「アレシボ天文台」の世界最大級の電波望遠鏡が3カ月で2度の大事故を起こして解体されることに

「アレシボ天文台」の世界最大級の電波望遠鏡が3カ月で2度の大事故を起こして解体されることに

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  • 更新日:2020/11/20
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byJeff Hitchcock

プエルトリコにあるアレシボ天文台の電波望遠鏡は、直径305mの反射面を持つ世界最大級の電波望遠鏡であり、天文学の研究において長らく重要な役割を果たしてきました。しかし、この電波望遠鏡は1963年に建造されたため老朽化が進んでおり、2020年8月~11月の間だけで2度も大事故が発生したことを受け、アメリカ国立科学財団(NSF)が電波望遠鏡の解体を決定しました。

NSF begins planning for decommissioning of Arecibo Observatory’s 305-meter telescope due to safety concerns | NSF - National Science Foundation

https://www.nsf.gov/news/news_summ.jsp?cntn_id=301674

Famed Arecibo telescope, on the brink of collapse, will be dismantled | Science | AAAS

https://www.sciencemag.org/news/2020/11/famed-arecibo-telescope-brink-collapse-will-be-dismantled

Facing collapse, the famed Arecibo Observatory will be demolished - The Verge

https://www.theverge.com/2020/11/19/21575025/arecibo-observatory-puerto-rico-decommission-structural-collapse-cable-break

アレシボ天文台は太陽系外生命体をターゲットとした初の電波信号「アレシボ・メッセージ」の送信をはじめとして、さまざまな地球外探査プロジェクトに使用されてきたほか、ゲームのステージや映画の舞台にもなりました。アレシボ天文台が誇る世界最大級の電波望遠鏡は、21世紀に入ると予算の削減やハリケーンの直撃による破損といった事態に見舞われましたが、2020年の時点でも現役の電波望遠鏡として運用されていたとのこと。

ところが2020年8月10日、電波望遠鏡の副鏡を支える鋼鉄製の補助ケーブルが切れてしまい、そのまま主鏡の反射面に衝突するという事故が発生。電波望遠鏡にとって重要な部分である反射面が30mにわたって割れたため、一時的に稼働が停止されることとなりました。

この事故の修理工事は2020年12月中に行われる予定でしたが、なんとこの事故からわずか3カ月後の11月6日、再び電波望遠鏡で事故が起きました。今度は副鏡を支えるメインケーブルが切れて落下し、反射面やその他のケーブルが損傷したと報じられています。

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世界最大級の電波望遠鏡でわずか3カ月に2度の大事故が発生 - GIGAZINE

アレシボ天文台はNSFに補助金を申請して再稼働に向けた計画を進めていましたが、NSFがエンジニアリング企業による複数の調査結果を検討したところ、電波望遠鏡の修復は施設作業員にもリスクがあることが判明。NSFは57年間にわたり使用され続けてきた電波望遠鏡の修復を断念し、解体することを発表しました。

電波望遠鏡の老朽化は深刻であり、すでに切れたもの以外のケーブルもハリケーンなどの災害や厳しい気候にさらされ続けているため、電波望遠鏡の構造を支えられなくなる危険があるとのこと。最悪の場合、吊り下げられた副鏡が反射面に衝突したり、副鏡を支える塔が崩壊して周囲の建物に被害が及んだりする可能性もあるそうです。

電波望遠鏡を解体する決定について、NSFのSethuraman Panchanathan局長は「NSFは労働者や天文台のスタッフ、訪問者の安全を優先しているため、残念ながらこの決定が必要です」とコメント。また、NSFで天文部門のディレクターを務めるRalph Gaume氏は、「エンジニアは近い将来、電波望遠鏡が自壊するだろうとアドバイスしました」「電波望遠鏡には予期せぬ制御不能な崩壊のリスクがあります。管理された廃止により、私たちが天文台の貴重な資産を保存する機会を得られます」と述べています。

発表から数週間以内に電波望遠鏡の解体計画が立案され、周囲の安全を確保した上で実行に移される予定とのこと。なお、アレシボ天文台の施設が全て解体されるわけではなく、電波望遠鏡以外の観測設備やビジターセンターといった建物は保存され、電波望遠鏡が収集したデータの分析などが当面の間は継続される予定です。

長年にわたってアレシボ天文台に依存してきた多くの科学者にとって、今回の決定は残念なものです。しかし、NSFでアレシボ天文台のプロジェクトを担当するAshley Zauderer氏は、今回の決定が天文台で働く人々にとって最良の決定だと主張。「天文台の心と魂は電波望遠鏡ではなく、そこで働く人々です。NSFは真の宝物を優先しました」と述べました。

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byTodd Van Hoosear

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