大村雅朗が40年前に志向していたクールなサウンド、プロデューサー木﨑賢治と語る

大村雅朗が40年前に志向していたクールなサウンド、プロデューサー木﨑賢治と語る

  • Rolling Stone Japan
  • 更新日:2023/01/25
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日本の音楽の礎となったアーティストに毎月1組ずつスポットを当て、本人や当時の関係者から深く掘り下げた話を引き出していく。2022年12月の特集は「大村雅朗没後25周年」。1978年に八神純子「みずいろの雨」のアレンジャーとして脚光を浴びてから男性女性を問わずアーティストのアレンジを手掛け、1997年に46歳の若さでこの世を去った編曲家・大村雅朗を偲び、軌跡を辿る。パート4では「そして僕は途方に暮れる」の制作プロデューサーで株式会社ブリッジの代表取締役の木﨑賢治をゲストに迎え、思い出の曲をテーマに8曲を選曲し語る。

田家秀樹:こんばんは。FM COCOLO「J-POP LEGEND FORUM」案内人・田家秀樹です。今流れてるのは大澤誉志幸さん、「そして僕は途方に暮れる」。1984年9月発売。作詞が銀色夏生さん、作曲が大澤誉志幸。先週のゲストの亀田誠治さんが、この曲でアレンジに目覚めたという話をされておりました。今週の前テーマはこの曲です。

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田家:今週は最終パート4、「そして僕は途方に暮れる」を制作されたプロデューサー木﨑賢治さんです。大村さんの手がけたアーティストの中には、木﨑さんが手がけられた方がたくさんいます。吉川晃司さんとか沢田研二さんも彼ですね。当時も渡辺音楽出版で、現在は株式会社ブリッジの代表取締役です。こんばんは。

木﨑:こんばんは。よろしくお願いします。

田家:25周年で福岡でのトリビュートコンサートとか東京でのイベントがあったりして、そこにも参加されております。「そして僕は途方に暮れる」は木﨑さんがいなかったら生まれてない。生みの親ですね。

木﨑:一応。

田家:あははは。この曲で一番思い出すことは何ですか?

木﨑:この曲は3枚目のアルバムで、曲がなかなかできなくて困っていたんですね。そのときにある制作の人と「人にあげたけど返された曲で歌ってヒットした曲がいくつかある」って話になって、大澤が誰かにあげて返された曲ないのって聞いたら「凍てついたラリー」っていうタイトルの曲があって。その曲を聴いたら、いい曲だなと思って。その時大澤はハードボイルド。レイモンド・チャンドラーを読んでからハードボイルドの路線のアーティストにしたいと話し合って、そういう詞を作るようになっていて。埼玉大学を卒業したばかりの銀色夏生の本名しか知らなかったときにハードボイルド路線でやりたいんだけどってなって。その時に「僕は途方に暮れる」ってフレーズがあって。いろんな落書きがあった中に。このタイトルだけすごい気になってて。「そして」ってつけたらミステリーっぽい、いい感じになるなと思って。

田家:元々は「僕は途方に暮れる」だったものを、「そして」をつけた方がいいよって木﨑さんがおっしゃった。

木﨑:「そして僕は途方に暮れる」って言葉は曲の最後に入らない?と大澤に聞いたら、入るけど曲がフォークソングっぽくてどうしたらいいんだろうって。それでトンプソン・ツインズの「ホールド・ミー・ナウ」とかポリスの「みつめていたい」とか、ああいう上がリフで音程が変わらないベースがコードに沿って変わっていくみたいなのがいいって大村さんに言った。そこから大村さんが作業をして、こういうサウンドになったんです。

田家:そのサウンドで亀田さんがアレンジャー人生に目覚めてしまったという曲になったわけですが、そもそもその大村さんとの出会いをこの後お聞きしようと思います。今日は大村さんに関する曲をですねいろいろ選んでいただき、思いがけない曲で始まっておりました。1978年7月発売の木の実ナナさんの「うぬぼれワルツ」です。

田家:作詞・門谷憲二、作曲・西島三重子、編曲・大村雅朗。思いがけない曲でした。

木﨑:そうですね(笑)。まだ大村さんが東京に来て、あまり仕事していなかった頃。

田家:先週佐橋さんが「SACHIKO」を選んでいたんですよ。「SACHIKO」は79年で、「みずいろの雨」が78年の9月なんですけど、その前ですもんね。

木﨑:インペク屋さんに紹介されて、福岡の山でやっている人で、すごくいい人がいるから一度使ってくれないみたいな話があって。それで大村さんと会っていろいろ話していて。今までのアレンジャーの人と比べるとオシャレですっきりしてて、髪の毛も短くて。

田家:みんな長かったですからね(笑)。

木﨑:自分はいい感じだなと思って。アレンジャーの人ってクールな人が多いんですけど、やっぱりクールで理数系の脳を持っていた感じ。自分がその時担当していた木の実ナナのアルバムはちょっとフランスっぽい感じで曲を作って。

田家:木﨑さん、フランス語学科ですもんね。

木﨑:そういえばそうだね(笑)。僕もフランスの曲をいっぱい聴いてまして、今こうやって久しぶりに聞いてみると、さすがこの曲でも大村さんぽいなと思って。お洒落にクールで、あまり情感がこもってなくて。その分歌の情感が引き立つようなアレンジになっていて、無駄がないなと今聞いても思う。そこから大村さんと仕事が始まります。

田家:その話はですねこの後ゆっくりまたお聞きしようと思います。

田家:木﨑さんが選ばれた今日の2曲目、1979年、ばんばひろふみさんで「SACHIKO」。これも思いがけない選曲でもありました。

木﨑:そうですね。自分もまったく思いもかけなかったんですけど。

田家:当時、これが大村さん編曲だって思ってなかったんですよ。

木﨑:僕もなくて。この間福岡でイベントがあったときに佐橋さんから、「これ大村さんだよ」って言われて。

田家:佐橋さんがアルバム『大村雅朗の奇跡』に選ばれていて、どんな繋がりがあったんだろうと思っていろいろ考えていたら、ばんばさんはエピックで、エピックで大村さんを起用したのがプロデューサーの小坂洋二さんだった。小坂さんは元々渡辺音楽出版だったなと思って。木﨑さんと小坂さんは当時から繋がりがあって、その頃に大村さんの名前が出たんじゃないかって推測をしたんですけど、そういうことじゃなかったですね。

木﨑:大村さんがどこで出てきたか自分も定かじゃないんですけど、小坂さんとの繋がりは銀色夏生さんがまだ銀色夏生さんって名前でやる前に1回紹介されていて。

田家:小坂さんから紹介されていた。

木﨑:そうなんです。

田家:木﨑さんは1946年生まれで、小坂さんは1948年生まれ。渡辺音楽出版の中ではちょっと新しい世代だったんじゃないですか?

木﨑:小坂さんはマネージャーだった。渡辺プロの。布施朗とか大塚博堂さんとかのマネージャーをやったりしていました。佐野元春さんも小坂さんがやっていて、その紹介で仲良くなって、

田家:木﨑さんが選ばれた今日の3曲目は、今名前が出たこの人です。1981年6月発売の佐野元春さんで「SOMEDAY」。

木﨑:この曲も大村さんがかんでたってまったく知らなくて。沢田研二のエンジニアが吉野金次さんっていって、このアルバムをやったんですよね。この曲ができたときに沢田研二のスタジオで、佐野元春の新曲聞いてくれる?って大音量でかけたのが「SOMEDAY」で。人のスタジオで勝手にでっかい音でかけて(笑)。いい曲だなと思って。

田家:この「SOMEDAY」の大村さんのアレンジの素晴らしいところはどんなふうに語られますか。

木﨑:これどこが大村さんがやっているかわからないんですけど、多分ストリングスアレンジなんですかね。

田家:亀田さんがそう書かれてましたね。『大村雅朗の軌跡』でこの曲を選んで、こんなふうにお書きになっていました。「スタジオでは佐野さんが持っていた明確な意図を汲みながら、大村さんがストリングスアレンジに広がりを与えていったそうだ」って。

木﨑:このアレンジはあんまり大村さんぽくはないなと思って。ピアノとかリズムセクションは、伊藤銀次さん+佐野さんぽいなとは思ってます。

田家:佐野さんの意図を汲んで大村さんがアレンジした。

木﨑:海外のアーティストとかはアレンジっていうとストリングスアレンジで、リズムセクションを自分たちで作ってそういうのをやる人がアレンジャーと言ってて。プロデューサーが大体リズムセクションは作っている。多分そういう感じだったので、大村さんがやってたのは最近知った。後でいろいろ大村さんと別のとこでも繋がりがあったんだなと思って。

田家:そうやって後になって聞いて、これも大村さんだったって気がついて、どういう受けとめ方になるんですか。大村さんはこんなこともやってたのか、こんな面があったのかとか。

木﨑:自分がやるのだけで精一杯だったし、今みたいに簡単に聞けなかったじゃないですか、Spotifyとかそういうストリーミングもないし。

田家:誰かがレコード持ってきてくれないと他の人の曲ってなかなか耳に入らなかったですよね。木﨑さんが選ばれた4曲目は、作詞・銀色夏生、作曲・大澤誉志幸、編曲・大村雅朗、歌・沢田研二、「晴れのちBLUE BOY」。

田家:1983年5月発売、沢田研二さんの「晴れのちBLUE BOY」。

木﨑:銀色さんの詞が大澤でやってよかったんで、沢田研二に作ってもらわないとって。同じ詞に何人かのメロディーをつけた。それで良かったのが大澤の曲だったので、大澤と銀色さんになって、それを大村さんにアレンジしてもらった。

田家:このジャングルビートは大村さんから出てきたんですか?

木﨑:誰から出てきたかわかんないんですけど、大澤から出てきたんですかね。

田家:ぽいとこありますもんね。

木﨑:ええ。それをこういう形にしてもらって。今聞くともうちょいベースとキックが長い方がいいなと思ったり(笑)。

田家:さすがに細かいですね(笑)。

木﨑:歌が自分はあまり納得できなかったんですよ、録った時。大澤の16のノリみたいなのが、沢田研二だとちょっと8っぽい感じになってしまっていた感じがあったんです。だけど今聞いたら思っていたより全然よかったですね、歌が。

田家:ハードルの高いプロデューサーだったってことで知られております(笑)。

木﨑:僕が大村さんとやった仕事は大体グルーヴのある曲。自分、グルーヴのあるものが好きだったので、この曲もすごく繰り返しが多いんです。それにメロディを乗っけて。多分他のアーティストではあまりそういうアレンジってやってないんじゃないかなって。大澤はR&Bが好きで始まっているから。

田家:木﨑さんが選ばれた今日の5曲目、大澤誉志幸さんで「e-Escape」。2枚目のシングル。デビューアルバム『まずいリズムでベルが鳴る』の1曲目でありました。これもアルバム全曲が銀色夏生さんの作詞で、全曲アレンジが大村さんでした。アルバム全曲お願いしてる。

木﨑:そうですね、気に入っちゃうと同じ人とやった方がより深く話し合えるし、どんどん良くなっていくから、大村さんとずっとやりたいなと思って。この曲は特に大村さんが活躍したと思って。イントロからAメロの中にも入ってるリフを大村さんが考えて曲ができてる。僕リフが好きなんですけど、それでそういう話をして。曲は1小節ずつの8ビートだったんだけど、2小節に渡ってリフを作ってくれて。今の洋楽にも通ずる感じが、あのときから大村さんにあるんだなと思って。

田家:はい。

木﨑:改めて聞いてみると、コードがあまり入ってないんですよね。だからギターとベースのユニゾンのリフみたいなのに、音程のない楽器をいっぱい入れているんですね。あれで派手さは出している。普通の日本のアレンジャーはコードで埋めていくんですよ、いっぱい。それで隙間がなくなっちゃっている。それとこの曲を聞いて、大村さんって昔からこうだったんだと思うのは、生のドラムとか一切なくて、ほとんど YMO でやってた松武秀樹さんとやっている。譜面を書いてきて松武さんに渡すらしいんですよ。それを打ち込んで始まっていく。

田家:なるほど。

木﨑:もう一つ、今iPhoneで聞くのにも適した音になってると思ってて。音が短いんですよ。長い音が入ってるとiPhoneのスピーカーで聞くと歌の邪魔になってくんです。最近の曲ってみんなスタッカートの曲が多くて、エド・シーランの「シェイプ・オブ・ユー」とか短い。ドラムも808っぽい感じで、スネアとかも短いんですよ。バーンとか言わなくて、昔のハードロックみたいじゃなくてに逆に短い。ハットも短いんですよ。そうすると歌とかも潰れないでよく聞こえる。これらの曲って、スネアの音がちょっとチープな感じがしちゃうんだけど、それを今っぽい音に置き換えたらこのままでいい感じになるくらい素晴らしいはいアレンジで。大村さんの才能はすごいなってあの頃も思ってたけど、あの頃はJ-POPのコードがいっぱい変わっていく音楽だけど、プリンスみたいにとか誰みたいにとかいろいろ言って無茶振りしてたなっていうのが後になるとわかるんだけど。そこの間をうまく埋めて綱渡りみたいなアレンジしてくれたんだなって。いまならわかるんですけど、すごい洋楽のエッセンス。オシャレでクールで、そこに J-POP をうまく合わせて。そこは本当になかなかいないサウンドメーカーっていうか。

田家:大村雅朗マジックがこうやって解明されていくという話だなと思って聞いておりましたが、木﨑さんが選ばれた6曲目。これも大澤誉志幸さんで「CONFUSION」。

田家:大村さんのアレンジって、その人の個性がものすごく際立ってる感じがあるでしょ? ストリングスを生かしたタイプの曲と、ピアノのフェミニンさが生きてる曲とか。これはもう大澤誉志幸さんとのコンビじゃなかったらこういう曲にはなんない。

木﨑:そうですよね。大村さんも他のアーティストのアレンジはもうちょっと J-POPっぽいっていうか、メロディー中心のストリングスとかもあるんだけど、大澤と吉川は結構リフっぽい作りをしてるのがすごいなと思って。シティポップみたいのもできるけど、共通しているのは全部洋楽のエッセンスがあるってこと。松田聖子さんの曲もそんな洋楽っぽくはできないんですよ。コードがいっぱい変わっていくから。だけど苦労して、なるべくコードがバンバン変わってるように見えないようにいろいろやってたんだなと思って。それで音楽的で、豊かな感じがするんですね。音が少ないのに。だからちょっとホットに歌っても、演奏がクールだったら、いい感じの雰囲気になるんですよね。大澤のこの歌い方でオケが暑苦しかったらすごくチープな感じになっちゃうんじゃないかな。

田家:1984年9月発売吉川晃司さん「LA VIE EN ROSE」。 この曲は作詞が売野雅勇さんで、作曲が大澤誉志幸さん、編曲が大村雅朗さん。

木﨑:大澤のアルバムを作ってたときに、ハードボイルドな世界でやりたかったんだけど、売野さんの作ったこの詞がちょっとリゾートっぽい感じがあって。吉川は水泳をやってたし、これ合うんじゃないかなと大澤と話して、これ吉川で使いたいんだけどっていってコンバートして。

田家:吉川晃司さんはシングル盤が4曲ずっと続いて、アルバムも1枚目2枚目も大村さんでしょう。吉川さんには、大澤さん大村さんのコンビが合うっていう。

木﨑:吉川も大村さんのサウンドが合うなと思って。クールな感じが。曲はいろんな人とやればいいかなと思っていて。その中でたまたまこの曲が吉川が歌ったらいいかもと思って。思いつきっていうか。僕は全体のことしか言わないんで。リフがある曲だとか、こんな感じとか。それをもうちょっと技術的にも詰めていったのが大村さん。

田家:なるほどね、この曲のあの曲のって言わなくても、こういう感じって言えば大村さん同じようなものをちゃんと出してくれた人。

木﨑:そうですね。最初にサウンドコンセプトを話し合って決めてから制作に入るのでお互い向かう方向は一緒だから話も早いし。

田家:向かう方向が一緒だったっていうのがいいですね。木﨑さんが選ばれた今日の最後の曲は、吉川晃司さんの4枚目のシングル「You Gotta Chance ~ダンスで夏を抱きしめて~」なんですが、これは映画「You Gotta Chance」の主題歌でロングバージョンというのがあって、大村さんプロデュースのアルバムがあった。その中からお聞きいただきます。

田家:今日の8曲目、今月最後の曲です。吉川晃司さん「You Gotta Chance ~ダンスで夏を抱きしめて~」 。

木﨑:詞は麻生圭子さんっていう、その前はシンガーソングライターの子が詞を作りたいと僕んとこにきて。それ吉川晃司に詞作ってみる?って何個か作ってもらって。この詞がだいぶ完成されたんで、この詞にNOBODYにメロディをつけてもらった。このサントラ盤を作るにあたっていろいろあって。

田家:大村さんのプロデュースでしょ?

木﨑:はい。最初『すかんぴんウォーク』っていう映画を作ったんですよ。この前亡くなっちゃった大森一樹さん監督でやったんですけど。そのときに映画の人たちにサントラ、大村さんを推薦したんですよ。だけど時間もかかるし、お金もかかるかもしんないんですけど、みたいにちょっとネガティブなこと言っちゃったら外されちゃった。あまり初めての人に本当のことは言わない方がいいなと思って。いいことばっか言った方がいいんだなと思って。次の映画のときは大村さんでやらせてもらえることになった。自分は大村さんと会った頃からすごい才能だなと思ってて。坂本龍一さんみたいになれる人だなと。本当はアレンジとかいろんな人のやるんじゃなくて、自分の好きな音楽をやるアーティストになった方がいいんじゃないかと思ってたんですよね。それで大澤のツアーにも来てもらったんです、最初のデビュー。キーボード。

田家:そうなんですか。

木﨑:だからツアーで1回、大村さんもライブやったんですよ。松武さんと一緒に。ドラムは上原ユカリ裕、ベースは吉田建、ギター沢田研二と合体してやったんですけど、やっぱり大村さんはツアーは嫌だったみたいで。そのあとツアーはやらなくなったんですけど、このサントラ盤を作ってって。1人で黙々と自分が作りたいように作ったんだと思うんですけど。これが大村さんオリジナル最初みたいな感じで。よく天気予報とかでもかけてくれたり。歌のない大村雅朗さんの最初の頃の作品かもしれない。

田家:そういう坂本龍一さんと並んで名前が出るような人になってほしいっていう木﨑さんにとって、昨今の大村さんの再評価はどんなふうに受け止められてますか。

木﨑:やっぱり長く伝わるものって何かと思ったら、クールなものですね。あまりホットなものは人間って飽きちゃうのかなと思って。時代が下っていくとどうなってるかっていうと、どんどんクールな物になってるんですよ。歌い方も「カローラIIにのって」っていう曲を小沢健二さんが歌っていたけど、あのメロディもほとんど吉田拓郎みたいだったんだけど、もっとあっさりしてるんですよ。それが時代ってもので、BUMPの藤くんもガーッて歌ってるけどクールなんですよ。どんどんどんどんクールになって、アレンジもどんどんどんどんクールになっている。あの時代から今に合うぐらいクールなのを作っていた大村さんは今でも通用すると、自分なんか聴いてると思う。音色がちょっと今の時代と合ってない感じはありますけど、それを再び音を変えればアレンジ的なものはほとんどそのまま使えるんじゃないかな。40年前だけど古くなく感じるんですよね。

田家:そういうアルバム木﨑さんがプロデュースされるっていうのがあるといいですね。

木﨑:音を直してもう1回出したいぐらい。マスタリングもしなくちゃ駄目だと思うんですけど、音色、ドラムの音をもうちょっとこういうふうにしたいとか、キックとかベースの音をこうしたいなとかちょっとあります。

田家:この先にある2023年2月10日の大阪フェスティバルホールに向けて思ってらっしゃることで終わりましょうか。

木﨑:大村さんって、どっか縁の下の力持ちって感じがあって、音楽を聴く人にとっては一番聴いちゃうのはメロディと詞とボーカル、その次に聞こえるのは洋楽だったらドラムとベースなんですよね。そこがよければ大体いい曲になると思うんです。サウンドプロデュースは背景作りだと思うんですね。大村さんがやった歌の背景作りっていうのは、すごく緻密で無駄がなくて、計算され尽くしています。「そして僕は途方に暮れる」もあのオケがなかったら、本当に貧しいものになっちゃうはずだった。そういう大村さんの役割を見ていただけたら、聞いていただけたらって思いますね。

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左から、田家秀樹、木﨑賢治

「FM COCOLO J-POP LEGEND FORUM」。流れてるのはこの番組の後テーマ竹内まりやさんの静かなレジェンドです。

80年代と今の一番の違いは、音楽の情報量だと思うんですね。木﨑さんがばんばひろふみさんの「SACHIKO」とか、佐野さんの「SOMEDAY」を当時は編曲・大村雅朗って意識しないで聴いていた。後になって、これが大村さんだったんだって気がつく。つまり彼も言っていましたけど、みんな作ることに一生懸命で、他の曲、他の人がどんなものを作ってるか耳に入ってこなかった。レコード盤が上がってこないと知る由がなかった時代だったんですね。

今違いますからね。あらゆる形でいろんな音楽が耳に入る中で、当時の音楽が当時と違った評価を受けている。シティポップの世界的なブームも象徴的な例だと思うんですね。シティポップって何かって言ったら日本初の洋楽なんですね。洋楽に追いつけないことを知りながら、当時の制作者が全知全能で作った日本の音楽なんです。実はそこに今や世界にはなくなってしまった80年代洋楽のエッセンスが残っていて、それを今情報がたくさんある中でコンピュータを使いこなしてる人たちがサンプリングの一つの材料として聞き始めたところから始まってるんだと僕は思ってる。

その中で大村雅朗さんの再評価が始まっている。エンジニアもそういう中で再評価が始まるでしょうね。その次は、プロデューサーの再評価になってくるんだろうな。制作者で音楽を聞くことが日本の音楽環境の中でこれから始まっていくんではないかと思ったりしながら話を聞いてました。木﨑さんは沢田研二さん、吉川晃司さん、槇原敬之さん、BUMP OF CHICKENという方達を手がけてこられました。プロデューサーで音楽を聞くという意味ではですね、これ以上ない対象ではないでしょうか?

<イベント情報>

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大村雅朗 25th Memorial Super Live ~tribute to Masaaki Omura~
2023年2月10日(金)フェスティバルホール(大阪府)
時間:開場 17:30 / 開演 18:30
出演:大澤誉志幸 / ばんばひろふみ / 槇原敬之 / 南佳孝 / 八神純子 / 渡辺美里 / B・T・S(Baku-san Tribute Session)BAND / 佐橋佳幸(音楽監督、g) / 亀田誠治(音楽監督、b) / 山木秀夫(ds) / 今剛(g) / 石川鉄男(Mp) / 斎藤有太(key) / 山本拓夫(sax) [ゲスト]松本隆(トークゲスト) [DJ]砂原良徳(GUEST DJ)

https://omuramasaaki-25th.jp/

<INFORMATION>

田家秀樹
1946年、千葉県船橋市生まれ。中央大法学部政治学科卒。1969年、タウン誌のはしりとなった「新宿プレイマップ」創刊編集者を皮切りに、「セイ!ヤング」などの放送作家、若者雑誌編集長を経て音楽評論家、ノンフィクション作家、放送作家、音楽番組パーソリナリテイとして活躍中。
https://takehideki.jimdo.com
https://takehideki.exblog.jp

「J-POP LEGEND FORUM」
月 21:00-22:00
音楽評論家・田家秀樹が日本の音楽の礎となったアーティストに毎月1組ずつスポットを当て、本人や当時の関係者から深く掘り下げた話を引き出す1時間。
https://cocolo.jp/service/homepage/index/1210

OFFICIAL WEBSITE :https://cocolo.jp/
OFFICIAL Twitter :@fmcocolo765
OFFICIAL Facebook : @FMCOCOLO
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cocolo.jp/i/radiko

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