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DとZのあいだに 〜バラエティ番組とCERO問題~

DとZのあいだに 〜バラエティ番組とCERO問題~

  • QJWeb クイックジャパンウェブ
  • 更新日:2021/07/22
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ゲームのパッケージなどで見たことがある人も多いであろう、ゲームの対象年齢を評価する制度「CERO」。特定非営利活動法人コンピュータエンターテインメントレーティング機構CEROの倫理規定に基づいた審査により、それぞれの表示年齢以上向けの内容が含まれていることを示す年齢区分マーク。純粋に、プレイヤーの年齢制限として機能するのはもちろんのこと、テレビ番組で取り扱う際の指標としても機能している。

『ゲームセンターCX』(フジテレビONE)や『勇者ああああ』(テレビ東京)などゲームを扱う番組を多く担当する放送作家の岐部昌幸は、番組内でどんなゲームタイトルを扱うか、さらにはどのように扱うか、考えつづけている。今回は、ゲームタイトルを取り上げながら具体的な扱い方について語る。

地上波バラエティでは、ほとんどお目にかかれない作品

いきなりですが問題です。

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『Ghost of Tsushima(ゴースト・オブ・ツシマ)』

『Ghost of Tsushima(ゴースト・オブ・ツシマ)』『The Last of Us Part II(ザ・ラスト・オブ・アス パート・ツー)』『サイバーパンク2077』。さて、これらのゲームに共通することはなんでしょう?

2020年に発売された? プレイステーションを代表するビッグタイトル? PS4版からPS5版へのアップグレードが可能? ファミ通クロスレビュー「プラチナ殿堂」入り? ゲームは好きだけどプレイはヘタな岐部の腕前でもギリクリアできる?

どれも正しいといえば正しいのですが、今回のクイズの答えとしては不正解です。
正解は「どれも地上波バラエティでは、ほとんどお目にかかれない作品」ということ。

なぜか? それはどの作品も「CERO Z」というレーティングがつけられているからです。
“プレイする黒澤映画”とも呼ばれ、世界中で絶賛され大ヒットを記録した『Ghost of Tsushima』も、そういえば地上波のCMで見かけたこと、ないと思いませんか? 今回は、そんなテレビ番組とCEROのお話です。

あらかじめ断っておきますが、私はテレビ局員ではなく、ゲームを遊ぶこととご当地うどんを取り寄せては舌鼓を打つことだけを楽しみに生きているような、しがない放送作家ですので、これから記す内容は私がゲーム番組を担当するなかで感じた、あくまでも「主観的」なものであり、もしかすると事実と異なる場合もあることをご了承ください。言わんとすることはのちほどわかります。

ゲーム好きにはもはや説明不要の「CERO」。簡単に言えば、ゲームの“対象年齢”を評価する制度です。

「CERO A」は全年齢対象。年齢を問わず遊べます。それから「B」→「C」→「D」と徐々に対象年齢はアップしていき、「D」の次の「Z」は、いわゆる“18禁ゲー”。その昔、ゲームショップによってはガラスのショーケースに入れられていて、店員さんに取り出してもらう必要がありました。

最近では、ゲーム番組以外のバラエティでもゲームを扱う頻度が増えていますが、この「CERO Z」(※以下「Z」)がつけられたゲームは、地上波バラエティではほぼ扱えません。厳密には、一定の条件を満たせば扱うこともできなくはないようですが、テレビ局独自のガイドラインや番組のお偉いさんの判断で、ほぼほぼ「やめておこうか」となります。アイデアを出す我々出入り業者も、だんだんとそのあたりの空気を察知し、「Z」のソフトが絡むような企画はそもそも議題に上げないようになっていくのです。

一方で、没収ではなく「ボッシュート」という独特のコールでおなじみの老舗歴史番組で、津島を特集する際に『Ghost of Tsushima』に登場する美しい島内の映像が使われました。ゴールデンタイムで「Z」のソフト。つまり、局や番組のジャンルによって、こうした例外が発生します。“私の主観である”と断りを入れたのはこのためです。

私がかつて担当していたテレビ東京のゲーム番組『勇者ああああ』の演出兼プロデューサーのI氏と、この「Z問題」について議論したことがあります。
「18禁と言うけれど、たとえばテレビ業界が“セクシービデオ”とやんわり濁す、いわゆる『AV』の冒頭のインタビュー部分なら地上波で扱っても問題ないのではないか。実際に使われているのを観た気がするし、そもそもエッチなシーンはまったくないわけだし」
「その理屈で言えば、『Z』ゲーでも、過激な表現を避ければ使える可能性があるのではないか?」
といった感じです。しかし、冷静に考えてみれば「AV」が説得材料になるはずもなく、結果として、「Z」のゲームも、セクシー女優のインタビュー部分も、マジックミラーになった車両も番組で扱うことはありませんでした。

とはいえ、お笑いの「緊張と緩和」の理論でいえば、ホラーゲームとバラエティの相性は抜群です。どうにか扱いたい……。しかし、中身が怖ければ怖いほど「Z」の壁が立ちはだかります。

困ったときのバイオ頼み

そんなジレンマを抱える私たちには、ある救世主がいました。

その名は『バイオハザード』です。

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『バイオハザード ヴィレッジ』

『バイオハザード』シリーズは、ホラーゲームのど真ん中でありながら「Z」版だけでなく、過激な表現を抑えた「CERO D」版もリリースされています。「D」であれば、深夜帯は扱うことができるのです。「D」と「Z」、ゲーム番組関係者にとってこの差はとても大きい。事実、『勇者ああああ』でも、何度『バイオハザード』にお世話になったかわかりません。
武器を一切使わない非暴力でミッション達成を目指す「ゲームガンジー選手権」、めちゃくちゃプレイしているのに、まるで初見のように振る舞う「予定調和ゲーム王」、ものまねタレントが大スターになりきってプレイする「世界一豪華なゲーム実況」(ほいけんたさんによる明石家さんまさんの『バイオハザード7』実況など)など、“困ったときのバイオ頼み”。とにかくお世話になりました。
余談ですが、その御礼といってはなんですが、私は『バイオハザード』は派生作品含めほぼすべてのタイトルを手にしていますし、特にお気に入りの『バイオハザード4』は、ゲームキューブにはじまり、PS2、PS3、PS4、Wii、スマホアプリ、Nintendo Switch、とリリースされるたびに買っています。武器商人の英語を「(この武器)ごっつレア~」と関西弁に空耳するくらい遊び倒し、また『バイオ4』を愛するアナウンサー鈴木史朗さんにシンパシーを感じ、複数の番組でその腕前を披露していただいたことも。いかに『バイオ4』が素晴らしい作品なのか、別の機会があればものごっつ語らせていただきたく存じます。

しかしながら、やりたいときにやらせてもらえる、そんな『バイオハザード』との都合のいい関係は長くはつづきませんでした。
番組が昇格し、放送時間帯が早まったことで「D」のゲームの扱いも慎重になったのです。厳密には時間帯が変わっても、やりようによっては扱えたのかもしれませんが、救世主が登場する前に番組のほうがバイオ的に言えばYou Are Dead、力尽きてしまいました。

長々とCEROについて語ってきましたが、CEROの存在に異論があるわけではありません。必要な制度だと考えます。また、昨今のテレビ局のガイドラインもゲームの扱いに限らず、ある程度厳しくなっているのは仕方のないことだと思います。
ただ、あるゲーム会社の人が、某ゲームのCERO判定を受験生の合格発表のように待ち、結果的に「CERO A」のお墨つきをもらって「よかった! これで子供たちをイベントに参加させられる」と胸をなで下ろした現場に居合わせたことがあります。地上波バラエティに限らずCEROのジャッジによって、運命が分かれるエンタテインメントはいろいろあるようです。

まったく関係ない話ですが、『勇者ああああ』終了後に担当したとある番組で、画面に映る芸人さん全員が真っ裸という最終回を迎えたことがあります。令和の時代に、これはアリなんだ、バラエティ的には「CERO D」なんだ、と思いました。

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