コンセプトは“JRPGからの脱却”? 『ポケモン スカーレット・バイオレット』新情報から見えてきたもの

コンセプトは“JRPGからの脱却”? 『ポケモン スカーレット・バイオレット』新情報から見えてきたもの

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  • 更新日:2022/08/06
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『ポケモン スカーレット・バイオレット』

8月3日、『ポケットモンスター』シリーズの最新情報を伝える番組「Pokémon Presents 2022.8.3」が配信された。番組の目玉は、今年11月18日に発売予定となっている『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』(以下、『ポケモンSV』)の新情報だ。

前作『ポケットモンスター ソード・シールド』(以下、『ポケモン剣盾』)以来、丸3年ぶりのナンバリング最新作となる同タイトル。今回明らかとなった新情報に、『ポケモンSV』開発に込められたコンセプトを見た。

【画像】伝説のポケモン「ミライドン」の新フォルム

〈胸高鳴る情報が目白押しだった「Pokémon Presents 2022.8.3」〉

「Pokémon Presents 2022.8.3」では、今作初登場のポケモンとして、パピモッチ、ハルクジラの2匹が発表されたほか、新たなリージョンフォーム・ウパー(パルデアのすがた)の存在も明らかとなった。また、既存のポケモンからは、カイリューやニンフィア、ウインディ、アマージョ、サーナイトなど、60体以上がトレーラー内に登場。“待望のナンバリング最新作”というキャッチに恥じない、充実のラインアップが初お目見えとなっている。

さらに登場人物では、すでに発表されていたオーリム博士、フトゥー博士、ネモにくわえ、クラベル、ジニア、ペパー、ボタン、グルーシャなどの新キャラクターが公開に。そのほか、コライドン、ミライドンという2匹の伝説ポケモンがオープンワールドを巡るための移動手段となること、「メガシンカ」「ダイマックス」に似たポケモンのパワーアップシステムとして「テラスタル」と呼ばれる新要素が盛り込まれることも発表された。『ポケモンSV』ではすべてのポケモンがテラスタルでき、一時的なタイプの変化・わざの強化が可能とのこと。新システムの登場にともない、新たなレイドバトル「テラレイドバトル」も実装されるようだ。

〈『ポケモンSV』のコンセプトは、“JRPGからの脱却”?〉

シリーズファンにとっては、ワクワクの止まらない新情報がてんこ盛りとなった今回の配信。よりはっきりとしてきた『ポケモンSV』の輪郭には、シリーズが今作で目指す方向性のようなものも感じられた。それが“JRPGからの脱却”だ。

JRPGとは、ターン制・コマンド選択型の戦闘システム、一本道(もしくはそれに近い)の攻略チャート、それぞれにはっきりと区別された街・フィールド・ダンジョンなどの特徴を持つRPGの総称。日本製タイトルにそのような性質を持つものが多いことから、「Japan(日本)」の頭文字を取り、「JRPG」と名付けられている。伝統的なスタイルである一方で古典的でもあることから、場合によっては「古臭い」「面白みがない」といったネガティブな文脈でも使用される。『ポケモン』シリーズのナンバリング作品もまた、大まかには同ジャンルに属するものだ。

しかしながら『ポケモンSV』では、根幹となるシステムにシリーズ初のオープンワールドを採用。攻略順を特に指定せず、プレイヤーがそれぞれの好みで自由に世界を巡れる仕様を盛り込んだ。強いポケモンを育成するもよし、最強のパーティーを構築するもよし、図鑑のコンプリートを目指すもよし、珍しいポケモンを探すもよし、というわけだ。

前作『ポケモン剣盾』では、ワイルドエリアが限定的にそのような仕様を持っており、その自由度の高さに好評が集まった。自然のなかで生きるポケモンたちの姿に、本来のRPGとは別の楽しみ方を見出したプレイヤーもいただろう。この要素は、準オープンワールド的な仕様を持つ『Pokémon LEGENDS アルセウス』(2022年1月発売)を経て、『ポケモンSV』へと昇華されている。「自由度」という形で具現化された一連の動きは、まさに“JRPGからの脱却”と呼べるものではないだろうか。

〈クリアによって消費される作品から、長く遊び続けてもらえる作品へ〉

“JRPGからの脱却”と考えられる要素は、オープンワールド化だけにとどまらない。ユニオンサークルというシステムを通じておこわれるオンラインマルチプレイもそのうちのひとつだ。

広大な自然のなかを各プレイヤーそれぞれにキャラを操作しながら駆け回れる仕様は、MORPGにも通ずるもの。楽しみ方のひとつに「フレンドとの交流」をくわえることで、いわゆるところのJRPGにはない遊び方をプレイヤーに提示している。

JRPGというジャンルにおいては、「レベルアップによって強くなり、最終的にボスを倒す」という画一的な目標に縛られるケースが多かった。時間だけでなく、場所も共有する『ポケモンSV』のオンラインマルチプレイは、(JRPGの代名詞としての)過去のシリーズ作品にはない面白さを同タイトルにもたらしてくれるはずだ。

また、近年のシリーズ作品では定番の遊び方となったオンライン対戦も、「テラスタル」の実装により深みを増すだろう。先述したとおり、同システム下においては本来のそれとは別のタイプに変化するポケモン・個体が存在する。つまり、テラスタルによって弱点が変化するポケモン・個体が存在するというわけだ。

これにより、パーティー構成に対する考え方はより複雑なものとなっていく。オンライン対戦における競技性を過去作品以上に強めているのが『ポケモンSV』なのだ。だからこそ、RPGとしてのゲーム性に対する比重は、さらに小さくなっていくと考えられる。前作『ポケモン剣盾』がそうであったように、『ポケモン』シリーズはもはやRPGではなく、対戦ジャンルのひとつなのである。その裏には、「クリアによって消費されるRPGから、長く遊び続けてもらえるRPGへ」というテーマも感じる。“JRPGからの脱却”は、そのための必須課題であったのかもしれない。

このほかにも、協力要素の「テラレイドバトル」では、味方の行動を待たず、攻撃・回復が可能だという。これは「ターン制」の撤廃にほかならない。

前作から3年ぶりのナンバリング最新作『ポケモンSV』。その開発背景には間違いなく、“JRPGからの脱却”という指針が存在している。発売まで残り3か月半。進化を止めない国産RPGの金字塔は、さらなる良質な体験をファンに提供してくれるはずだ。(結木千尋)

結木千尋

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