GPIFとは公的年金の管理・運用組織
GPIF(Government Pension Investment Fund)とは、厚生労働省から委託され、日本の公的年金積立金の管理・運用を担う独立行政法人のことです。
日本の公的年金は世代間扶養という考えのもとで成り立っており、現役世代の納める保険料が高齢者の年金へと充てられます。このうち、年金の支払いに充てられなかったお金が「年金積立金」です。
GPIFは年金積立金を運用することで将来世代の年金を増やす役割を担っており、その運用額は約190兆円で、機関投資家としては世界最大の規模を誇っています。
GPIFの運用方針とは
GPIFの年金積立金の運用方針は、長期的な分散投資が基本です。年金積立金は国民の将来の年金給付に必要なお金であるため、リスク管理を徹底したうえでの効率的な運用が求められるからです。
長期分散投資は、長期的に投資を続けることで収益を安定して確保し、投資先を分散することでリスクを抑える方法であるため、安全性の高い投資方法と言えます。
長期的な資産運用では基本の資産構成割合を決定し、それを維持していくことによって良好な結果が得られる可能性が高いです。そのため、GPIFは基本的なポートフォリオ(資産構成割合)を定めており、その長期的な運用目標も明確に決められています。
しかし、長期分散投資を行っているとは言え、投資はリスクが伴う行為です。
GPIFは100年先の年金給付を視野に入れて設計された、年金財政の維持を担う組織であるため、さまざまなリスクに備える必要があります。
お金の価値が下がる場合に備えるためには、少しでも管理している積立金を増やし、国民が恩恵を受けられるようにすることが必要です。そのため、GPIFは安全性を前提としつつ、確実に資金を増やせるようにするという理由を掲げ、長期投資を続けているのです。
運用目標
GPIFの現在の運用目標は賃金上昇率+ 1.7%と定められています。目標値がこの数値に設定されている理由は、年金財政の安定化が挙げられます。
年金保険料から得られる財源とそこから捻出される年金の額は、賃金の平均値が変わるごとに変動します。そのため、年金積立金を運用することで得られた利益が賃金上昇率を上回れば、年金財政の安定化が図れるからです。
ちなみに、GPIFが今のような運用を開始した2001年から2021年度までの累積の実質運用利回りは3.78%と、目標を上回る数値で運用ができているようです。

GPIFの資産運用状況やポートフォリオ

GPIFの資産運用状況は四半世紀ごとに開示されており、現在は国内債券、国内株式、外国債券、外国株式がそれぞれ25%ずつとなっています。また、日本を含む15の国・地域へ分散して投資を行なっています。
もともとは国内債券67%・国内株式11%・外国債券8%・外国株式9%・短期資産5%というポートフォリオ構成になっており、株式の割合が合わせて約20%と、現在よりも安全性の高い構成で運用されていました。
しかし、第二次安倍政権下の2014年にポートフォリオが変更され、国内株式と外国株式の割合が合わせて約50%とややリスクが上昇する構成になり、この比率は変更されないまま現在に至っています。
一般的に債権の比率が高いとローリスク・ローリターンである一方で、株式の比率が高くなるとハイリスク・ハイリターンになります。
つまり、GPIFでは安定的な長期運用という基本姿勢は続けながら、リスクヘッジ重視の運用からやや利回り重視の運用に方針を切り替えたということでしょう。
実際の運用実績を見てみると、年度によってマイナスになることもあるものの、2014年度は実質利回り10.53%、2020年度は実質利回り24.62%と、それ以前と比べて利幅が大きくなっていっています。
また、21年間の累積収益額を見てみると、インカムゲインは着実に積み上がっており、キャピタルゲインは短期的に評価損となることもあれど長期的に見ると大きく増えているのがわかります。

GPIFのような長期分散投資を行うメリット
GPIFのような長期分散投資を行うことで、投資におけるリスクを低下させることができます。
例えば、オイルショックやリーマンショックなどによって市場株式の下落があった場合でも、GPIFは国内債券に投資していたことで、その影響を最小限に抑えることに成功しています。
また、購入した銘柄からは配当金や利子が入るため、元本となる積立金に加算されます。GPIFは長期投資による複利効果を得て、市場の下降局面も乗り越えてきたのです。
GPIFのような長期分散投資を行うデメリット
長期分散投資を行うことの問題点は、銘柄の長期保有を重視することにより、市場の動向に応じて銘柄を売却することができない点です。これにより短期的には利益を得られる機会を逃すことがあります。
莫大なお金を預かるGPIFの場合は銘柄の長期保有が必要ですが、個人で投資を行う場合は、市場の動きに合わせて株を売却することを視野に入れても良いでしょう。
また、ただし先に述べたように、投資先を誤ってしまえば大損害を受ける可能性もあるため、投資先の選定には注意する必要があります。
投資に迷ったらGPIFの投資手法を参考にしよう
GPIFは年金積立金の安定的な運用を重視した長期分散投資をしているため、その投資方法は、リスクを抑えながら投資の運用益を得たい投資家の参考になります。
投資を始めたばかりの人はGPIFの投資方法を参考にしつつ、分散投資の基礎知識を身に付けてみてはいかがでしょうか。
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