経営とオーケストラの指揮の「共通点」はドラッカーが教えてくれた

経営とオーケストラの指揮の「共通点」はドラッカーが教えてくれた

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  • 更新日:2021/10/14
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『マネジメント』で知られるドラッカーは、経営者の役割を指揮者に例えたそうですが、それはどういう理由からだったのでしょうか。今回のメルマガ『戦略経営の「よもやま話」』では、著者の浅井良一さんがドラッカーの言葉の真意を、世界的に有名な二名の指揮者、カラヤンとフルトヴェングラーから読み解きます。

革新するマネジャー 指揮者の役割

ドラッカーは“マネジャーの役割”についてこのように言っています。

部分の和より大きな全体、すなわち投入した資源の総和よりも大きなものを生み出す生産体を生み出すことである。それは“オーケストラの指揮者”に似ている。オーケストラでは、指揮者の“行動、ビジョン、指導力”を通じて、各パートが統合された“生きた音楽”となる。

とドラッカーは言っているのですが、ここで皆さんは少し違和感を感じられると思うのですが、それは「“マネジャー”とは何か」ということで、先に言ったように指揮者がそうで、経営者はトップ・マネジメントだと言うと分かってもらえるかと思うのですが、調和ある目標を達成するために、複数の人の働きを“統合する人”です。

ドラッカーは、経営者の役割を「個人が奏でるパート(音)を統合させて“生きた音楽”となす指揮者」に譬えられるとしているのですが、これは事業は“生きた音楽”そのものであり、そこでどのように聴衆に感動を与えるのかを「ヘルベルト・フォン・カラヤン」と「ヴィルヘルム・フルトヴェングラー」から読み解きます。

<カラヤンは、どうだったのか>

「彼には彼特有の“美学(美意識)”があり、またそれに対しての徹底的な追求と執着があり。自身の求める響きが出るまで辛抱強く楽団員を“説得”していた」というのがカラヤンのスタイルだったそうで、演奏者によると「これほどまでの音楽的充実感、正確性を追求できたことはいまだかつてなかった。われわれは世界中のどのオーケストラにも優る、重厚で緻密なアンサンブルを手に入れたのだ」と言います。

ヘルベルト・フォン・カラヤン(Wikipedia)

<フルトヴェングラーは、どうだったのか>

「“濃厚な官能性と、高い精神性”と、その両方が一つに溶け合った魅力でもって聴き手を強烈な陶酔にまきこんだ」

そのスタイルは「作曲家がその深層心理の混沌を形象化していく作曲の過程を追体験し、あたかも作曲家自身の即興演奏のごときものであって、演奏はテンポの変化がものすごく顕著であるにもかかわらず、その移行部には自然さが感じられる」と自由性があったとします。

ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(Wikipedia)

二人の指揮者について調べたらこんな解説があったのですが、実体験のために二人の「ベートーベンの第五」を聞いてみたのですが、不案内な私でも、なんとなく納得させられるものがありました。良いものは良いものであり、企業の目的である「顧客の創造」の実現のため「美的精神性をもって指揮する」のが名経営者の役割です。

まず、しなければならないのは“感動を与える作品(ミッション)”づくりで、シンフォニーにおいては「音楽スキル」を必要とするのですが、マネジメントにおいては“信念、志”あれば誰もができることです。たとえば「ホンダのスーパーカブ」を作曲したのは藤澤武夫さんで、本田宗一郎さんの総指揮によって大ヒット作品として演奏されました。

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スティーブ・ジョブズの場合では、あったのはハチャメチャな創作意欲とそれを実現しようとする手段を択ばない実践でした。特別に優秀な演奏者(技術者)を集めて、自身の曲を演奏させたのです。失敗と混とんを巻き起こしながら、ときに思いもよらない新曲が演奏されて、聴衆に絶賛されて演奏会は大成功ともなりました。

ここで付言しますが、要求水準がスバ抜けて高く、週に90時間も働かせて、気に入らなければ首だとさえ脅すのに、選りすぐって集めた技術者に支払われた報酬はいえば、周りより低かったのだそうです。彼らが、ジョブズの過酷な作品作りに参画したのは、その作品が「宇宙にへこみを作る」とする遠大な構想の困難性が魅力だったからです。

ここでは事業を演奏に譬えているのですが、常に評価するのは顧客(聴衆)であり、音楽に飢えいるときは聞くだけで満たされるのですが、ふんだんにあふれかえっていれば要求するものは高くなるばかりです。たとえば「たい焼き」一つにしても、尻尾まで程よく美味な餡が詰まっていなければ、ひいきにしようとはしないでしょう。

現在は、世界競争の中で多様な音があふれかえる時代になっています。けれど、音が乏しかった時代から事業を行ってきたほとんどの企業では、過去のヒット曲を頼りにし、それも惰性的に指揮、演奏するのでは、豊かになり嗜好も変化した聴衆に満足を与えるなどできないでしょう。革新できない大企業では、満足できる演奏ができなくなっています。

今日のグローバル化した時代、より選択肢が多くなった聴衆(顧客)は、より新鮮で異質で感動できる音楽(効用)を求めています。大いなるビジョンをもつ新たな者にこそ、多くの機会が与えられます。

image by:Shutterstock.com

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浅井良一『戦略経営の「よもやま話」』

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