脱「会わない」。劇団ノーミーツが本当に実現したい次の勝ち筋とは

脱「会わない」。劇団ノーミーツが本当に実現したい次の勝ち筋とは

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2021/05/05
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コロナ禍という「人に会えない」状態を逆手にとって、オンラインにおける表現の可能性を広げた「劇団ノーミーツ」が、4月9日で旗揚げ1周年を迎えた。

この1年で30の短編を発表し、3回の単独長編公演を実現。Zoom演劇という新しいジャンルを切り拓き、延べ2万8千人以上の観客を動員した。

また、サンリオピューロランドとのコラボ長編公演(VIVA LA VALENTINE)や、HKT48とのコラボプロジェクト(HKT48、劇団はじめます。#劇はじ)を行い、2020年9月にはMeetsを設立。GW中の5月4日深夜24時(5日の0時)より、夜明けをテーマに一晩かけて上演する特別公演「夜が明ける」を行う。そして、現在は「リブランディング」にも着手しているという。

これまでに幾度ものツイッタートレンド入りを果たし(門外不出モラトリアム、VIVA LA VALENTINE、劇はじ)、彼らが打ち立てた「オンライン演劇」という新たなエンターテインメントの形は浸透したようにも思える。

そんな彼らが、いまリブランディングを行おうとするのはなぜなのか。これからの1年で、実現したいことは何なのか。

劇団ノーミーツ主宰である広屋佑規(企画・プロデュース)、林健太郎(企画・プロデュース)、小御門優一郎(脚本・演出)に、彼らが考える新たな「勝ち筋」について聞いた。

劇団ノーミーツの公演は「演劇」ではない?

──立ち上げからこれまで、どのような1年でしたか。印象に残っている出来事や、大きな変化は?

林健太郎(以下、林):正直、全く予想外のことばかりでしたね。1年前、コロナで仕事が完全に止まってしまったことから、何ができるだろうって考えて、140秒の作品をつくったのが始まり。そこからあっという間に仲間が増えて、会社になって、趣味が仕事になって、たくさんの賞もいただけて。こんな展開になるとは思っていませんでした。

小御門優一郎(以下、小御門):道なき道を自分たちで舗装しながらなんとか進んできたような印象ですね。

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脚本・演出を担当する小御門優一郎。1993年生まれ。慶應大学在学中より劇団「21g座」を主宰。劇団ノーミーツ第3回長編公演『それでも笑えれば』の脚本は岸田國士戯曲賞にノミネートされた

僕が一番驚いたのは、第3回長編公演の「それでも笑えれば」の脚本が、岸田國士戯曲賞の最終選考まで残ったこと。いまの演劇界の大物と言われる先生たちからいただいた”忌憚ない講評”がすごく面白かった。

審査員のほとんどが「オンライン演劇」は「演劇とは言わない」といった厳しいリアクションだったんです。演劇は箱(劇場)の中でやるものだという信念をもつ方々から見ると、僕らのやっていることは、演劇そのものにはならないのだと……。

広屋佑規(以下、広屋):たしかに、僕たち自身も、自分たちがやっていることを形容しづらい部分はあるよね。なかなかいい言葉が見つからなくて「オンライン演劇」と名乗ってはいるものの、どうもしっくりきていない部分もある。

小御門:僕自身も純粋な「演劇」だとは思っていないかもしれない。「演劇性」はあるけれど、「演劇」そのものではないのかなって。

──作品をつくるときに大切にしていることは?

広屋:これは時期によって変わってくるのですが、旗揚げしてからしばらくは、メンバーも役者も「会わない」でできる表現を追求していました。窮屈や不安を感じるなかでも、こんなエンターテインメントがつくれるんだというのを示したかったし、そのときの世の中の気分を描きたいという気持ちが大きかった。

小御門:「会わない」でつくりきれるのかという実験結果をなるべく見せたいという気持ちはあったよね。僕は「いま、ノーミーツで」やる意味があるかどうかを常に意識した作品作りをしてきたつもりです。

広屋:それを追求し続けた結果、演劇界以上に広告界のほうでACC TOKYO CREATIVITY AWARDS クリエイティブイノベーション部門 ゴールド賞をいただいたり、文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門で優秀賞をいただいたり、予想とは違う広がり方をしたなと思っていて、自分たちの作品がもつ可能性ってどこまで幅があるのかをずっと模索している部分はありますね。

林:僕も最初はオンライン演劇としてどれだけ面白いものがつくれるかに没頭していたんだけど、途中から、メンバーのとんがった思想とかアイデアをどれだけ抑えずに新しいものを形にできるかということを強く意識するようになったかも。

──ほかの「劇団」とノーミーツがもっとも違う部分はどこですか?

小御門:企画について話し合うときの「最初の会話」から違いますね。普通の劇団だったら「次に何をやりたい?」「物語の題材はどうする?」みたいな話から始めると思うんですけど、ノーミーツは必ず「どう仕掛ければ多くの人に広まるか」もセットで考えていきます。いいものをつくり続けていればいつか認められるよね、というスタンスではなくて、どう広げていくかまでを視野に入れたアイデアを出し合う感じ。

広屋:チーム構成も独特なんですよ。元々演劇界の住人だったのは、小御門(脚本・演出)や俳優陣、舞台監督など数人で、そのほかの配信や撮影を行うテクニカルディレクターやエンジニア、映像作家にコピーライターや宣伝広報担当などは、それぞれが他に本業を持って第一線で活躍しているメンバーがジョインしてくれているんです。

だから、公演の最初のアイデアが物語や脚本の内容ではなくて、「この技術を使いたい」だったり、「このやり方を試したい」だったり、撮影技術や配信方法、システムなんかの話が先にでてきたりすることが多いのが特徴かもしれません。

林:『それでも笑えれば』のときに、テクニカルチームから「選択式」の演劇をやりたいっていう話が出たときは驚いたよね。視聴者の多数決で物語の結末が分岐していくような見せ方かなと思ったら、視聴者1人1人それぞれの選択によって、分岐した違うシーンと結末を見せるような技術提案が上がってきた。しかもライブ配信で!

これはテクニカルメンバーがいなければ、発想すらできなかったことですし、その技術もやってみないとわからないレベルではあったんですが、やれてしまった。

プロデューサーだけではなくて、テクニカルメンバーや宣伝広報までもがごった煮でブレストするからこそ、新しいアイデアが次々実現できる。テクニカルな実験を演劇という物語の中にどう落とし込んでいくか。こうした普通の演劇や映画のつくり方ではない化学反応が頻発するのが、めちゃくちゃ面白いんです。

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企画・プロデュースを担当する林健太郎。1993年生まれ。現在も映画制作会社に勤務するプロデューサーとしての顔も持つ

オンライン・オフラインの垣根を越えていく

──この1年で、オンライン演劇というかたちも浸透してきた感があります。なぜこのタイミングで「リブランディング」を考えているのでしょうか?

広屋:ありがたいことに、この1年で、「劇団ノーミーツって、会わずにオンライン演劇をつくっている人たちでしょ?」っていうイメージが定着したかなと感じています。当初は正しかったのですが、これまで全力でやってきて、「会わないでつくること」以上に挑戦したいことが出てきたというのが直球の理由ですね。

もっと幅広く、オンラインとオフラインを両立させた新しいエンターテインメントを提案したいと思うようになりました。

最初の1、2作品くらいは、お客さんも「あーオンライン演劇か、なるほどね。面白いね。時代に合ってるね」ってすごく新鮮に観てくれたんですけど、緊急事態宣言が解除されて人々がまた劇場に戻り始めたら、やっぱり「劇場で観るのが一番いい」ってなるわけですよ。

僕たちも生の体験が一番いいとは思っているんですが、それと同時に、オンラインならではの面白さも追求していきたいなと。

小御門:公演を重ねるうちに「今回はドローン飛びます」とか、「今回は選択肢で結末が変わります」っていう、新しいことをどんどんやり続けてきました。公演ごとに新しいことを実現させるのはかなり大変なのですが、それがすぐ当たり前になっちゃうんですよね(笑)。

広屋:僕らの武器って、「物語」の力と「技術」の力を組み合わせて、新しいコンテンツをつくっていくことだと思うんです。多業種との兼業メンバーが多いからこそ、演劇というかたちにとらわれず、その時代に適したエンターテインメント性の強い作品を柔軟につくっていける創作集団。「会わないでつくる」からはみ出て、もっと自由になる。それがリブランディングの理由です。

──次回作ではどのような挑戦を?

広屋:いま僕らが取り組んでいることの1つは、オンラインとオフラインの融合です。劇場やとある場所で生身の役者が演じるリアル演劇と、ライブ配信の両方を同時に使って上演する新作をつくってみたいです。

林:オンライン・オフラインどちらにもそれぞれの違う楽しみ方や仕掛けを用意して、生で楽しむものにしたいんだよね。「生映画」っていうのが近いのかな。

この両立は、正直まだ未開拓の領域。オフラインで公演をやりながらオンラインでも面白く見られる方法や仕掛け、形についていますごく考えています。そのひとつの「解」みたいなものを出せたら。

小御門:僕はその仕掛けを物語に落とし込むための、必然性について悩んでいるところ(笑)。例えば物語の中で語られている視点が2つ存在している必然性が描ければ、配信でも生でも観たくなるかなとか。ちょっとだけ言うと、「真実と嘘」がテーマになりそうです。

いずれにしても、ライブ配信、つまり「生」であることにはこだわっていて、そこで演劇性を担保している部分がありますね。その回でしか観られないアドリブがあったり、芝居そのものが成功する保証がないっていうドキドキハラハラだったりは、エンタメの大事な部分だと思うので。

──1年前と同じように、再びの緊急事態宣言が発出されています。これからも予想できない変化が起こるかもしれないですが、これからの展望・勝ち筋とは?

林: オンライン・オフラインとか、作り手と演者とか、そういった垣根を飛び越えてエンターテイメントのあらゆる可能性を模索できるのが、ノーミーツらしさだと思っています。今後は、誰もが知っているオリジナルの代表作をつくれるかどうかが、これからまたひとつ飛躍できるかどうかの鍵になるのかなと。

広屋:「インディペンデント性」と「スピード感」も、劇団ノーミーツの強みの1つだと思うんです。そもそもの旗揚げが、コロナ禍という逆境の中で何ができるかって集まった集団ですから。

もしかしたらこの先「オンライン」っていうフォーマットが全く成り立たなくなることがあるかもしれない。そうなった時には、それを捨てて新しいフォーマットを1からつくるくらいの気概が、僕らにはあると確信しています。

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企画・プロデュースを担当する広屋佑規。1991年生まれ。Meetsの代表取締役、没入型ライブエンタメカンパニーOut Of Theater代表。レストランや都市空間を活用したエンタメ作品のプロデュースも

ノーミーツは全公演が黒字かと言われるとそうではないのですが、トータルで見ると黒字です。オンライン演劇って「会場費がかからない」とか、「会場のキャパシティによるお客さんの上限がない」とかで、ビジネス的にも、演劇とかライブエンタメにとって革命的であると思って挑戦をしてみたんですけど、実際ちょっとした劇場を借りるくらい機材費がかかることがわかってきて(笑)。

我々はまだ2年目のチームですけど、やりたいことを多くの人に届けて、それを続けていくためにはやっぱり稼がないといけないんですよね。

ただそれでも、1年前につくったZoom演劇みたいに、「今だ!」というタイミングで、自分たちの「好き」を信じた作品づくりを続けることが、一番大事だと思っています。その柔軟さを受け止められるシステムをMeetsという会社で整え、スピード感を持ってトライ&エラーを回し続ける。そういった「令和での新たな創作集団の形」を見つけることが、これからの勝ち筋につながるのではないかと。そうすれば、5年後でも面白がってもらえて、生き残れるんじゃないかと思っています。

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