野岩鉄道は今が正念場? クラファン2000万円獲得も 「リバティ会津」との関係が気がかりだ

野岩鉄道は今が正念場? クラファン2000万円獲得も 「リバティ会津」との関係が気がかりだ

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  • 更新日:2022/11/25
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野岩鉄道唯一の生え抜き車両、61103編成はクラウドファンディングにより、ジョイフルトレイン化される(画像:岸田法眼)

6050系の歴史

6050系は東武鉄道(以下、東武)が開発した車両で、1985(昭和60)年10月に登場した。当時、浅草~東武日光・新藤原間の快速は6000系が務めていたが、冷房装置がないこと、1964年の登場から20年経過し、車体の老朽化とサービス面が課題となっていた。

【画像】昭和の香りが漂う野岩鉄道6050系の「車内」を画像で見る(11枚)

快速は1986年10月9日開業の野岩鉄道会津鬼怒川線に直通することから、東武は車両の更新を決断した。6000系の台車や制御装置などは老朽化の域に達しておらず、引き続き使用。車体は冷房装置の搭載といったグレードアップ、不燃や難燃の強化を図ったものに置き換えた。これを「車体更新車」という。

6000系の生まれ変わりとなった6050系は、わずか1年で車体更新を完了しなければならない。そこで東武は快速車両を充足させるべく、車体や走行機器類をすべて新製したものにそろえた「完全新製車」を2編成投入した。

野岩鉄道の開業を控えた1986年8月から9月にかけて、完全新製車の2編成が野岩鉄道に移籍。10月9日に開業すると、東京から会津方面への新ルートとして注目され、連日大盛況。当時は終点会津高原(現・会津高原尾瀬口)で国鉄会津線(現・会津鉄道会津線)に接続し、会津若松方面へ向かう人々でにぎわい、赤字ローカル線が息を吹き返す。

1988年には輸送力増強の一環として、東武、野岩鉄道とも完全新製車を増備。1990(平成2)年には会津鉄道会津高原~会津田島間の電化に備え、東武は完全新製車も増備。程なく会津鉄道に移籍となった。

いずれの所属車も東武の南栗橋車両管区新栃木出張所に配属され、車両運用も東武主導で進められた。

6050系は“日光・鬼怒川・会津方面の顔”として一時代を築き上げたが、老朽化や運転体系の変更もあり、東武と会津鉄道の所属車は2022年3月12日のダイヤ改正で定期運用を終了した。

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ダイヤ改正後も野岩鉄道6050系が健在ながら、洗車の環境に頭を悩ませている(画像:岸田法眼)

野岩鉄道所属車のみ運行を継続

2022年3月12日以降、6050系は野岩鉄道所属車のみ活躍が続いている。その背景として考えられるのは、ワンマン運転が行われていないことだ。

現在、6050系の各駅停車が5往復、東武の特急「リバティ会津」(鬼怒川温泉~会津田島間は特急券を買わなくても乗車できる)が4往復、会津鉄道の快速「AIZUマウントエクスプレス」が1往復運転されている。東武と会津鉄道にはさまれた路線のため、下りは新藤原、上りは会津高原尾瀬口を発車すると、車掌が車内を巡回し、乗客のきっぷを確認する。

さらに6050系と特急「リバティ会津」用の車両(東武500系リバティ)は、当初からワンマン運転に関する機器が搭載されていないこと。野岩鉄道は気動車の運転に必要な甲種内燃車免許を持つ乗務員がひとりもいないことから、快速「AIZUマウントエクスプレス」は会津鉄道の乗務員も“直通”する。

これらが幸いし、野岩鉄道所属の6050系が引き続き活躍できるのだ。ただ、ダイヤ改正後、東武との直通運転区間が鬼怒川線鬼怒川温泉~新藤原間に短縮されたため、南栗橋車両管区新栃木出張所の自動洗車機が使えず、新藤原駅の留置線で手洗いを余儀なくされた。

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東武鉄道6050系はJRグループの近郊形電車に相当する(画像:岸田法眼)

クラファン成功で61103編成が再生

野岩鉄道開業時から年間の乗車人員は右肩上がりが続き、1991(平成3)年度には過去最高の約117.5万人を記録した。そのほとんどが観光客である。しかし、1992年以降は不況、モータリゼーション、少子高齢化、新型コロナウイルスの影響も重なり、2021年度は約18万人に落ち込んでしまう。加えて、6050系も寄る年波との闘いが続いている。2022年4月には61101編成が廃車にされ、野岩鉄道所属車は3編成6両から2編成4両に減った。

8月8日、野岩鉄道がクラウドファンディングへの挑戦を発表した。8月10日9時00分から10月7日23時00分まで募集金額1500万円に到達すると、野岩鉄道唯一の“生え抜き”である61103編成をジョイフルトレイン化改造するというもの。模擬運転台の設置、畳スペースの設置、自転車スペースの整備、多機能スペースの整備をすることで、“乗って楽しい電車”を創出する計画をたてた。

衝撃の一報は反響が非常に大きく、複数のメディアが取材に訪れたほか、9月13日で目標額の1500万円を達成。さらに2300万円のネクストゴールを設定し、追加の改修箇所として模擬運転台に動画放映用モニターを設置、トイレのリニューアル(和式から車いす対応の洋式に更新するものと思われる)を発表した。最終的に2300万円には届かなかったが、それでも2183万9000円が集まった。

その後、東武は2022年11月24日から2023年4月7日まで(2022年12月25日から2023年1月9日までを除く)、日光線下今市~東武日光間、鬼怒川線下今市~鬼怒川温泉間の日中の各駅停車でサイクルトレインの実証実験を行う。結果によっては鬼怒川線のサイクルトレイン区間が新藤原まで延び、自転車ごとジョイフルトレイン化された61103編成に乗り継げる可能性も期待できる。

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特急「リバティ会津」は浅草~会津田島間を結ぶ(画像:岸田法眼)

今後の課題は野岩鉄道の乗車人員回復なるか

野岩鉄道がクラウドファンディングに成功した以上、これからが正念場である。

2023年春にダイヤ改正を実施するのなら、東武や会津鉄道の接続列車に影響を与えないかたちで、絶景車窓で徐行や一時停止のサービスを行い、“列車そのものを観光地”にするのも一考だ。

野岩鉄道にとって、もっとも気がかりなのは特急「リバティ会津」だろう。東武の特急「リバティけごん」「リバティ会津」「リバティきぬ」は、2017年4月21日のデビュー当初、下今市~東武日光・会津田島間に限り、特急券なしでも乗車できる態勢をとっていた。

これにより、特急「リバティけごん」「リバティ会津」が併結する浅草~下今市間では、特急「リバティ会津」が満席の際、特急「リバティけごん」の特急券を確保すれば、編成を分割する下今市で特急「リバティ会津」に乗り換えることができた(その逆も可能だった)。

ところが2022年3月12日のダイヤ改正で、特急券なしで乗車できる区間が鬼怒川温泉~会津田島間に短縮されてしまい、上記の乗り継ぎができなくなってしまう。特急「リバティ会津」の満席時は新藤原から先が遠くなってしまったのだ。この施策だと野岩鉄道および、会津鉄道の乗車人員減少に歯止めがかからない要因につながってしまうのではないか。

東武は6050系の快速、区間快速を廃止してまで特急の格上げを推進した以上、今一度、特急券なしで乗車できる区間を元に戻してはどうだろうか。

岸田法眼(レイルウェイ・ライター)

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