矢野財務次官の大罪。保身確保の駄文に「吉田松陰」の言葉を使う無礼

矢野財務次官の大罪。保身確保の駄文に「吉田松陰」の言葉を使う無礼

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  • 更新日:2021/11/25
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先日掲載の「逆らう政治家は吊し上げろ?財務省『バラマキ批判』発表の大勘違い」では、財務次官による与野党の政策論争批判論文の内容や発表のプロセスについて強く批判した、京都大学大学院教授の藤井聡さん。その論文内にはまた、藤井さんが看過できない記述も見受けられたと言います。今回のメルマガ『藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~』では藤井さんが、次官が「やむにやまれぬ大和魂」という言葉を用いたことを大罪と断言した上で、その理由を綴っています。

【関連】逆らう政治家は吊し上げろ?財務省「バラマキ批判」発表の大勘違い

(この記事はメルマガ『藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~』2021年11月20日配信分の一部抜粋です)

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長州出身の矢野次官がバラマキ批判で吉田松陰の「やむにやまれぬ大和魂」という言葉を使った事は許されざる「大罪」

この度、当方が編集長を務めております保守思想誌『表現者クライテリオン』が主催するシンポジウムが神戸・湊川神社で開催されました。当日は100名以上の聴衆の方にお集まりいただき、大盛況の内に終えることができたのですが、このシンポジウムの前に編集部、スタッフ一同、シンポジウムの成功、ならびに言論活動の旺盛なる発展を祈念して、湊川神社にお参りいたしました。

湊川神社とは、楠木正成公がお祀りされている神社です。当方この度始めてお参りすることができたのですが、大変有り難いことに湊川神社の宮司に神殿で祈願いただいたのみならず、境内を丁寧にご案内いただきました。

楠木正成公は若き頃に後醍醐天皇に謁見した折りに、陛下を生涯守り抜くと決意します。その後、後醍醐天皇は北条率いる鎌倉幕府によって隠岐の島に流罪となるのですが、楠公はその醍醐天皇を救い出さんがため、あらん限りの知と情と意の力を用い僅かな軍勢にも関わらず千早城、赤坂城の戦いを経て幕府軍を打ち破り、後醍醐天皇の復権を成就させます。

しかしながらその後、足利尊氏が後醍醐天皇を裏切り、再び失脚に追い込まんとするのですが、楠公は後醍醐天皇の再復権を企図し、10万の軍勢で攻めあげてきた足利氏を僅か700の手勢で迎え撃ち、壮絶な戦いの末あえなく敗れ、最期に「七生までただ同じ人間に生れて、朝敵を滅さばやとこそ存候へ」(七生報国)という言葉を残し、自刃したのでした。

当方、小学校の4、5年頃、楠木正成公のこうした生涯が描かれた歴史的戦記物『太平記』を読み、楠木正成公の勇気と胆力、知力と情念、そしてその生き様死に様に表れ出でる誠の忠心に、稚拙と言う他なき幼き身ではあるものの大いに感銘を受け、生きるに足る人生とはかくなるもの也との大きな感化を受けたのでした。

そんな当方にとってみて、今回の湊川神社参拝は大変に印象深く、意義深いものとなりました。楠木正成公の生涯に改めて思いを馳せつつ斯様な楠木氏の生涯に、様々な歴史上の偉人達が大きな感化を受けている史実を知り、その偉大さを改めて認識したのでした。

中でも特に印象深かったのが、かの吉田松陰がおそらくは当方が感じたものと同種のものであろう感化を楠木正成公から大いに受け、(同じく同種の感化を受けたであろう)水戸光圀公が建立した楠木正成公の墓碑に四度、お参りしていたという事実でした。

長州から神戸までの何百キロにも及ぶ遠大な距離を歩いて移動するしか無い江戸時代に幾度も往復するなど、吉田松陰の楠木正成公に対する思いの並々ならぬ大きさに改めて深い感銘を受けたのでした。

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吉田松陰と言えば、その生涯の短さとは裏腹に、明治維新、そして明治政府に巨大な影響を与えた人物です。このことはつまり、その後の日本の国の有り様に決定的に重要な影響を与えた日本の歴史上の超重要人物の一人だということでありますが、その吉田松陰が斯様な巨大な感化を楠木正成公から受けていたという事実は、そのまま楠木正成公の日本の歴史に対する影響の尋常ならざる甚大さを改めて指し示すものであります。

さて、その吉田松陰の言葉として有名なのが「やむにやまれぬ大和魂」という言葉です。

これは、この身が滅びようとも、この日の本の国を護らんがためには成さねばならぬという思いが湧き上がり、この身が自ずと動きださんとする、まさにその折りに吉田松蔭の口をついて出た言葉です。

吉田松陰はまさにこの言葉を吐きつつ行った振る舞い故に死へと追い込まれるのですが、吉田松陰の楠木正成公に対する思いの深さから察するに、そんな「大和魂」を最も体現した人物こそ、楠木正成公、その人であったことは疑いを入れぬところでしょう。

つまり、一点の偽りも無き誠の忠心故に、鬼神の如き荒ぶる魂がまさに動き出さんとするその刹那に、その魂から自ずと発露する、その魂=「こと」の切れ端=「は」こそが、「やむにやまれぬ大和魂」という言葉なのです。

ところが……この「やむにやまれぬ大和魂」という深遠なる言葉を、忠心のかけらも無き外道と言わざるを得ぬ輩がおぞましき自意識を満たさんが為だけにまさにこの日の本の国を亡国の淵へと追いやる他なき邪悪極まりなき悪文にて用いたのです。

その悪文とは、矢野康治財務事務次官が文藝春秋に公表したこの文章です。

最近のバラマキ合戦のような政策論を聞いていて、やむにやまれぬ大和魂か、もうじっと黙っているわけにはいかない、ここで言うべきことを言わねば卑怯でさえあると思います。

「このままでは国家財政は破綻する」矢野康治財務事務次官が“バラマキ政策”を徹底批判

この文章が含まれる論考が、如何に嘘と欺瞞に満ち満ちたものであるかについては、既に下記原稿にて詳しく論じていますので、ここでは繰り返しません。

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ついてはここでは、「やむにやまれぬ大和魂」と書いたことの矢野氏の「大罪」を詳らかに解説いたしたいと思います。

そもそも吉田松陰の「やむにやまれぬ大和魂」という言葉の前には、「かくすれば、かくなるものと知りながら」という言葉が枕としておかれています。すなわち松蔭は、

「かくすれば、かくなるものと知りながら、やむにやまれぬ大和魂」

と述べたのですが、この言葉を(上記を踏まえながら)詳しく解説するなら、次の様なものとなります。

「こうすれば己の身が滅びる、すなわち殺められることは必定である、しかしながら、こうせざるを得ないのだ。そうせざるを得なくなるのは、我が身の心の内にある、楠木正成公がその生涯を賭して体現してみせた“大和魂”故なのだ」

つまり松陰は、自らが死ぬ事が全ての前提であると明晰に自認、覚悟した上で、「やむにやまれぬ大和魂」との言葉を吐いたのです。

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ちなみに矢野氏がこの事実を知らぬ筈がありません。そもそも矢野氏は山口県、すなわち、松蔭と同じ長州出身の人間なのです。長州出身の文系のスーパーエリートが、その程度の常識を持たぬ筈等無いのです。

しかしこの矢野氏は驚くべき事に、この駄文を公表するに先立ち上司である麻生前財務大臣、さらには、現鈴木大臣にお伺いを立て、その公表の許可を「予め」得ているのです。

麻生太郎前財務相から了解を得ていたほか、鈴木氏にも出版前に連絡があり、手続きにも問題がないとした。

財務相「政府方針に反しない」 次官のバラマキ批判寄稿

さらに言うと「霞ヶ関の常識」に照らし合わせて考えてみれば、財務大臣が了解したということは、そのさらに上司である岸田総理大臣もまた、了解したという事に他なりません。さもなければ、政権に大ダメージを与えかねぬ「内閣不一致」と呼ぶべき状態となる大変に危険なリスクがあるからです。

いわば、矢野氏はこの駄文を公表するという「かくすれば」をした時に、「かくなるもの」=「自らの命が奪われる」という事になどは、「絶対にならない」という「100%の保身」を確信した上で、公表しているのです。(メルマガ『藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~』』2021年11月20号より一部抜粋・敬称略。この続きはご登録の上、お楽しみください)

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2021年11月配信分

長州出身の矢野次官がバラマキ批判で吉田松陰の「やむにやまれぬ大和魂」という言葉を使った事は許されざる「大罪」である。(11/20)

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