闘病中の国民俳優への応援歌、名優アン・ソンギを堪能できる韓国映画8選【韓国の旅と酒場とグルメ横丁#160】チョン・ウンスク

闘病中の国民俳優への応援歌、名優アン・ソンギを堪能できる韓国映画8選【韓国の旅と酒場とグルメ横丁#160】チョン・ウンスク

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  • 更新日:2022/09/23
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ソウル鍾路3街のタプコル公園裏

文/チョン・ウンスク

関連:【画像】名優アン・ソンギを堪能できる韓国映画8選

諸行無常という言葉があるが、この人だけは不滅であってほしいと思う人がいる。韓国では“国民俳優”と呼ばれるアン・ソンギ(1952年生まれ)がそのひとりだ。

70歳になった今も、映画のトークイベントなどでファンの前に姿を見せている彼だが、「血液のがんで闘病中」という発表が所属事務所からあり、ショックを受けた。

1967年生まれの私にとっては彼こそが韓国映画である。それは80~90年代から韓国文化に関心をもった日本の人にとっても同じだろう。

「NHKの『アジア映画劇場』で初めて観た韓国映画の主人公がアン・ソンギでした」

「会ったこともありませんが、アン・ソンギが私の韓国語の先生です」

と言う人も少なくない。

今回は彼のスクリーン復帰を祈念しながら、国民俳優の名演が印象的な出演作をいくつか紹介しよう。

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映画『シルミド/SILMIDO』公開の翌年訪れた仁川沖の実尾島(シルミド)に掲示されていた撮影地案内板。左端がアン・ソンギ

■『風吹く良き日』(1980年、イ・ジャンホ監督/アン・ソンギ主演)

私が育ったソウル江東区千戸洞で撮影されたので、更地だらけの懐かしい風景とともに記憶に残っている。

このとき20代後半だったアン・ソンギが扮したのは、ソウルドリームを夢見て地方から上京してきた若者。仕事は当時、比較的容易に就けた中華料理店の出前持ちだ。

気弱。たどたどしい話し方。生活水準の高い女性に振り回されるあわれな姿に自身を重ねた若者は多かっただろう。

この映画が撮影されたのは1980年の夏。この年は5月に光州で民主化運動が起き、それを過剰鎮圧したチョン・ドゥファンが9月に大統領に就任している。

■『ディープ・ブルー・ナイト』(1984年、ペ・チャンホ監督/アン・ソンギ&チャン・ミヒ主演)

芯の強さを感じさせるが、穏やかで情緒安定型のキャラクターを演じることの多いアン・ソンギが、珍しくギラギラした男に扮した作品。

舞台はアメリカ。常にイラついていて、暴力も辞さず、韓国に残してきた身重の妻のためなら汚いことをしてでも永住権を取ろうとする姿は本当に怖かった。

ヒロイン役はチャン・ミヒ。80年代を代表する男優と女優の2度目の共演作だ。

■『鯨とり コレサニャン』(1984年、ペ・チャンホ監督/キム・スチョル主演)

大学生になれば、社会に出れば、本作のビョンテ(キム・スチョル)のようなやさしい男の子に会える。宿無しミヌ(アン・ソンギ)のような頼もしい兄貴に出逢える。当時、高校生だった私は半分本気でそう思っていた。

鯨が夢や大望を象徴し、その鯨を捕えることが夢の実現の比喩のように解釈されていた時代だ。我が国の民主化が成ったとされる年の3年前の作品である。

アン・ソンギの演技の白眉は、食い詰めて開き直り、田舎道で乞食節を唄い踊るシーン。その甲斐あってしっかりメシにありつくところに、たくましさを感じたものだ。

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留置場から出てきたミヌ(アン・ソンギ)とビョンテ(キム・スチョル)がタバコを吸う場面が撮影されたスクエアビル右隣りのソウル南大門警察署。二人が盗んだ救急車でチュンジャ(イ・ミスク)を色町から脱出させるシーンもここで撮影された。写真は現在の姿

■『神様こんにちは』(1987年、ペ・チャンホ監督/アン・ソンギ主演)

小児まひの青年(アン・ソンギ)が、子供の頃に果たせなかった慶州訪問を実現しようと一人旅に出る話。迷子になって道連れの詩人に叱られて泣いたり、村の祭りでマッコリを飲まされて酔っぱらったりするアン・ソンギがとてもチャーミングだった。

ハンディキャップにもめげず、自己実現に向かって突き進む青年の姿は、『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』のヨンウ(パク・ウンビン)とどこか重なるような気がする。

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アン・ソンギ扮する小児まひの青年が夢見た慶州のシンボル、瞻星台(チョムソンデ)

■『チルスとマンス』(1988年、パク・グァンス監督/パク・チュンフン&アン・ソンギ主演)

反体制運動家だった父のために不遇だった看板描きマンス(アン・ソンギ)と偽美大生チルス(パク・チュンフン)が屋台で飲むシーンは、これぞ韓国の大衆酒場といった趣で見応えがある。

後半、マンスは看板描きの仕事で登った高層ビルの屋上で思いのたけを吐き出す。『鯨とり~』のミヌの絶唱シーンとともに、韓国映画史に残る名場面だ。

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チルス(パク・チュンフン)とマンス(アン・ソンギ)が籠城したビルは、ソウル江南の高速バスターミナル近くにあるチョンロク会館

■『シルミド』(2003年、カン・ウソク監督/ソル・ギョング主演)

北の金日成将軍を暗殺するために孤島で秘密裡に鍛えられる特殊部隊員(ソル・ギョングやチョン・ジェヨン)たちを統率する軍人役。1960年代末にあった史実がもとになっている。アン・ソンギは当時すでに50歳を過ぎていたが、訓練シーンで半裸で先頭を切って走る肉体美には惚れ惚れした。

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アン・ソンギ扮する軍人が率いた特殊工作員の格闘訓練場面が撮影された場所(実尾島)

■『ラジオスター』(2006年、イ・ジュニク監督/パク・チュンフン&アン・ソンギ主演)

レコード大賞を受賞しながら素行不良で落ち目になった歌手(パク・チュンフン)のマネージャー役。『チルスとマンス』『トゥ・カップス』(1993)に続く、パク・チュンフンとのバディムービーである。

生活のために海苔巻き屋を始めた妻の疲れきった姿を目の当たりにしながら、声もかけられない夫のわびしさを全身で表現した場面が忘れられない。

しかし、苦悩を突き抜けたあとパク・チュンフンと再会するラストシーンは、アン・ソンギの演技史のなかでも屈指の名場面だ。

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アン・ソンギ扮する歌手のマネージャーが新しいラジオ番組のポスター貼りを行なった 江原道 ・寧越(ヨンウォル)の市街

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劇中、アン・ソンギ扮するマネージャーや歌手(パク・チュンフン)がたむろした江原道・寧越の 喫茶店 「チョンロク茶房」

■『神の一手』(2014年、チョ・ボムグ監督/チョン・ウソン主演)

アン・ソンギは当時すでに62歳なので、老け役というのも変だが、鍾路3街のタプコル公園脇で、ソジュをラッパ飲みしながら碁を打つ盲目の老人役は迫力満点だった。

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アン・ソンギ扮する盲目の老人とチョン・ウソン扮する天才棋士が勝負する場面が撮影されたタプコル公園裏では、実際に囲碁や将棋に興じるお年寄りが多い

悩み多き私の10代、20代を支えてくれた名優アン・ソンギ氏の苦痛が、一日も早く和らぐことを望む。

【画像】名優アン・ソンギを堪能できる韓国映画8選

チョン・ウンスク

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