菅首相の金融アドバイザーの子会社と小泉ファミリーの支援会社が絡んだ「投資事件」の詳細

菅首相の金融アドバイザーの子会社と小泉ファミリーの支援会社が絡んだ「投資事件」の詳細

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2021/04/08
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「さすがSBIグループ。信じて投資して良かった!」

ネットでこんな書き込みが、しきりになされているのが、4月2日にSBIグループホールディングス(SBIHD)が発表した「SBIソーシャルレンディング(SBISL)が取り扱うファンドに対して投資家の皆様に対して行なう未償還元本の償還について」である。

ファンドへの勧誘にあたり金融商品取引法に違反する行為があったために、損失補填を行なうというもの。そのためにSBIHDとして約150億円の特別損失を計上、投資家への返金額も同等だという。

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SBIホールディングス株式会社 公式サイトより

ネット上に開示された情報をもとに、個人が企業に事業資金を貸し付け、配当を得る金融サービスがソーシャルレンディング(SL)。金融機関が融資をためらう段階で事業資金を提供するのだからリスクは高い。だが、その分、配当も高く利回り10%前後が多い。

「短期小口高利」が魅力となって投資家を引き付け、ブームとなった2018年は1年間で1300億円を集め、「将来的には1兆円規模に」という予測もあった。

しかし、10%内外の配当を出したうえで利益を確保、運営資金を得て、次の事業に取り掛かるのは容易ではなく、SL業者の多くは、集めたファンドのカネを別のファンドの配当に回す自転車操業に陥った。

みんなのクレジット、ラッキーバンク、エーアイトラスト、maneoマーケット……。

金融庁の行政処分を受けたSL業者だが、この数の多さは「高利で集めて右のポケットから左のポケットへ」というSLの実態を表わしており、18年7月、SLを日本で最初に立ち上げた老舗で最大手のmaneoマーケットが業務改善命令を受けたことで、「SLというビジネスモデルは終わった」と、指摘された。

そんなSL業界の退潮をよそに、着実に投資家を集め、maneoマーケットに代わる最大手にのし上がったのがSBISLだった。背景にあるのはSBIグループの信用である。

SBIの顔は北尾吉孝代表。孫正義氏の右腕としてソフトバンクグループの礎を築き、SBIを創業してからは豊富な人脈とビジネスへの嗅覚、そして時に尊大とも受け取られる芯の太さでSBIを一大金融グループに育て上げた。今や、菅義偉首相の金融アドバイザーであり、地銀再編のキーマンとなっている。

投資家はSBISLの背後にSBIグループと北尾氏を見ており、その信用に投資した。しかしSBIHDが、その実態を鑑みて損失補填したわけではないし、それは金融商品取引法が禁じている。

「違法行為」とは何だったのか

では、損失補填が認められる「ファンドの勧誘に際しての違法行為」とは何か。そこに登場するのが、横浜に本拠を置くテクノシステムという会社である。

「水、食、電気の提供を通じた社会貢献」を会社の使命としており、代表の生田尚之氏(47)には『SDGsが地方を救う』という著書もある。その自然エネルギーへの取り組みが縁で、小泉純一郎元首相と日経新聞で特別対談広告を行ない、スポンサー契約を結んだ小泉孝太郎氏はテクノシステムの広告塔として、パンフレットやホームページに登場している。

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テクノシステムの会社案内に登場する小泉孝太郎氏

生田氏は、09年、特殊ポンプなど水処理関係に特許を持つ父親の事業を受け継ぐ形でテクノシステムを設立。浄水システム、フードシステム関連製品などの事業は順調だったが、大きな伸びは見込めず、飛躍のきっかけとなるのは太陽光など再生エネルギー関連事業への進出だった。

再生エネルギーに特化したコンサルタントの玄海インベストメントアドバイザー(現Renewableエナジーインベストメントジャパン)を率いる文智勇代表と出会ったのが縁で本格的に取り組み、玄海社がSBISLと再生エネルギーで協業していることからSBISLのプラットフォームで資金調達するようになった。

文氏は、17年4月から19年11月までテクノシステムの社外取締役を務めており、その間、売上高は急伸、18年(11月期)、19年ともに売上高160億円を達成、上場準備に入った。だが、テクノシステム関係者によれば、「SLによる売り上げ急伸と上場準備が粉飾につながった」という。

「SBISL、玄海などへの管理料やコンサル料を支払ったうえで、投資家への高配当を継続するには、次々と開発を仕掛けるしかないが、条件に見合う案件はそれほどない、勢い、プロジェクト概要をごまかし、無理に集めたカネを別の事業に回すようになる。その自転車操業を一挙に解決するために上場を企画するが、上場基準を満たすために、売上高、利益を粉飾するしかなかった」

テクノシステムが、物件売却のために作成した「ご提案案件一覧(20年2月作成)」によれば、熊本県天草、佐賀県北佐久など新規太陽光案件が13プロジェクト、自社のセカンダリー案件が7プロジェクト、関内や新横浜など地元を中心とした不動産案件が13プロジェクト、新潟・新発田、沖縄・石垣島などバイオマス関連が10プロジェクト、それに購入予定の太陽光や風力案件を含めて約872億円分が記載されている。

そうした案件を使って投資家を募る際、スケジュール、利回り、物件価格、現地状況などに不実記載があり、その集積を前に、金融庁の監督を受ける第二種金融商品取引業者のSBISLとしてはテクノシステムに修正させ、SBIHDがその総合力で処理せざるを得なかったということだろう。

マンション建設の頓挫・中断…

痕跡は随所に残る。

ディベロッパーズローンファンド9号、10号、11号として集めた約29億円で、東京・東日本橋に12階建てマンション、神奈川・川崎大師駅前に9階建てマンションを建設する計画は資金不足で頓挫。東日本橋はSBI子会社が物件を取得、工事を引き継いだが、川崎大師駅前は中断のままである。

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東日本橋の物件

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川崎大師駅前の物件

ディベロッパーズローンファンド16号として集めた約25億円で熱海市に全室露天風呂付きのSDGsホテルを建設する計画は、20年2月着工、21年3月に完成と「プロジェクト概要」で説明していながら、更地のままで竣工にはほど遠い。

ディベロッパーローンファンド14号は、約16億円で横浜・関内にビジネスホテルを建設するもの。19年5月に貸し付けられ、20年に着工、21年5月末を最終返済日としているが、進展は見られない。現在、駐車場として利用されており、建設計画の看板も撤去された。

太陽光やバイオマスでも、不動産同様、仕掛かり案件が多く、スケジュールを含めてネットで公開される物件概要は、誇大広告の不実記載が少なくない。

投資家への裏切りとその痕跡

それにしても、SBISLの融資残高は約420億円で、うちテクノシステム分は約170億円といわれている。当然、SBISLはアセットマネジメントの玄海社とともに、テクノシステムを厳しく審査、モニタリングを怠ってはならないハズなのに、それが出来ていなかったのはなぜか。

生田社長と親しい業界関係者が、こう指摘する。

「生田氏と玄海を含むSBIグループはもたれ合っていたんです。maneoに代わってSLの主役に躍り出たSBISLとしては、若くて野心がある生田氏は使い勝手のいい経営者だった。SBISLが資金調達、再生エネルギーの出口(買い手)にはSBIエナジーが名乗りをあげることもあり、上場の幹事証券はSBI証券になる予定でした。従って、SBIグループにはSLの管理料だけでなく、上場コンサル料、アドバイザーフィー、顧問料など様々な名目でカネが入った。それが審査の緩さにつながり、テクノの惨状を知りながらも募集を続ける“温情”ともなった」

要は癒着であり、投資家にとっては裏切りである。その痕跡も残る。

JR山手線鴬谷駅のすぐ近くに、SBI証券が寮として利用している4階建ての集合住宅がある。謄本によれば、SBISLが極度額2億7000万円で融資していた案件が焦げ付き、競売を申し立てた案件をテクノシステムが落とし、19年3月、所有権移転した。

SBISLはテクノシステムの協力で約8割を回収。テクノシステムはここに4階建てのビルを建設、都内信組が約4億6000万円の抵当権を設定していたが、2月16日、かつての借りを返すように、SBI証券が取得した。SBISLが今回の問題を始めて公にし、「第三者委員会の設置」を発表したのが2月5日なので、その直後の購入だった。

純粋なビジネスに加え、癒着の貸し借りもあれば、濃密すぎる人間関係もある。それが金商法上の損失補填を認められる違法行為につながった。北尾氏が地銀再編の旗を振っている状況下、足元で発生したスキャンダルを放置はできない。それが、「投資は自己原則」の厳しい対応をすることなく、いち早く“罪”を認めた理由だろう。

それが、どれだけ許しがたい行為なのか。4月中に公表されるという第三者委員会報告書に期待したいし、SLを金融サービスの一形態として今後も残すのであれば、防止策を視野にいれた徹底解明が必要である。

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