尾崎豊は「人は自由になどなれない」と理解していた...親交深いプロデューサーが述懐

尾崎豊は「人は自由になどなれない」と理解していた...親交深いプロデューサーが述懐

  • 読売新聞
  • 更新日:2023/03/19

シンガー・ソングライター尾崎豊さんの没後30年を機にした巡回展「OZAKI30 LAST STAGE 尾崎豊展」が17日に富山県内で始まった。全国で行ってきた巡回展は、富山会場で幕を閉じる。尾崎さんをデビュー当時から支え、巡回展を始めた音楽プロデューサーの須藤晃さん(70)(富山県射水市出身)に、開催への思いを聞いた。(聞き手・柏木万里)

No image

尾崎さんの愛用品や写真が並ぶ会場(18日、富山市民プラザで)

――巡回展のきっかけは。

「彼とずっと付き合ってきた肉親以外のほぼ唯一の大人として、日本中に知れ渡った優れた作品や生き様を、後世の人たちにも知らせたかったからです。尾崎さんの死後間もなく、10年ごとに大きなイベントを開こうと誓い、10周忌、20周忌に巡回展を開きました」

「照明も再現してライブ映像を流し、着ていた衣装を展示しました。これまでに巡回展を訪れてくれた人の数は、生前に行ったライブの観客の合計を超えます。ファンの方はもちろんですが、彼を知らない世代、特に子どもたちに、『こんな人がいたんだ』と感じてほしい」

――尾崎さんの魅力は。

「彼の歌を最初に聞いた衝撃は忘れられません。シンガー・ソングライターの常識にはまらない、聞いたことのない曲ばかり。プロデューサーとして『この人の作品を残したい』と強く思いましたが、違うプロデューサーが彼についていたら、大幅に修正していたでしょう」

「彼は、自由について常に歌いながら、人は本当の意味で自由になどなれないと理解していました。『15の夜』では、『自由になれた気がした15の夜』と歌いますが、『気がした』と表現したのが彼のすごさ。その切なさや悲しさが、多くの人の共感を得るのだと思います」

「反核をテーマにした曲を歌うなど、時代にも敏感でした。今生きていたら、コロナ禍やロシアのウクライナ侵略について歌っていたはずです」

――26歳という若さで亡くなったのが惜しまれます。

「精神的に自分をあれほど磨いていても、自分の体をぼろぼろに痛め、最後は亡くなってしまいました。そばにいた大人として責任も痛感し、苦しみました。彼が教えてくれた一番のことは、『命のはかなさ』だったと思います。芸術監督を務めているオーバード・ホールでは、本物のアーティストである彼にライブをしてほしいですが、かなわないのが切ないです」

――今回の企画展にもその思いを込めたのですか。

「会場には『生きていてほしかった』という思いを込めた僕の文章を掲示しました。悩みや苦しみを一緒に解決したかったと今も強く思います。僕も命がある限り、彼のために働きたい」

――巡回展は富山で終わります。

「遺族からの依頼で、彼の遺品は県内に住んでいる僕が保管しています。多くの人に見てほしいと思い、2019年から彼の愛用したピアノを富山市民芸術創造センターで常設展示しています。センターはその後、東京・渋谷のクロスタワーにある記念碑のように、彼をしのぶファンが訪れる場所になりました。彼の使っていた学習机を巡回展で展示していますが、終了後は同センターで常設展示を始める予定です。富山が今後、第二、第三の尾崎豊の聖地となることを願っています」

「40周忌の巡回展は、自分の年齢的にできないかもしれません。富山会場では、彼のことを知らない子どもたちに、人生を左右するような経験をしてほしいです」

◆すどう・あきら=1952年生まれ。富山中部高校、東京大文学部を卒業後、CBSソニー(現ソニー・ミュージックエンタテインメント)に入社し、96年に独立。尾崎豊の他、玉置浩二、浜田省吾などの楽曲制作を手がけた。2015年から富山市民文化事業団の芸術監督を務め、20年から拠点を県内に移して活動している。

■歌詞のメモも

巡回展の最後を飾る「OZAKI30 LAST STAGE 尾崎豊展 THE FINAL」は、富山市民プラザ(富山市大手町)で26日まで開かれている。

1992年4月に尾崎さんが亡くなって以降、10年ごとに巡回展として全国で開かれ、今回は昨年3月から東京、大阪、広島などを巡回してきた。富山会場のみ会場での撮影が可能になっている。

会場には、「15の夜」「卒業」「僕が僕であるために」など、尾崎さんの代表曲5曲のライブ映像を上映するコーナーが設けられている。また、尾崎さんが歌詞を書き留めたメモや手紙、創作に使ったピアノ、ライブで着用した衣装も展示されている。17日には須藤晃さんのトークショーが行われた。

18日、会場を訪れた名古屋市の男性会社員(23)は、東京や静岡などの会場も訪れたほどの大ファンだ。「自分が生まれたときには亡くなっていたが、生きた証しを間近で見ると『尾崎豊って本当にいたんだ』と衝撃を感じられる」と話していた。

一般(中学生以上)1300円、小学生以下無料。詳細は公式サイト(https://ozaki30.exhibit.jp/)で。

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加