売上2倍!「ペヤングソースやきそば」が自主回収騒動からV字回復できたワケ

売上2倍!「ペヤングソースやきそば」が自主回収騒動からV字回復できたワケ

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2020/10/17
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発売45周年を迎えた「ペヤング ソースやきそば」を製造販売する、「まるか食品」(本社・群馬県伊勢崎市)が、コロナ禍においても元気だ。

「ペヤング」シリーズを主力に、年間1億食を販売するという同社だが、近年は積極的に新商品を投入。今年に入ってからも既に15 品目の新商品を発売して、カップやきそば市場を賑わせている。カップやきそばで、これほどまでに新商品開発に熱心な競合他社は存在せず、唯一無二の企業である。

9月21日には、おやつ感覚で味わえる甘酸っぱい「アップルパイテイスト」を新発売。SNS上で賛否両論が巻き起こっている。

今年は新型コロナウイルスの感染拡大による「巣ごもり消費」で、スーパーマーケットやコンビニで、カップ麺や即席麺の売上が2桁を越える大幅増。「ペヤング」も、その恩恵を受けて販売好調だ。保存食の強みを見せつけている。

「ペヤング」ブランドが、長らく愛される理由を探ってみたい。

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ロングセラーとなっている、ペヤングソースやきそば

異物混入からの大逆転

まるか食品は2014年12月の異物混入事件を受けて、約半年間の工場休業に踏み切ったことを覚えている方も多いだろう。ところが一転して、15年6月に工場が再開してからは、一気にV字回復した。実に鮮やかな復活劇だった。

東洋経済オンラインの「『ペヤング事件』とは、いったい何だったのか」(15年5月24日付)によれば、当時の同社の売上高は約80億円、純利益が売上高の10%以上を占める超優良企業だった。

一方で、日本食糧新聞(19年7月5日付)の記事によれば、同社の19年3月期の売上高は153億円(前年比10.6%増)となっており、成熟市場のカップ麺では異例の成長を遂げている。

まるか食品はこの5年間に、年商をほぼ倍増させた。

2014年、売場からペヤングが消えた…

ブランクを乗り越えただけでなく、異物混入事件を奇貨として、カップやきそば市場で、存在感を示したのである。まさに、「ペヤングロス」に寂寥感を抱いていた愛好者の購買意欲に火を付け、「災い転じて福となす」を、現実化したのである。

異物混入事件の発端は、「ペヤング」購入者がTwitterに投稿した、ゴキブリが麺に混入した写真であった。

事態を重く見た同社では、対象となる4万6,000個をはじめ、流通していた商品の自主回収を決定。わずか10日ほどで店頭のカップ麺売場の棚から、「ペヤング」商品が撤収された。

群馬県伊勢崎市にある2つの工場の稼働を停止。品質管理の見直しを進めると共に原因究明に全力を尽くした。

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群馬県伊勢崎市にある本社工場(筆者撮影)

結局、原因は特定されなかったが、再発防止のために国際基準の食品安全システムの構築を進め、一般財団法人日本品質保証機構、FSSC22000を、2つの工場共に、本社工場が16年7月、赤堀工場が17年9月、それぞれ取得した。

製造ラインの異物混入防止策として、麺を揚げて冷却後、スパイス投入後、かやく(具材)とソース投入後と3回のセンサーカメラによる監視を徹底。金属探知機、X線探知機、重量チェッカーでもチェック。さらに、30分に1度の抜き打ちチェックにより、賞味期限、日付をチェックして完全な製品であるのかを確認している。

このような品質管理に対する真摯な姿勢が、V字回復とさらなる成長につながった。

SNSでバズる新商品が次々と

しかし、品質管理の徹底と、定番ロングセラー商品の変わらぬ人気だけでは、ここまでの成長は不可能だ。先述した、怒涛のように新商品を投入している効果が表れている。その切っ掛けとなったのは、12年の「ペヤング激辛やきそば」の成功であった。

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「激辛!ペヤングやきそば」と「ペヤングやきそば アップルパイテイスト」(筆者撮影)

同社・広報は、「激辛やきそばがヒットしてからは、弊社の商品はSNSで話題になりやすく、YouTubeでも取り上げていただく機会が多くなった」としており、SNS等で載せたくなるような商品作りを心掛けている。

ちょうどその頃は、「少女時代」、「KARA」等の韓流アイドルグループが人気を博し、コリアン風に味付けた料理にも人気が集まっていて、時流を捉えたヒットとなった。

また、16年度の日本食糧新聞社「食品ヒット大賞・優秀ヒット賞」では、「ペヨング ソースやきそば」が「優秀ヒット賞」を「一般加工食品部門」にて受賞している。

「ペヨング ソースやきそば」とは、「ペヤング ソースやきそば」から、かやくの肉を抜いて、50円ほど安価で販売した廉価版の商品。16年3月に発売されると、「ペヨングとペヤングはどこが違うか」、SNS上で検証する投稿が相次いだ。

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ペヤングの偽物かと騒がれた、「ペヨングやきそば」

ルーツは群馬の「粉食文化」にあり

ここで、まるか食品の社史を簡単に振り返ってみよう。

同社の創業は戦前の1929年(昭和4年)。伊勢崎市内で乾麺の製造販売を始めた。

群馬県には、前橋市に「サッポロ一番」で知られるサンヨー食品の発祥の地であり、主力工場もあるが、県南は小麦の産地で、米との二毛作により小麦が広く栽培されてきた。

そのため県内には、平たい麺の煮込み料理「おっきりこみ」、日本3大うどんの1つ渋川市の「水沢うどん」、桐生市の「ひもかわうどん」、伊勢崎市の「いせさきもんじゃ」、高崎市の「高崎パスタ」など、小麦を使った郷土料理が発達している。同社の発展の背景には、群馬の粉食文化がある。

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伊勢崎市役所に市名産品として展示された、ペヤング商品群(筆者撮影)

戦後の62年より、即席ラーメンの製造を開始。64年に日産7万食体制となり、まるか食品が設立された。なお、まるか食品の社名は、創業者・丸橋嘉蔵に由来する。

成長の軌跡を示しておこう。

・66年「味の大関」がヒットし、日産17万食に増強された。

・73年に、カップ麺に進出し、「ペヤングヌードル」を発売。

・75年には、業界初の四角い容器のカップ麺「ペヤングソースやきそば」を発売し、ヒット。

・76年には、本社工場に加えて赤堀工場が完成し、日産40万食となった。

・89年には、業界初の幅広麺として「ペヤングふる里うどん」が脚光を浴びた。

・94年には、10年以上カップ麺の上位売り上げを続けた実績が評価されて、日本食糧新聞社より第12回食品ヒット大賞ロングセラー賞を受賞している。

・2004年には、2倍サイズの「ペヤングソースやきそば超大盛」を発売。今日の大盛ブームの火付け役の1つになり、現在に至るまでロングヒットとなっている。

頑固なこだわりと、柔軟なマーケティング

こうして見ていくと、まるか食品はインスタントラーメンで基盤を築いて、カップやきそばに進出。「ペヤングソースやきそば」により不動のブランドとして確立した。そして、超大盛の大ヒットで人気が再加熱したと言えよう。

ちなみに、「ペヤング」の由来は、「ペア」+「ヤング」で、若いカップルで仲良く分けっこして食べてほしいとの願いが込められている。

当時カップ麺は、袋麺に比べてたいへん高価なイメージがあった。考案者は、9代目桂文楽とされるが、真偽は不明だ。なお、文楽(当時、桂小益)は四角い顔で売っており、四角い容器のやきそば「ペヤング」の顔として、新発売から17年間、CMに出演していた。

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ペヤングの多彩な商品群(筆者撮影)

商品的には、容器が四角いだけでなく、幾つもの差別化を図る革新を行っていた。

まず、業界初の液体ソースを添付したことがある。それまでに発売されたカップやきそばは粉末のソースのみだった。コクのある、まろやかな味の液体ソースや、麺やかやくを混ぜやすい四角の容器によって、屋台のやきそばをイメージした画期的な商品が誕生した。

また、既存のカップやきそばは、あらかじめ麺の上にかやくが掛かっていたが、かやくを別包装にすることで、清潔さ、保存性、味の向上が達せられた。

麺の容量90gは当時の標準60~65gから見れば1.5倍ほど多く、まさにビッグサイズだった。

まるか食品の広報担当者は「45年間味を全く変えておらず、リニューアルもなし。それがロングセラーの秘訣だと思います」と、強調した。

新型コロナの影響が広がった今年2~3月に予想以上に注文が増えた。工場を2交代制にしたり、24時間操業にしたりして対処。残業も増えていた。そこで、生産体制強化への協力に対する「感謝金」として、グループ社員150人に1人10万円を支給している。(朝日新聞デジタル・5月11日)

「弊社しかできないことに、挑戦し続けています。レギュラーサイズの約4倍の大きさを持つ『GIGAMAX(超超超大盛)』、市販加工品で最強レベルの辛さ『獄激辛』、味付けやかやくにインパクトを付けた『○○MAX』など、誰もが挑戦したくなる商品に取り組んでいきます」(同社・広報)。

今後は、レギュラーの7.3倍ものウルトラサイズの「ペタマックス」の発売も予定されており、これまでにないカップ麺のバカでかさが、メディアでも話題になることは間違いない。

組織づくりにも死角なし

兵庫県立大学大学院経営研究科の森尊文氏は「商大ビジネスレビュー」第9巻第4号(2020年3月)にて発表した論文「リーダーシップの観点から考察する危機的状況における組織のレジリエンス」の中で、「まるか食品は『ペヤングソースやきそば異物混入事件』という危機的状況に陥る中で、社長のリーダーシップにより、組織のレジリエンスが有効的に作用され、V字回復を遂げることができた」と述べている。

レジリエンスとは難しい言葉だが、回復力、復元性、反発性、しなやかな強さ、といった意味を持つ。

森氏によれば、組織のレジリエンスには、組織ビジネスの優秀性、組織文化の優秀性、チーム効力感が不可欠だが、まるか食品はカップやきそばでは特に東日本で高いシェアを有しており、組織ビジネスの優秀性があった。

また、創業からの無借金経営、従業員を解雇せず減給もしていないので、会社の理念が浸透しやすい組織文化の優秀性があった。

チーム効力感に関しては、売上高を従業員数135人で割ると、1人当たり1億1,000万円を売り上げていることになり、生産性の高さが際立っている。

ペヤングは不滅なり

組織のレジリエンスの基盤を築いた上に、3代目丸橋嘉一社長のリーダーシップで、「素早い製品回収、販売並びに製造停止を行い、工場の改善や従業員の教育を行うことで、外部のまるか食品に対する信頼性も上がったと考えられる」としている。その具体的な表れが、前述した両工場のFSSC22000取得だろう。

V字回復後も現社長の発案による「ペヨング」、「ギガマックス」などの話題作を連発して成長軌道に乗った。

18年12月~19年3月には、群馬県伊香保温泉の365段の階段に巨大「ペヤング」を設置するなど同温泉をジャックするイベントを敢行。19年7~8月には、神奈川県藤沢市の片瀬東浜に「ペヤング海の家」を出店など、意表を突いた宣伝活動も目立っている。

まるか食品の勢いは、当面止まりそうもない。

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2019年神奈川県藤沢市片瀬東浜に出店した、ペヤング海の家(筆者撮影)

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