ハーバード大「何百万もの遺伝子実験」が同時にできる新技術を開発

ハーバード大「何百万もの遺伝子実験」が同時にできる新技術を開発

  • Engadget
  • 更新日:2021/05/02
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MR.Cole_Photographer via Getty Images

ハーバード大学ウィス研究所の研究者が、何百万もの遺伝子実験を同時に実行できる新しい遺伝子編集ツールを開発しました。一本鎖のDNAの断片を作り出すことができるレトロンと呼ばれるバクテリアのDNAセグメントを操作する「レトロン・ライブラリー組換え(RLR:Retron Library Recombineering)技術」を使用します。

遺伝子編集といえば、近年話題に上ることが多かったのがCRISPR-Cas9技術。従来の技術よりも高精度に、DNA配列を簡単にいじることができ、主にさまざまな病気の治療のための研究に使われています。

しかし、CRISPR-Cas9は、変異配列をゲノムに組み込むため目標とするDNAの一部を切断します。このとき分子レベルの鋏になるCas9酵素がしばしば目標と違う場所を切断してしまうため、細胞レベルで有害なものでである可能性があり得ます。

これに対して、レトロンは変異したDNA鎖を複製中の細胞に導入し、娘細胞(じょうさいぼう:細胞分裂の結果として生じる2つ以上の細胞)にそれを取り込ませることでができます。取り込まれた配列は分裂のたびに複製されて、その配列自体が、どの個体が各レトロンの配列を受け取ったかを識別する「バーコード」の役割を果たすことで、正確に作られた突然変異株を追跡しやすくなります。この方法は元のDNAにダメージを与えずゲノム編集ができ、一度に大量の配列を投じることで複数の実験が実行可能です。

研究者は大腸菌でRLRを実験し、いくつかの調整を行った結果、90%の個体がレトロン配列を取り込めるようになることを確認しました。実験では、個々の変異体の塩基配列を調べる代わりに、レトロンのバーコードの塩基配列を調べることで、大腸菌の抗生物質耐性変異を見つけることができ、プロセスが大幅に短縮できたとのこと。

次に研究者らは、RLRをさらに一歩進めて、ランダムに断片化したDNAにこの技術を適用できるかどうか、また一度に使えるレトロンの数を調べました。彼らは、別の抗生物質に高い耐性を持つ大腸菌株のゲノムを裁断し、その断片を使って"プラスミド"と呼ばれる「娘細胞に分配される染色体以外のDNA分子中のレトロン配列」に含まれる数千万の遺伝子配列のライブラリを構築しました。

ウィス研究所合成生物学部門のリーダーでHarvard Medical Schoolの遺伝学教授でもあるジョージ・チャーチ氏は、「RLRを用いて、プールされたバーコード付きの変異体ライブラリを解析できるようになったことで、何百万もの実験を同時に行うことができます。これでゲノム全体への変異の影響や、それらの変異がどう相互に作用するかを調べることが可能になりました。この研究は、RLRを他の遺伝子システムで使うするためのロードマップを確立するのに役立ち、将来の遺伝子研究にエキサイティングな可能性をいくつももたらします」と述べています。

Source:Wysss Institute

Munenori Taniguchi

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