コロナ禍でオフィス解約から9ヶ月経過したIT企業の今

コロナ禍でオフィス解約から9ヶ月経過したIT企業の今

  • MONEY PLUS | くらしの経済メディア
  • 更新日:2021/01/14

新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年春以降、企業の活動は「オンライン」への変更を余儀なくされました。採用活動においても、会社説明会や面接はオンラインが中心となる企業が増えました。しかし、入社後の立ち上がり支援など一部の業務では、オンライン化は難しいと悩みの声も聞かれています。

そんな中、一貫してオンライン化を実現した企業があります。株式会社overflowは、2017年に創業したエンジニア/デザイナー複業採用プラットフォームOffersを運営するIT企業です。創業時からリモートワークを多用してきましたが、コロナ禍の2020年4月にオフィスを解約し、採用活動はもちろん通常の業務もすべてオンライン上で完結させています。

具体的にどのような取り組みを行っているのでしょうか。overflow代表取締役CEO 鈴木裕斗さんにお話を伺いました。

取り組んだのは徹底した「ドキュメント化」

―― 「オフィスを手放す」と決断するまでのプロセス、そのときの思いをお聞かせください。

鈴木裕斗氏(以下、鈴木):企業がオフィスを構える目的は2つあると思います。一つは「生産性」、コピーを取るにも会議を招集するにもオフィス機能があれば効率が良いためです。しかし今は様々なITツールで代替可能になりました。オフィスがなくても生産性が落ちることはないと考えています。

もう一つは「感性の共有」だと思います。同じ空間で同じものを見聞きし、体験する。それが会社の文化や組織風土を創り上げます。ですので、この点については物理的空間をなくすことに不安もありました。しかし一度その前提を取っ払って、物理的なオフィスがない状態で感性を共有し、カルチャーを築くことに挑戦しようと考えました。

―― そのために取り組んだのはどんなことでしょうか。

鈴木:会社の方向性や、なぜこの施策をやろうと思ったかという背景を、テキスト、つまり文字情報で伝えることに注力しました。私だけでなくメンバー全員にも、担当する施策の背景・目的・課題・やろうとしていることはすべて文字にして伝えよう、と呼びかけています。

さらに、メンバー皆にわかりやすくなるよう、また効率を妨げないよう、やりとりする文字情報も目的に応じて使うツールを分けることにしました。

具体的には、普段のコミュニケーションはチャットツール『Slack』を使っていますが、Slackに長文を書くのは非推奨です。Slackはフロー情報と日常コミュニケーションに特化しています。一定文量以上はドキュメント(文書)共有ツールを使用し、そこで議論を行います。今では1日あたり50~60個のドキュメントが作られています。

Slackで相談して解決できればそれでOK、「背景や目的がよくわからず、意思決定ができない」となれば共有されたドキュメント上で議論します。さらに相談が必要であれば、最終手段としてWeb会議を開く。そんな流れで進めています。

―― そうしたスタイルに移行したことで、メリット・デメリットはありましたか?

鈴木:文章を書く量はかなり増えました。ですが文字にすることで、背景や意図を汲み取りやすくなりました。また、後から振り返って確認できるのがいいです。これをコミュニケーションの資産化と呼んでいます。

また、「雑談」の有効利用ができるようになりました。オフィスであれば、「1対1のちょっとした雑談」は、その場で完結して流れていきがちです。Slackやドキュメント中心でコミュニケーションをとるようになったことで、そんな「雑談」も多くのメンバーに共有されるようになりました。

雑談の中には重要なアイデアや情報も含まれていますから、それらが無価値になるのを防いでいると感じています。

会社の「哲学」や「理念」など、メンバー全員に心に留めておいてほしいメッセージも、ドキュメントで伝える場面が増えました。実際、個々で自由なタイミングで読み直したりできるため、メンバーに浸透しているという手応えを得ています。

新メンバーがすぐ動き出せるようになった理由

―― 「ドキュメント文化」は、採用においてどんな効果を生んでいますか。

鈴木:施策の背景や目的、これまでのプロセスが文章にまとめられているので、後から入社してくれた人も理解しやすいんです。入社後スピーディに業務を開始することができます。

具体的には、今ある施策の背景・目的はもちろん、入社した方に生み出してほしい成果、そしてその成果を挙げるためにはどう動いてほしいかなど、細かなプロセスのリストをドキュメントや動画にまとめています。

―― 内定者は入社1ヵ月前からSlackに参加し、社内コミュニケーションに参加できると聞きました。

鈴木:業務に関する情報はドキュメントと動画でインプットすることができますが、当社はチームで動くので、チームメンバーとの人間関係を築かなければなりません。それにはメンバーが集う場所、「オフィス」に来てもらうのが一番だと考えています。

当社には物理的なオフィスがありませんので、その代替となる場所がSlackです。Slack内のコミュニケーションを見ることで、どんな人がいてどんな役割を担っているのかを知ってもらえるようにしています。

その前段階で、メンバーの「自己紹介」ドキュメントも見てもらいます。職歴や専門分野はもちろん、好きなもの、学生時代の活動、今ハマっている趣味などまで細かく書いているので、どんな人物なのかを把握した上でチームのコミュニケーションに参加できます。

入社した方にも自身の自己紹介ドキュメントも作ってもらいます。作成はすべて同じテンプレートに穴埋め方式で入力できるので、作成の負担は最小限に、等しく情報が共有できます。既存メンバーと入社した方がさっそく共通の趣味や興味を発見して、初日から話が盛り上がる…なんてシーンも見られますね。

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overflow社メンバーが一覧できる社内ページ

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自己紹介ドキュメントのテンプレート

“オンラインで完結”の次なる課題

―― 「文字情報」を駆使して、業務情報の共有だけでなく、思いもつないでいるのですね。今後の課題・目標として置いているのは、どんなことでしょうか。

鈴木:当社は多様な働き方を推奨しているので、現在270名ほどいるメンバーのうち正社員は7名のみ、大半が業務委託で働いています。中には副業のような形で他に所属する企業がある人もいます。そういった多様なメンバーのコミット度をどう上げていくか、ということが今後の課題と考えています。

例えば、副業として働いているメンバーがマネジメントポジションになる場合どういった要素が必要になるのか、ということも考えていく必要があります。当社は多様な働き方を推進する事業を展開していますので、新たな事例を率先して作っていきたいと考えています。

―― ありがとうございました。

組織に後から参加してきた人、いわゆるニューカマー・レイトカマーの才能開花は、ダイバシティー経営時代の人事戦略の重要な命題です。

採用活動における「オンライン面接」が浸透してきた現在、様々な企業が採用のみならず通常業務においてもバーチャル(オンライン)とリアルの良い面をうまく融合させた形を模索し始めています。リアルを超える効用を見出した「バーチャリアル転職(※)」の拡大をはじめ、対面前提の意思決定プロセスは、ゼロベースで再構築できる可能性が拓かれてきました。

もちろん、業種・業態によって取り得る策は変わりますが、一貫したオンライン化を推進するoverflowの取り組みは、コロナ禍における課題解決のヒントになるのではないでしょうか。

※「バーチャリアル転職」:コロナ禍における深化したオンラインでの転職活動のこと。企業の戦略や現場の雰囲気、入社後のイメージを掴んでいただくための面談や説明会によるフォローがさらに強化されており、バーチャルながらリアルでディープな転職活動になっている。

(藤井 薫)

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