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ブタを用いた研究で心臓の自己再生能を活かした心不全の遺伝子治療に光、米ベイラー医科大学研究チーム

ブタを用いた研究で心臓の自己再生能を活かした心不全の遺伝子治療に光、米ベイラー医科大学研究チーム

  • @DIME
  • 更新日:2021/07/21
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ブタを用いた研究で心不全に対する遺伝子治療に光

心臓の自己再生能を活かした遺伝子治療の臨床試験で有望な結果が示された。

ブタを用いた同試験では、この治療法の忍容性が確認されただけでなく、心筋梗塞によって損傷を受けたブタの心機能が治療後に改善することが示された。

米ベイラー医科大学教授のJames Martin氏らによるこの研究結果は、「Science Translational Medicine」6月30日号に発表された。

心不全は、全身が必要とする量の血液を心臓が効率よく送り出せない状態になる慢性疾患である。原因はさまざまだが、心筋梗塞は心不全の主な要因の一つである。

心筋梗塞が起こると、心臓では血液と酸素が不足し、心筋の一部が壊死する。壊死した部分はその後、瘢痕組織に置き換わるが、瘢痕組織は心臓のポンプ機能を妨げるため、心不全に至ることが少なくない。

Martin氏は、「今回報告された遺伝子治療に関する研究の最終的な目標は、この“負のスパイラル”を止めることだ」と話す。

ヒトの心臓は精巧にできているが、自己再生能がほんの少ししか備わっていない。心筋細胞にはわずかな再生能力しかないのだ。

一方、今回報告された実験段階にある遺伝子治療は、Hippoシグナル伝達経路(Hippo経路)と呼ばれる体内のシステムを標的としている。

この経路は通常、心臓などの臓器における細胞の増殖を阻害する。Martin氏によると、これは必要な機能であり、もし心臓全体でHippo経路の働きが抑制されると問題が生じる可能性があるという。

Martin氏らは、心筋梗塞により損傷した部分に接する生き残った細胞に限定してHippo経路を阻害することが心筋細胞の再生に有効ではないかと考え、遺伝子治療によりそれを行った。

治療にはHippo経路の特定の遺伝子を“ノックダウン”するよう設計されたRNAを運ぶベクターとして、非感染性のアデノ随伴ウイルスを使用した。

同氏らはこのウイルスのベクターを、心筋梗塞により心不全を起こしたブタの心臓の損傷部位との境に直接注射した。

その結果、治療の3カ月後には、治療を受けたブタの心臓に新たに心筋細胞が生まれ、瘢痕組織は減少し、微小血管の新生も確認された。また、心臓のポンプ機能の指標である駆出率は、遺伝子治療を受けたブタで14.3%改善していた。

心筋梗塞を起こしたヒトに、こうした遺伝子治療を導入できる日が来るのは、かなり先になるだろう。しかし、Martin氏らは、「損傷を受けた組織の修復を促すために、心筋細胞の増殖を誘導できることを証明した研究結果」との見解を示している。

同氏はまた、「将来、心筋梗塞の患者が心不全に至るのを防ぐ治療が登場することも期待される」と話している。

この研究には関与していない、米テンプル大学ルイス・カッツ医学部教授のArthur Feldman氏は、今回の報告を受けて、「素晴らしい成果だ」と称賛。

ただ、「ヒトを対象とした研究に進む前に、解決すべき重要な問題が残されている」と同氏は指摘する。その一つが、Hippo経路を阻害することにより、心臓だけでなく他の臓器でも細胞が過剰に増殖してしまう可能性があることだ。

また、心臓の一部分だけで心筋の成長を促すことで、不整脈が起こる可能性はないのかという点にも疑問が残るとしている。

Martin氏らは、引き続き動物を用いた研究でこの治療法について検討を重ね、心臓に対する安全性と他の臓器への影響がないことを確かめる予定だ。

また、ブタの心臓は人間の心臓に似ているが違いもあるため、ヒトの心筋細胞がこの遺伝子治療にどのように反応するのかについても明らかにすることが不可欠だとの見解を示している。(HealthDay News2021年7月1日)

Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.

(参考情報)
Abstract/Full Text
https://stm.sciencemag.org/content/13/600/eabd6892

構成/DIME編集部

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