焦点:FRBの利上げ減速示唆、新興国中心に世界中が一安心

焦点:FRBの利上げ減速示唆、新興国中心に世界中が一安心

  • ロイター
  • 更新日:2022/11/25

[フランクフルト 24日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)が利上げペースを緩める意向を示唆したため、世界中の中央銀行は引き締め継続のプレッシャーから幾分解放され、今年の資産価格の値動きが過去10年で最も振るわなかった新興国市場にも安心感を与えつつある。

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米連邦準備理事会(FRB)が利上げペースを緩める意向を示唆したため、世界中の中央銀行は引き締め継続のプレッシャーから幾分解放され、今年の資産価格の値動きが過去10年で最も振るわなかった新興国市場にも安心感を与えつつある。写真はワシントンのFRBで2008年3月撮影(2022年 ロイター/Jason Reed)

各国・地域の中銀はこれまで、FRBに追随する形で記録的に急速な利上げを進めてきた。

その流れを変えたのは、23日に公表された11月1─2日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)議事録だ。出席者の大多数が「利上げペース減速が近く適切になる可能性が高い」との見解を示したことが明らかになり、世界全域で債券利回り低下や株高、さまざまな通貨のドルに対する上昇という現象が見られた。

より重要なのは、FRBがインフレを抑制できる段階になってきたかもしれないと考えている様子がうかがえた点で、米経済が「軟着陸(ソフトランディング)」できるとの期待が高まった。それが実現すれば、既に景気後退(リセッション)に陥った多くの国・地域は経済の落ち込みが緩和される。

世界各地、特にウクライナ戦争がもたらしたエネルギー危機の痛手が最も大きい欧州では、まだインフレとの闘いに到底終わりは見えない。それでもFRBの軌道修正は、他の中銀にとって大幅な利上げを続けなければという切迫感を和らげてくれる。

欧州中央銀行(ECB)や日銀といった主要中銀がその恩恵を受けるのは明らか。ただ借り入れコスト上昇と通貨安のダブルパンチに苦しんできた新興国こそが、FRBの利上げペース鈍化で最大のメリットを享受できるだろう。

S&Pグローバルのポール・ワターズ氏は「例えば中南米など、多くの新興国は金利がかなり高い水準でピークを付けており、FRBが利上げのアクセルを緩めればそれに応じることができる態勢にある」と話す。

新興諸国はFRBに先んじて、かつ迅速に利上げを開始した。自国通貨がドルに対して下落し、借り入れコストと輸入物価を押し上げたのが1つの理由だった。

実際FRBが利上げ幅縮小を示唆する前の段階では、主要6通貨に対するドル指数の年初来上昇率は18%に達し、特にドル建てで取引されるエネルギーや一部食料品などの価格にたちまち影響を及ぼしていた。

そのドル指数は足元で直近高値から6%下がっている。

国連貿易開発会議(UNCTAD)は「今年の米国における利上げは、中国を除く途上国から推計で将来所得3600億ドル(約50兆円)相当を目減りさせる見込みだ。今後さらに問題が大きくなる状況がうかがえる」と述べ、米利上げが新興国に与える打撃の深刻さを説明した。

S&Pグローバルは、多くの国が通貨下支えのために介入を続けた結果、今年9月時点で新興国の外貨準備は7%、4000億ドル強相当が失われたとみている。

来年の新興国株と新興国の外貨建て債指数のリターンをそれぞれ8─12%、10─15%と強気に予想しているUBSは、現在のFRBの利上げサイクル下では、過去5回のサイクルよりも新興国資産の値動きは低調に推移してきたと指摘した。

<ECBと日銀に追い風>

ECBの場合、既に次回の利上げ幅は過去2回連続の75ベーシスポイント(bp)から縮小するとの観測が強まっているが、FRBの軌道修正でその可能性は一層大きくなる。

ユーロは対ドルでこの秋に付けた直近安値から7%戻しており、エネルギー価格を通じてすぐ消費者物価に波及する輸入コストを抑える役割を果たすだろう。

そしてECBの利上げ幅が縮小すれば、特に経済基盤が弱いユーロ圏周縁国の経済成長や債務を巡る懸念も和らぐ。

例えばイタリア国債の利回りは過去1カ月で急低下し、対ドイツ国債の利回りスプレッドも5月以降で最も小さく、多額の借金を抱えるイタリアへの投資家の信頼感が回復していることが読み取れる。

日銀にとっても、FRBの軌道修正は大助かりと言える。超低金利政策が円の急落と輸入コスト上昇をもたらしたと強い批判を浴びてきたからだ。

円安圧力が弱まれば、日銀は来年の物価上昇率が目標の2%前後を持続的に維持できるかどうかじっくり判断する余裕が生まれる。他方で世界的に債券利回りが安定すれば、日銀としては政策の枠組みをもっと柔軟に運営することができる、と何人かの市場関係者は解説する。

(Balazs Koranyi記者、Karin Strohecker記者)

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