更年期障害が「人が変わったよう」に落ち着き、劇的に効くホルモン補充療法

更年期障害が「人が変わったよう」に落ち着き、劇的に効くホルモン補充療法

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  • 更新日:2021/06/11
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※写真はイメージです(写真/Getty Images)

ほてり・のぼせ(ホットフラッシュ)、発汗、疲れやすい、めまい、動悸、眠れない、イライラ、憂うつ……。更年期にこうしたさまざまな身体的、精神的症状が表れ、日常生活に支障をきたす状態を更年期障害という。更年期障害の治療の中心は、ホルモン補充療法だが、日本での普及率は低い。その原因の一つが、乳がんの発症率を高めるといったホルモン補充療法を受けることでのリスクだ。近年はそのデメリットが、解消されつつある。

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更年期障害の主な原因は、女性ホルモンの一つであるエストロゲンがゆらぎながら低下していくことだ。女性は更年期を迎える40代半ばから卵巣機能が低下していき、卵巣から分泌されるエストロゲンの分泌量も急激に減少していく。

治療の中心となるのは、エストロゲンを補充する「ホルモン補充療法(HRT)」だ。愛知医科大学病院産婦人科教授の若槻明彦医師はこう話す。

「あれもこれもと矢継ぎ早に多様な症状を訴える患者さんにホルモン補充療法をおこなうと、次の診察では人が変わったように落ち着いていることがあります。ホルモン補充療法は、それくらい効果があります。特に効果が出やすいのが、ほてり、のぼせ、発汗などの『血管運動神経症状』です」

■貼り薬の使用でリスクを回避

更年期世代の女性のうち、約8割が更年期症状を経験すると言われているが、日本でのホルモン補充療法の普及率は、欧米に比べて著しく低い。

その理由の一つが、副作用に対する不安だろう。不安の根拠となるのが、2002年に発表された「WHI(Women’s Health Initiative)」という米国の大規模試験の結果で、ホルモン補充療法によって乳がんや心筋梗塞などの心血管系疾患、静脈血栓塞栓症のリスクが上昇したという内容だった。しかしその後のさまざまな研究によって、こうした難点をカバーできることがわかってきた。

WHI研究によると、ホルモン補充療法を受けなかったグループで、乳がんを発症したのが1万人のうち30人だったのに対し、5年以上受けたグループは、38人で1・26倍の増加だった。これはアルコール摂取、肥満、喫煙といった生活習慣によるリスクと同等もしくはそれ以下となる。また、5年未満であればリスクは上昇していない。

さらに、その後の研究で明らかになったのは、使用するホルモン剤の種類によってリスクが異なることだ。がんなどで子宮を全摘して、子宮がない女性はエストロゲン製剤を単独で使用するが、子宮がある女性の場合、エストロゲン製剤と黄体ホルモン製剤(プロゲスチン製剤)を併用する。エストロゲン製剤の単独使用では、子宮内膜がん(子宮体がん)のリスクが上がることから、それを予防するためだ。

「実は乳がんのリスクを上げるのは黄体ホルモン製剤であり、エストロゲン製剤単独であれば5年以上使用しても乳がんのリスクは上がりません。さらに黄体ホルモン製剤には、合成型と天然型があり、天然型であれば乳がんのリスクが増えないことがわかってきています」(若槻医師)

天然型の黄体ホルモン製剤は現在日本では使用できない。近い将来承認される見込みだが、現状では天然型と類似した作用がある「ジドロゲステロン」が代用される。

薬を体内にとり込む経路によってリスクが異なることもわかってきた。ホルモン補充療法には、経口剤(錠剤)と経皮吸収型製剤(貼付剤、塗布剤)がある。

「貼付剤は心血管系疾患や静脈血栓塞栓症のリスクを上昇させないことが明らかになっています。このため、現在は貼付剤を第一に選択することが増えています」(同)

貼付剤は主に下腹部に貼り、2日に1回もしくは週に2回新しいものと交換する。皮膚がかぶれたり、腫れたりする人は、経口剤を使用する。

■骨折や動脈硬化を予防する副効用も

そのほかホルモン補充療法の副作用として出血や乳房痛、乳房緊満感などがある。ホルモン補充療法の投与方法には、持続法と周期法の2種類があり、持続法の場合は、ホルモン剤を連続して使用し、周期法の場合は間に5~7日の休薬期間をはさむ。持続法は月経がこないが、不定期な不正出血が起こりやすい。一方、周期法は毎月、月経がくる。野崎ウイメンズクリニック院長の野崎雅裕医師はこう話す。

「閉経している人は持続法を選ぶ傾向があります。乳房痛などが気になれば量を調節するなど、ホルモン補充療法は、薬の量や種類、期間、経路など個人に合わせたテーラーメイド医療といえます」

いつまでホルモン補充療法を続けるかについては、期間や年齢に決まりはない。

「症状が落ち着いているからといって急に薬を中止すると症状がぶり返すことがあります。医師と相談して症状を確認しながら減らしていくことが大事です」(野崎医師)

ホルモン補充療法は、骨折や動脈硬化を予防する、皮膚や粘膜の潤いを保つといった副効用も認められている。

ホルモン補充療法は現在乳がん、子宮内膜がんを発症している、もしくは過去に乳がんにかかっている人や静脈血栓塞栓症や心筋梗塞、脳卒中などの既往がある人は、実施できない。こうした人やホルモン補充療法に抵抗がある人は、漢方薬やサプリメントを使用する。

婦人科医が更年期障害に詳しいかどうかは、日本女性医学学会が認定する専門医資格を有するかどうかが一つの目安になる。専門医は同会のホームページで検索できる。

(文・中寺暁子)

※週刊朝日2021年6月18日号より

中寺暁子

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