
秋篠宮家の二女佳子さま(写真:AP/アフロ)
(つげ のり子:放送作家、皇室ライター)
秋篠宮邸の改修にかかった費用は44億4600万円
秋篠宮本邸(東京・赤坂御用地)が昨年9月30日に改修工事を終えた。
あとは引っ越すばかりと準備が整い、年明けにもそうした動きが出てくるものと見られていたが、「引っ越しは少しずつゆっくり行う」方針のようで、年度末の3月中には終える模様だ。
この秋篠宮本邸の改修にかかった費用は、赤坂御用地内の邸宅周辺の整備と合わせて34億6600万円。竣工までの間に暮らされた、仮の住居である御仮寓所(ごかぐうしょ)は御用地内に新築され、費用はおよそ9億8000万円。今回の改修と合わせると44億4600万円となる。
天皇陛下がお住まいになる御所の改修費用が、約8億7000万円だったことを考えると決して安くはないものの、これには様々な事情があった。
改修前の秋篠宮本邸は、今から50年前に竣工した旧秩父宮邸を受け継ぎ、それをリフォームして1997年3月から使われてきた。
しかし、建物の老朽化が激しく、宮内庁は秋篠宮さまに幾度か改修を打診したが、そのたびに「私どもより古い宮邸の改修を優先して欲しい」「(東日本大震災や不景気など)社会情勢に鑑みて控えたい」とする秋篠宮さまの意向で、本格的な改修は先送りされてきたのだ。
とは言っても、建物の経年劣化は限界に達しようとしていたのだろう。
「令和のお代替わり」が改修工事着手のきっかけ
今回の改修工事に着手したきっかけは、令和のお代替わりに伴って、秋篠宮さまが皇太子と同等のお立場である皇嗣(こうし)となられたことだった。
それによって、対応しなければならない公務が大幅に増えたことから、職員も増員せざるを得ず、事務室および執務室を有する公室棟が手狭になったことで、2020年、ようやく増改築に着手したのである。
一般論として古い建物を直すには、時に新築するよりも費用がかさむ場合がある。今回の秋篠宮本邸の改修工事は、まさにそれに該当する。
できるだけ以前の建物で使用されてきた部材を活用しても、不燃性や耐震性を考慮しての工事は根本からやり直さなければならない。材料費の高騰やコロナによる中断もあり、意図せぬ経費がかかった。
もしも、以前からこまめに少しずつ改修をしていれば、大規模な工事でも、今回のような金額にはならなかったかもしれない。いずれにせよ、劣化に任せて放置していると、いざ改修しようとすれば、かなりの経費を覚悟しなくてはならないということだ。
完成した本邸は、鉄筋コンクリート造りの地上2階、地下1階建て。延べ床面積は約2972m2と、改修前の約2倍の広さに拡大されている。
改修後の総延べ床面積は皇居内の御所と同規模
一方、天皇皇后両陛下と愛子さまが暮らす皇居内の御所は、秋篠宮本邸と同じように地上2階、地下1階の鉄筋コンクリート造りであるが、延べ床面積は約5290m2と、秋篠宮本邸の約1.8倍の広さだ。
天皇陛下と皇嗣殿下のお立場の違いが、床面積にも表れているのかと思ってしまうが、実は秋篠宮さまには公務で使われる施設がほかにもある。
2019年から4年にわたって住まわれてきた御仮寓所は、今後も分室として使用され、さらに赤坂御用地内には、天皇陛下が皇太子時代に住まわれていた赤坂東邸(旧東宮仮御所)が秋篠宮邸からすぐの北側にあり、賓客との懇談や応接に使用されている。
御仮寓所と赤坂東邸を合わせれば、総延べ床面積は5000m2を超え、ほぼ御所と同じ規模となる。
もっとも赤坂東邸は、皇族方が共同で使用される建物だが、その使用頻度はやはり秋篠宮さまが多いのは言うまでもない。
秋篠宮邸のある赤坂御用地には、他にも三笠宮邸(三笠宮妃百合子さまのお住まい)、三笠宮東邸(故寛仁親王のお住まいで、現在は彬子さまと瑶子さまが暮らしておられる)、高円宮邸、そして上皇ご夫妻が暮らしておられる仙洞御所がある。
御用地内に住んでいらっしゃらない皇族方は、渋谷の常盤松御殿(旧東伏見宮邸)を宮家創設の際に邸宅と定められた常陸宮ご夫妻と、三番町の旧宮内庁長官公邸をお住まいとされている信子さま(寛仁親王妃)のお三方だけである。
佳子さまが御仮寓所に残るとの憶測が広がった理由
そして注目したいのは秋篠宮家の二女・佳子さまのお住まいに関する話題だ。
週刊誌などで盛んに報じられているのが、秋篠宮家ではご両親と悠仁さまが改修された本邸に引っ越されるが、佳子さまだけが御仮寓所に居残るというのだ。
その理由がご両親との修復不可能と呼べるような、断絶が横たわっているとする記事も散見される。果たしてそれは本当なのだろうか?
宮内庁OBで今も皇室関係者に豊富な人脈を持つ、皇室解説者の山下晋司氏に秋篠宮邸をめぐる佳子さまの動向を聞いてみた。
「私から言わせれば、佳子内親王殿下が御仮寓所にお住まいのままと言っても、同じ秋篠宮邸の敷地内で、いわばお庭に作られた『離れ』に住んでおられるようなもの。本邸から歩いてすぐのところにいらっしゃるわけですから、別居と言うほどのものでもなく、それをもってしてご両親との不仲というには根拠が薄いと感じています。
もちろん、本邸にも佳子内親王殿下の部屋はあるはずですが、御仮寓所で4年間も生活されていたので、引っ越しするのが面倒なだけかもしれませんね」

(写真:Motoo Naka/アフロ)
確かに秋篠宮さまも引っ越しは年度末の3月までゆっくり行うと話されているので、佳子さまが必ずしも本邸に移らないとは限らない。最近、忙しくなってきた公務をこなしつつ、佳子さま自身も、ゆっくり引っ越し準備をされているのかもしれない。
ただ宮内庁の発表によれば、当初、御仮寓所は「ご一家が改修を終えた本邸に戻られた後は、事務所と収蔵庫として使用される」と説明していたが、最近になって「(御仮寓所は)私室部分の機能も一部残す」と変化している。
このことから佳子さまが今後も本邸に移らず、御仮寓所に暮らし続けられるのではないかとの憶測につながっているのだろう。
眞子さんを見送られた「思い出深い場所」
御仮寓所は赤坂御用地の秋篠宮本邸から、東側にわずか50mほどの距離に建てられた、鉄筋コンクリート造りの3階建てで、延べ床面積は約1378m2。それまでお住まいだった宮邸よりも約190m2狭い。
しかし、佳子さまがおひとりで暮らされるには、もてあますほど広い。
御仮寓所が全国に知れ渡ったのが、2021年10月、小室眞子さんが結婚の記者会見に臨んだ時だ。ご家族に見送られて現れた眞子さんに、佳子さまがハグされたのが、この御仮寓所の玄関だったのだ。
姉・眞子さんとの絆が強い佳子さまにとって、御仮寓所は思い出深い場所でもある。そういった意味でも、眞子さんの私物が残ると言われている御仮寓所は、佳子さまにとって特別なのかもしれない。

佳子さま(右)と姉の眞子さん(写真:Motoo Naka/アフロ)
他方、山下氏は、もっと現実的なのではないかと語る。
「公務をされるにあたって、御仮寓所には必要な書籍や資料もたくさんあるでしょうし、またパソコンの位置はここ、リモートする場所はここと決めて、ご自分なりの使い勝手の良いレイアウトになっていると思います。それを変えたくないということもおありなのではないでしょうか」
振り返れば、佳子さまが国際基督教大学を卒業されたのが、2019年の3月。その1カ月前、ご一家で御仮寓所に引っ越されている。つまり学業を終え、公務を務められるようになったのは御仮寓所に暮らしてからのことであり、社会人としての一歩を踏み出したのも、この御仮寓所からであった。
2021年の5月には「一般財団法人全日本ろうあ連盟」に非常勤嘱託職員として就職し、10月には姉の眞子さんから「日本テニス協会名誉総裁」の職を受け継がれた。
いわば御仮寓所は、佳子さまが成年皇族としての始まりのドラマが刻まれているのだ。
ご家族での食事も完全に別々なのか
最近、公務に積極的に取り組んでいるご様子が見受けられる佳子さまだが、実は秋篠宮本邸には佳子さま専用の執務室は設けられていないようだ。
基本的に本邸の公室は秋篠宮ご夫妻を中心に動いている。したがって、佳子さまが専用で使える執務室や応接室を求めると、どうしても御仮寓所となってしまう。それならば、職住接近の方が合理的だ。
では食事をとる場合もおひとりなのだろうか?
「普通のご家庭でもそうだと思いますが、大人になると、それぞれのお仕事もありますし、必ず家族一緒というわけじゃないですよね。食事はプライベートな部分ですので、まったく分かりませんが、前述した通り御仮寓所は、本邸の離れのようなものです。食事に関しても完全にセパレートされているとは考えづらいですね。
ある時は別々、忙しい時は時間差でとり、ご家族で集まれる時はご一緒に食事をされるといった感じなのではないでしょうか」(山下氏)
天皇陛下は30歳を迎えられる頃、父である上皇さまが即位されたため、現在の赤坂東邸で一人暮らしを始められた。しかし、ご家族と離れてひとりだけの食事はあまりにも寂しすぎたのか、上皇ご夫妻が皇居内の御所に移られるまで約3年間、毎日のように東宮御所(現在の仙洞御所)に通われ、上皇ご夫妻と朝食をともにされていたとか。
スープのさめない距離どころか、窓を開けて声を張れば、ご家族の耳に届く距離に住んでいらっしゃる佳子さまにとって、そんなご家族との距離感が、今のところ居心地が良いのだろう。
つげ のり子