無敗優勝から18年。冨安加入の名門アーセナルはなぜこんなに弱くなった?

無敗優勝から18年。冨安加入の名門アーセナルはなぜこんなに弱くなった?

  • Sportiva
  • 更新日:2021/09/15

就任3シーズン目を迎えたアーセナルのミケル・アルテタ監督にとって、プレミアリーグ第4節のノリッジ・シティ戦はまさに"崖っぷち"の一戦だった。

今シーズンのアーセナルは、昇格組のブレントフォードと対戦した開幕戦で黒星スタート。チェルシー、マンチェスター・シティと続いた優勝候補との試合でも、いずれも0−2、0−5と完敗を喫してしまい、実に67年ぶりとなるリーグ戦開幕3連敗という最悪のスタートをきっていた。

【写真】ベンゲルは才能を発揮させる名人。最高傑作は「無敵」のアーセナル

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冨安は名門アーセナルの復活に貢献できるか

3節を終えての成績は、まさかのリーグ最下位。仮に第4節で19位ノリッジとの下位直接対決を落としてしまうことがあれば、早くもくすぶり始めている自身の進退問題が、いよいよ現実味を帯びてくる。

そういう意味では1−0とはいえ、日本代表DF冨安健洋のデビュー戦でもあったノリッジとの一戦で今シーズン初勝利を収めたことは、チームにとってもアルテタ監督にとっても、単なる勝ち点3ポイント以上の価値があったと言っても過言ではないだろう。

ただし、まだ楽観するのは早計だ。

そもそも昨シーズンのアーセナルは、開幕前のコミュニティシールドこそ手中に収めたものの、ヨーロッパリーグ(EL)で準決勝、FAカップは4回戦、リーグカップも準々決勝で、それぞれ敗退。肝心の国内リーグ戦では2シーズン連続の8位と奮わず、ついに今シーズンはヨーロッパカップの舞台から姿を消すこととなってしまった(昨シーズンはFAカップ王者としてELに出場)。

ちなみに、それ以前にアーセナルがヨーロッパカップに出場できなかったのは、1995−96シーズンのこと。もう四半世紀も前の話である。

今シーズンも下馬評でアーセナルを優勝候補に挙げる専門家は皆無で、もはやトップ6に数えることさえはばかれるようになったのが実情だ。かつてプレミアリーグでマンチェスター・ユナイテッドとの2強時代を築いた名門は、なぜここまで凋落してしまったのか。

細かい理由はいくつもあるとして、その発端を探れば、どうしてもアーセン・ベンゲル(現FIFAグローバル・フットボール・ディベロップメント部門チーフ)の存在に突き当たる。

今から25年前の1996年10月1日。当時名古屋グランパスを指揮していたフランス人監督ベンゲルは、1990−91シーズンを最後にリーグ優勝から遠ざかっていた名門クラブ再建の担い手として、白羽の矢を立てられた。

以降、2017−18シーズンまでの22シーズンにわたって長期政権を築いたベンゲルは、その間、プレミアリーグ優勝3回、FAカップ優勝7回など、アーセナルの黄金時代を構築。チャンピオンズリーグ(CL)の常連となり、アーセナルは自他ともに認めるヨーロッパ屈指のビッグクラブとして広く認知されるようになった。

とりわけオールドファンの記憶に深く刻まれているのが、2003−04シーズンに無敗優勝を成し遂げたチームだ。

「ザ・インヴィンシブルズ(無敵)」と呼ばれた当時のチームには、リーグ得点王にも輝いたティエリ・アンリをはじめ、ロベール・ピレス、パトリック・ヴィエラ、シルヴァン・ヴィルトールらフランス代表の面々に、マーティン・キーオン、ソル・キャンベル、アシュリー・コールらイングランド代表DF、さらに重鎮デニス・ベルカンプ(オランダ代表)やフレドリック・ユングベリ(スウェーデン代表)など、クラブのレジェンドに数えられる多くの世界的名手がいた。

振り返れば、そのシーズンを最後にリーグ優勝から遠ざかっているわけだが、それでも2015−16シーズンまでは12年にわたってトップ4(CL出場圏内の4位以上)の座を死守。全権監督として大きな役割を担っていたベンゲルの存在を抜きにして、アーセナルの黄金期を語れない理由はそこにある。

これだけの長期政権が終焉したのだから、チームの立て直しに時間を要するのは当然だ。

たとえば、1986年から2013年までサー・アレックス・ファーガソンが四半世紀以上の長期政権を担ったマンチェスター・Uも、退任後、現在に至るまでリーグ優勝から遠ざかっている。そのマンチェスター・Uがここに来て完全復活の兆しを見せ始めていることを考えれば、5年遅れのアーセナルの復活はもうしばらく待つ必要があるのかもしれない。

実際、今夏の新戦力を含めた今シーズンの陣容を見ると、明るい未来に向けた好材料は少なくない。サポーターから批判を受けるオーナーのスタン・クロエンケが、今夏は惜しみない資金を投下して積極補強を断行したからだ。

GKアーロン・ラムズデール(23歳)、CBベン・ホワイト(23歳)、左SBヌーノ・タバレス(21歳)、MFアルベール・サンビ・ロコンガ(21歳)、そして万能型DFの冨安(22歳)といった新戦力を獲得。さらに昨シーズンにローン加入で活躍したMFマルティン・ウーデゴール(22歳)の買い取りも行なうなど、将来の主軸を担えるだけの若き才能に集中投資した。

彼らに加え、アカデミー出身のFWブカヨ・サカ(20歳)とMFエミール・スミス・ロウ(21歳)という至宝もいる。このふたりが順調に成長すれば、おそらく5年後のアーセナルは優勝候補として復活しているに違いない。

最大の焦点は、アルテタ監督が開幕3連敗スタートとなった悪い流れを断ち、今シーズンを復活に向けたターニングポイントにできるどうかだ。

ペップ・グアルディオラ(現マンチェスター・シティ監督)の下で学んだとはいえ、アルテタ監督は監督未経験者としてチームを任された人物。長期政権の担い手として若いチームを育てるには適任と見ることもできるが、逆に経験不足が足かせとなって、チームを空中分解させてしまう可能性も否定できない。

果たして、アルテタ監督率いるアーセナルは、どちらの道を歩むことになるのか。そして、名門復活の一歩を踏み出そうとしているアーセナルにおいて、冨安はどんな役割を担うのか。

次のハードルは、現地時間9月26日に予定される第6節トッテナム・ホットスパーとのノースロンドン・ダービー。その前の第5節バーンリー戦も重要ではあるが、ライバル対決でどれだけの成果を手にできるかが、希望の光につながるはずだ。

中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi

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