ウンビンがあえて、そう接していたのかは分からないが、ソン・ユビン演じる、ギョンヒの弟・デギルとともに生活する少女の日常パートは、血まみれワイヤーアクションが多い中で、映画に温かみを添えて、ホッコリさせてくれる。

なかでも食事のシーンは、誰もが彼女のことを好きになるはず。ここでは、少女の、シン・シア本来の純粋さが現れているように思える。

研究所で育った少女は、美味しい物をまったく食べたことがなかったんですね。だから、”新しい食べ物、美味しい食べ物を見たら、理性で考えるよりも、本能で動くんじゃないか?”と思ったので、私も本能のままに演じました。でも私、もともと食べるのが好きなんですけどね(笑)。

辛い麺にアメリカンドックに、アワビ粥‥‥決して行儀がいい食べ方ではないけれど、その様に魅了されるだろう。ちなみにシン・シア自身は何が好きなのか聞いてみた。

食べ物全部好きなんでけど、寿司が好きです。サーモン! イカ! 甘エビ! ウニ大好き!! もしもサイキック能力があったら、瞬間移動して美味しいものがあるところを回って食べ歩きたいです!!

満面の笑みでこう言われてしまえば、誰もが彼女を好きになると思う。

心を揺さぶる日常と非日常の対比

この作品で宣伝のために来日するとは思ってもいませんでした。こうやって日本の皆さんにお会いして 映画のお話をすることに 最初は少しドギマギしてしまったところもありましたが、本当に嬉しいです。自分はここまで来たんだな、と実感が湧きます。

私の考えていた少女のイメージを、言葉と身体と表情で表現をするのは、難しくて大変なんですけど、やればやるほど楽しかったです。また、そういった自分の姿を映像で見るというのは不思議な感じでした。

どんな俳優になりたいのか、どんな俳優になったらいいのかについては、常に考えています。
一番忘れてはいけないと思っているのは、初心を忘れないこと。一生懸命、最善をつくして演技をする俳優でありたいと思っています

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新人のフレッシュさ満点ながら、責任感を強く持ち、しっかりと自分の言葉で受け答えするシン・シア。それでいて若者らしくコロコロと表情豊かに変わる。別の作品ではたくさんしゃべる役をやってみたいという彼女と劇中の無表情な少女にはギャップがある。今作を含めた、魔女ユニバースの魅力もそれと同様である。

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素朴な少女に他を凌駕する能力、凶悪な暴力と心温かい気持ち、ひっそりとした田舎で繰り広げられるスタイリッシュなサイキックバトル。こういった設定だけでなく、ゆったりした日常と壮絶なアクションといったシーンの対比で我々の心を揺さぶってくる。そういった意味で原題サブタイトルが”the other one”というのもうなずける。

もちろん、今回の少女と前作の主人公であるク・ジャユンは、違うキャラクター設定なので、前作ファンも、今回初見の方も楽しめる内容となっているのでご安心を。

そしてこの魔女ユニバースの次回作について、シン・シアに聞くと、こう答えてくれた。

詳しい内容は知らないんですが、監督の頭の中には、かなり壮大な世界があるらしいです。

本作『THE WITCH/魔女 ―増殖―』のエンディングでは、さらなる展開と波乱を匂わせている。シンデレラガールを生む、超能力アクションシリーズ、今観ておかない手はない。

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取材・文 / 小倉靖史
撮影 / 岡本英理

作品情報

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『THE WITCH/魔女 —増殖—』

韓国・済州島の秘密研究所アークが何者かに襲撃され、惨たらしい殺戮の中でひとりの少女が生き残る。その少女は、遺伝子操作によって超人的なアサシンを養成する〈魔女プロジェクト〉の実験体だった。初めて研究所の外に足を踏み出した少女は、心優しい牧場主の女性ギョンヒとその弟デギルのもとに身を寄せ、少しずつ人間らしい感情に目覚めていく。しかし並外れたスーパーパワーを秘めた少女を危険視した〈魔女プロジェクト〉の創始者、ペク総括は、彼女を抹殺するためにスゴ腕の女性工作員チョ・ヒョンを送り込む。時同じくしてアークを壊滅させた超能力者集団“土偶”と、地元の犯罪組織も牧場に押し寄せ、ミステリアスな少女との壮絶なバトルの火ぶたが切られるのだった‥‥。

脚本/監督:パク・フンジョン

出演:シン・シア、パク・ウンビン、ソ・ウンス、ソン・ユビン、チン・グ、 チョ・ミンス、イ・ジョンソク、 キム・ダミ

配給:ツイン

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公開中

公式サイト ark-thewitch.com

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