ミクシィがFC東京や英国パブ「HUB」と組んだ真意

ミクシィがFC東京や英国パブ「HUB」と組んだ真意

  • 東洋経済オンライン
  • 更新日:2022/09/23
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東京・吉祥寺のHUBで行われたFC東京の観戦イベント。中央にいるのはかつてFC東京で活躍した中村北斗氏(写真:ミクシィ)

7月末の土曜日――。東京・吉祥寺駅から程近い英国風パブ「HUB」は、夕方から多くの人でにぎわっていた。店内は青と赤のFC東京カラーに染まり、多くのサポーターが夜7時にキックオフを予定している「FC東京対サンフレッチェ広島」を心待ちにしていた。

試合開始前、ある人物が店内に姿を現した。かつてFC東京やアビスパ福岡で活躍した中村北斗氏だ。試合が始まるとサポーターが座るテーブルを回り、談笑しながら観戦したほか、ハーフタイムには同氏への質問コーナーを開催。試合終了後にはサポーターたちと記念撮影を行うなど大いに盛り上がった。

多角化を推進するミクシィ

このイベントを仕掛けたのがIT大手のミクシィだ。同社はSNS「mixi」で一世を風靡。2013年に開始したスマホゲーム「モンスターストライク」が大ヒットし、今なお業績を牽引する。

ミクシィはそのモンストに次ぐ柱を模索している真っ只中だ。スマホアプリ「家族アルバム みてね」などを展開するライフスタイル事業をはじめ、オンラインベッティングアプリ「TIPSTAR」の公営競技事業など多角化を推進している。

その中の1つが冒頭の事例に代表されるようなスポーツ観戦事業だ。近年、ミクシィはこの事業を強化すべく、さまざまな手を打ってきた。2019年にはバスケットボールBリーグに所属する「千葉ジェッツふなばし」を子会社化。2021年にはJリーグのFC東京を傘下に収めた。

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FC東京カラーで染まったHUBの店内の様子(写真:ミクシィ)

同時に、スポーツコンテンツを楽しむためのプラットフォームの確立も進めてきた。2021年3月には英国風パブを運営するハブに対し、ミクシィが大半を出資するファンドから総額約15.5億円を出資。20%の株式を取得し、実質的に筆頭株主となった。店内のスポーツ観戦に強みを持つハブと手を組むことで、相乗効果を狙ったのだ。こうした一連の投資が冒頭のようなイベントの開催にもつながっている。

そして、これらを“1つの線”につなぐべく、ミクシィが2021年4月に開始したのが、検索サービス「Fansta(ファンスタ)」だ。スポーツ観戦できる飲食店を、エリアだけではなく放映予定でも検索できるのがファンスタの強み。対象となるスポーツイベントはJリーグの通常試合とACL(アジア・チャンピオンズリーグ)で、ファンスタを導入する店舗は通常、月1万円を支払うことで、検索サービスに掲載してもらう。

実はこのファンスタで提携するのが、スポーツ中継配信の分野で独走する「DAZN(ダゾーン)」だ。日本では商業施設などで観戦を目的としてスポーツ試合の放映を行う場合、その興行主催者や放送事業者などに対してその都度申請をする必要がある。

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ファンスタのアプリ画面。場所やチームからお店を検索することができる(画像:ファンスタから引用)

一方、商用施設でDAZNを視聴する場合、商業利用契約することで、好きな試合を店内で放送することが可能になる。契約者になれば、DAZNの公認サービスとなっているファンスタ上で、放映予定などを告知することもできる。

「僕らがチャレンジしているのはITの力を駆使してもう一度集まるということ」。ミクシィでファンスタの事業責任者を務める中川敬介氏はそう強調する。同氏は前職時代、アメリカでの駐在経験があり、その際に日本とアメリカのスポーツ観戦文化の違いを実感したという。

アメリカでは、NFLなど人気スポーツのチケットが高騰する一方、テレビ中継は有料のケーブル放送が前提。そこでパブなどに集まり、同じチームを応援する者同士でスポーツ観戦するという文化が根付いた。「ファンスタを通じて、そういう文化を日本でも根付かせていきたい」(中川氏)。

アウェー戦でも収益機会を創出

このファンスタを仕掛けた別の狙いが、クラブチームの「アウェー戦におけるマネタイズ」だ。Jリーグでは自らが拠点とするホーム戦と、敵地で戦うアウェー戦がある。ホーム戦の場合、チケット収入やグッズ販売などでの収益機会が得られるが、アウェー戦ではそのような機会がほとんどない。

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限定で販売されたFC東京の応援ドリンク(記者撮影)

ミクシィが目を付けたのはまさにこのアウェー戦だった。例えば、冒頭のイベントはFC東京が広島に乗り込んでのアウェー戦だった。その際、FC東京の応援ドリンクを販売し、その売り上げの一部がクラブに還元される仕組みとなっている。

とはいえ、ミクシィの思いは、単に自ら運営するFC東京だけが潤えばいい、ということではない。上記の応援ドリンクのような施策はセレッソ大阪や浦和レッズ、川崎フロンターレといった他クラブでも行っており、FC東京と同じような機会創出を広げようとしている。

ここ数年のミクシィのスポーツ事業への投資の狙いが、徐々に見えつつある。スポーツ観戦の文化を広げていくと同時に、クラブチームの収益機会を増やすことができるか。それを実現していくうえでも、ファンスタの成否が持つ意味は決して小さくない。

(武山 隼大:東洋経済 記者)

武山 隼大

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