Apple復活と躍進のシンボル「iMac」の進化をデザイン視点で振り返る

Apple復活と躍進のシンボル「iMac」の進化をデザイン視点で振り返る

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2020/09/17
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Appleは史上初の時価総額2兆ドルを超える企業になった。同時にその時点で世界で最も価値のある企業になったということである。グローバルブランドランキングでも堂々の第一位を獲得。名実ともに世界一の会社になっている。

一時期は倒産寸前まで追い込まれていた企業とは思えないぐらいの大躍進をしたことになる。そのAppleを復活させたのはスティーブ・ジョブスであることは間違いない。一度は会社を去った彼が復帰したことで、Appleは「救済」された。

そして起死回生を支えたプロダクトが紛れもなくiMacである。

20数年前に瀕死の状態だったAppleは、ジョブスが復帰しiMacをリリースしたことで息を吹き返し、今日に続く大きな成長を成し遂げた。

iMacの歴史はデザイン・イノベーションの歴史

デザイナーにとってiMacのデザインストーリーから学べることは多い。色、形、素材、小型化の探求は、リリースされるごとに大きなブレークスルーをもたらした。また、iMacというプロダクト自体がイノベーション、ビジネス戦略、ハードウェアデザイン、ソフトウェア開発、ユーザー体験全てにおいてイノベーションの本筋を学ぶ優れた教材にもなっている。

Apple復活、そして躍進の象徴でもあるiMacのデザインの進化を見てみよう。

初代iMac(1998)Appleを倒産から救った革命児

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1985年にAppleを去ったスティーブ・ジョブズが同社に復帰したのが1997年。その際に真っ先に手をつけたのが、プロダクトラインの一新である。

ジョブスがいなくなった後のApple製品は数が多すぎたし、何よりもデザインがどんどんダサくなっていった。それに対してジョブスは大胆にほとんどのプロダクトを廃止。限られたリソースを「一つのプロダクト」にフォーカスした。そして、急ピッチでデザイン・開発され、復帰第1弾としてリリースされたのが初代のiMacである。

ジョブズがアップルに復帰して最初にメジャーリリースされた初代iMacは、当時、インダストリアルデザインのVPを務めていたジョナサン・アイブを世に送り出したコンピュータであると同時に、Appleが復活の道を歩むことを発表したマシンでもある。

iMacのデザインは、『ベージュ』の四角い箱に入っていたそれまでのパソコンの常識を全て覆した。ブルーの半透明の筐体に全てが入れられ、CPUとディスプレイが一体型。

ちなみに上写真の色の正式名称は”ボンダイブルー”で、ジョブスがオーストラリアのボンダイビーチの海の色からインスパイアされてつけた。この半透明のデザインスキームは、キーボード、マウス、そしてUSBケーブルに至るまで細部にまで採用された。その後、キャッチーな5つのカラーオプションも追加した。

そしてその色の名前自体がおしゃれ。

・ボンダイブルー

・ブルーベリー

・グレープ

・タンジェリン

・ライム

・ストロベリー

初代iMacの全てが”パソコンっぽく”なかった。それはまさに”レトロフューチャリズム”を体現したデザイン。当時はことキャンディカラー&スケルトンのデザインスキームをパクる企業が続出するほど大流行した。

ちなみに、このiMacの鮮やかな色合いは、1960年代のオリベッティ・タイプライターからインスパイアされたと言われている。

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初期のボンダイブルーに追加された5つのカラーオプション

デザインの可愛らしさに人気が集まり、教室やリビングルームに置くパソコンとしても大人気。Macというプロダクトを一部のマニアックなファン向けから、『学校や家庭で使えるみんなのパソコン』に成長させた。

また、多くのWindowsユーザーが初めてMacに乗り換えるきっかけにもなったプロダクトでもある。そして、性能も当時にしては十分。インターネット時代のために作られたApple初のコンピュータでもあった( ”i”はインターネットの意味)。ただ、こだわって”まん丸”にデザインされたマウスは手首が痛くなるほど使い難かった。

2000年にリリースされた2代目ではデザインと性能の改善をするとともに、インディゴブルーをはじめとした、13色の豊富なカラースキームを提供した。

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2代目iMacに採用された13色のカラースキーム

3代目iMac(2002)はフラットスクリーンを採用した通称ランプiMac

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初代および2代目iMacの大きなプレッシャーを受け、次にリリースされるiMacに世の中の注目は集まった。結果としてそれは良い意味で期待を大きく裏切る結果となった。

2002年のMacworld San Franciscoにて、iMacのデザインの話題は色から形へと移った。ここで発表された3代目のiMac、正式名称 iMac G4はその形を大きく変化させ、カラーバリエーションは白だけになった。

そのシェイプは再びパソコンの常識を覆すものであった。むしろその形は家電に近く、動く姿はまるでピクサーのオープニングアニメーションに登場するLUXO Jr.ランプのアニメーションを彷彿とさせ、このモデルは通称ランプiMacやiLampと呼ばれた。実際、ピクサーはAppleと協力してiMacを題材にした2つの短編アニメーションを制作した。

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ピクサーからインスパイアされたiMacのCMのワンシーン

この世代のiMacからディスプレイがCRTから液晶フラットパネルに移行した。その裏にはジョナサン・アイブによる「重力に逆らっているように見える」デザインを実現する狙いがあった。

磨き上げられたネックに吊るされた15インチの液晶パネルは、iMacの部品を収納するドーム型のベースに固定されている。コンピューターの筐体とディスプレイを区別することで、LCDパネルを薄く動かしやすいデザインを実現した。

この設計により、ディスプレイを360°縦横無尽に動かすことを可能にした。キーボードもマウスも透明感を残しながらも進化させた。

その当時ジョナサン・アイヴは、彼のこだわりが凝縮されたモデルだと説明。与えられた制約を生かし、限りなくエレガントなデザインを生み出した。確かにそれは初代iMacにも劣らない革命的なデザインであり、シンプルさの追求でもあった。そして、無機質なプロダクトに「可愛らしさ」を追加することでより親しみやすさをアップさせた。

この斬新なデザインが評価され、現在、近代美術館の建築デザイン部門にも展示されている。

Appleでは『デザインが最も重要であり、テクノロジーはそのデザインを実現する手段として極限まで追及されていることを体現したプロダクト』でもある。ソフトウェア面を見ても、iTunes, iMovie, iPhotoなど、現在も利用されているアプリの源流であるiLifeシリーズのソフトウェアがプリインストールされたのもこのモデルからである。

しかし、この世代のiMacに弱点がないわけではない。デザイン性を追及した結果、スピーカーを内蔵することができず、外付けにせざるをえなくなった。

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外付けスピーカーを余儀なくされた3代目iMac

4代目iMac(2004)iPodのデザインモチーフをパソコンに採用

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次世代iMacのキャッチコピーはシンプルだった。それは、”From the creators of iPod(iPodの生みの親たちから)” だ。これは、『Appleのビジネスが音楽プレーヤーによって急速に変貌を遂げた』ことを端的に表している。

かつては単目的のアクセサリーだったiPodは、この時点で現代の多くのユーザーのデジタルライフスタイルに欠かせない存在となり、iMacにもデザインにも直接影響を与えている。

このモデルの正式名称はiMac G5。デザイン面では、これまでの奇抜なシェイプや素材ではなく、よりシンプルに洗練されたスタイルを追及。フラットパネルディスプレイに本体のパーツ全てを格納することで、究極のエレガントさを生み出した。ディスプレイの厚みは2インチ弱。

アルミニウム製の台座に吊るされたiMac G5は、当時世界で最も薄いデスクトップコンピュータだったとAppleは主張していた。先代に引き続き、カラーは白のみでディスプレイサイズは17インチと20インチの2種類。全体のシェイプ、雰囲気、プラスチックの質感の全てがiPodとのデザイン的共通項となっていた。

このデザインを踏襲した第5世代では、より薄く、性能をよりパワフルに、そしてiSightカメラを標準装備することでオンラインコミュニケーションに動画の概念を導入した。2006年にはそれまでで最も大きなスクリーンを持つ24インチのモデルを追加した。この辺からが現在のiMacに直結したデザインスキームが始まっている。

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iPodのデザインスキームを採用した4代目iMac

6代目iMac(2007)プラスチックからアルミニウムへ、時代が変わる

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iPodがiMac G5のデザインに影響を与えたように、iPhoneも次世代iMacにインスピレーションを与えた。

この世代からそれまで一貫して採用してきたデザインスキームである透明感から、新しいデザインスキームである”メタル感”への移行を進めた。これは同じ年に発表された初代iPhoneと同じ。プラスチックはほとんど使われず、黒いガラスのベゼルとアルミニウムの筐体に囲まれた大きくて光沢のあるディスプレイは、iMacを一瞬にしてよりモダンな印象にした。

外側のケーシングには、RAMアップグレード用のスロットにアクセスするために、目に見える一本のネジが使われている。同様のスタイルは、AppleのCinema DisplayやユニボディのMacBookにも採用された。

スティーブ・ジョブズは、プロのユーザーは新しいデザインが従来のモデルよりもプロ用のコンピュータに似ていると感じ、消費者はさらにハイエンドのコンシューマー向け製品に似ていると感じていると説明。このユーザーフィードバックをもとに、MacBookやディスプレイもそれまでプラスチックから、アルミやチタン合成をメイン素材として採用し始めている。

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アルミをメイン素材としたMac Proとディスプレイ

また、この時期から世の中ではテクノロジー企業やデジタルデバイスの環境に対する影響が叫ばれ始めていた。

それはAppleに対しても例外ではなく、20インチや24インチのディスプレイへの移行は、すべてのパーツにおいてさらに多くの材料が使われることを意味していた。プラスチックに比べ、アルミニウムとガラス素材はリサイクル性にも優れてる。

プラスチックからアルミニウムとガラスに切り替えたことは、『持続可能性』の面で大きな飛躍を実現した。その後、よりシンプルさを追及するために、マウスもキーボードもワイヤレスを採用した。2009年の7代目ではUnibodyを、2014年にはRatina 5Kのディスプレイを実現した。

その後もiMacはシンプルさと性能の追及は続けられ、エレガントなデザインとカテゴリー最高レベルの性能の両立を達成し続けている。

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iMacはそれぞれの時代における最高峰のデザインの体現

このようにiMacは時代とともに進化を続け、現在の姿にたどり着いている。新しいモデルがリリースされるたびに「その手があったか!」という感を受ける。

それはAppleが『常にデザインの限界を推し進め、与えられた制限の中で最大限のデザインを成し遂げる』ことで常に時代の最先端を進んでいることがわかる。同時に初代の登場から20年以上経っている現在でも、iMacの魅力は続いている。むしろ初代のiMacをリビングルームやオフィスにインテリアとして飾っている人もいる。そこにはどれだけ時代が変わっても、『コモディティーにはならないデザイン』の力が発揮されていると感じる。

最新のiMacが最高のiMacを実現しながらも、それぞれがタイムレスな魅力を持ち続けてもいる。全てのモデルに一貫して共通しているのは『常に究極のシンプルさの追求』であり、それこそが究極のデザインのゴールとも言えるだろう。

1998年にスティーブ・ジョブスが世の中に対して放った「宣戦布告」は今でも脈々と引き継がれている。

(この記事は、btraxのブログfreshtraxから転載・編集されたものです)

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