<ライブレポート>ライブハウスから東京ドームへ――King Gnuが提示する等身大のロックバンド像

<ライブレポート>ライブハウスから東京ドームへ――King Gnuが提示する等身大のロックバンド像

  • Billboard JAPAN
  • 更新日:2022/11/25
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King Gnuが11月19日と20日の二日間、東京ドームにて【King Gnu Live at TOKYO DOME】を開催した。

ライブを観て痛感したのは、King Gnuというバンドが鳴らす音楽のスケールの大きさに、ドームという会場の広さがとても相応しかったということ。今年4月に初のドーム公演を発表した際、常田大希(Vo, G)は「俺がKing Gnuを結成した理由は、子供の頃に憧れていたドームクラスのロックバンドを作ることでした」とコメントしている。まさに目指してきた場所なわけである。そして、前身バンドのSrv.VinciからKing Gnuに改名してから5年目、メジャー・デビューから4年目というスピードでそれが実現。はっきり言って破格である。そして、それだけの“現象”を生み出した原動力が、あくまで彼らの音楽の持つ壮大で美しいエネルギーにあることを改めて感じたライブだった。

バンド初のドーム単独公演となる2日間のチケットは両日ともにソールドアウト。動員は二日で10万人だ。筆者が訪れた20日も、開演前からかなりの熱気が渦巻いていた。会場に足を踏み入れると、眼前に広がるステージには廃墟のビルがそびえ立ち、その両脇には巨大なLEDモニター。大掛かりな舞台セットにも目を奪われる。

壮大なオープニング映像を経て、「一途」からライブはスタート。常田がギターを弾き鳴らし、新井和輝(B)がカメラに向かってベースを掲げ、勢喜遊(Dr, Sampler)が派手なドラミングを見せ、井口理(Vo, Key)がマイクを握り熱いボーカルを聴かせる。いきなりフルスロットルに突入するような幕開けだ。

「King Gnu、始めるぜ!」と常田が叫び「飛行艇」へ。これぞスタジアム・ロックとも言うべきヘヴィなリフが東京ドームを震わせ、5万人が手を高く掲げてそのエネルギーに応える。ダイナミックなバンドアンサンブルを畳み掛ける「Sorrow」から、レーザーの光が縦横無尽に舞った「千両役者」へと、疾走感たっぷりのアップテンポな楽曲を連発し、どんどんボルテージを上げていく。「BOY」では井口が伸びやかなハイトーンの歌声を聴かせ、常田のギターソロに大きな歓声が上がる。

井口は「みなさん、こんばんは、King Gnuです!」と挨拶し、客席を見回して「とんでもない人っすね。上のほうまでぎっしり、全員、King Gnuが好きなんですよね?」と感想を告げる。それに常田と新井と勢喜が口々に「俺も好き」と言い合う。ドームという大舞台だが、4人に気負った様子は見られない。渾身のパフォーマンスを見せつつ、ステージを存分に楽しんでいるようだ。

「祭りといきましょうよ、楽しみましょうよ!」と井口が告げ、続く「カメレオン」からはKing Gnuならではの美しくドラマティックな世界に惹き込んでいく展開だ。求心力あるメロディとハーモニーを響かせる「Hitman」、常田のピアノ独奏から始まった「The Hole」へと、息を呑むような瞬間が続く。広いステージに一人スポットライトを浴びて悲哀に満ちたフレーズを鳴らす常田の姿にも、マイクを握り高らかに歌う井口の歌声の表現力にも、強力なカリスマ性を感じる。

「NIGHT POOL」ではゆらめく光の映像と共に浮遊感あるアンビエントからサイケデリックなアンサンブルを鳴らし、「It’s a small world」では自在なグルーヴで観客を揺らす。卓越したプレイアビリティを持つ4人の演奏は、ドームという広い会場でもまるでひとつの塊のようなエネルギーと共に伝わってくる。

そして、彼らの名を広く世に知らしめた「白日」から「雨燦々」は、前半のクライマックスとも言える展開だった。情感たっぷりの「白日」ではモノクロの映像と共に曲の世界に没頭するかのような迫真のパフォーマンスを見せ、続く「雨燦々」では一転して解放感に満ちた曲調と共に晴れやかな顔で演奏する。歌い終えた井口の笑顔も印象的だった。

幕間映像では「Slumberland」のMVに登場したキャラクターたちがシュールなやり取りを繰り広げ、後半は勢喜のドラムソロからスタート。拡声器を持った常田がステージを走り回り観客を煽る「slumberland」からは場内のムードも一転。猥雑で、妖しく、色気ある、King Gnuのロックバンドとしての唯我独尊の魅力を押し出していく。グラマラスな「どろん」、常田のギターと井口の歌というミニマルな編成で曲の世界に引き込んでいく「破裂」から「Prayer X」へと続ける。サングラスを咥えてギターを弾く常田の姿も鮮烈だ。

中盤から後半にかけては、MCをほとんど挟まず、続けざまに楽曲を披露していった彼ら。「まだいける? もっと踊れるかい!?」と井口が煽り、続くは「Vinyl」。インディーズ時代からライブの定番となってきた曲だ。パワフルなグルーヴを叩き出す勢喜のドラムを軸に起伏に富んだアンサンブルは、ドームクラスの会場でも堂々たる迫力を持って響く。続く「Flash!!!」では井口がタンバリンを叩きながら歌い、新井が激しいスラップベースをプレイし、インタープレイの応酬で観衆を興奮の坩堝に叩き込む。

「悔いを残さず帰りましょう。よろしくね」と井口が告げ、5万人が左右に大きく手を揺らした「逆夢」から、本編ラストは「Stardom」。NHKサッカーのテーマソングとして作られた最新曲だ。まさにスタジアム・アンセムとなるべく作られた楽曲を特効の炎と共に全身全霊でプレイする。熱狂の渦を巻き起こし、4人はステージを降りた。

観衆がスマートフォンの光を照らすなか、アンコールに応えてステージに戻ってきた4人。井口は「下北沢で4人で飯を食いながら“新しいバンド名どうする?”って話し合いをしたんですよ」と、Srv.Vinciから改名したときのかつての思い出を語り始める。「大希がKing Gnuというバンド名を出してきて。意味もヌーの大群の王様ってことで。そのときはピンときてなかったんですけど、この東京ドームのお客さんを目の前にすると、やっとKing Gnuになれたんじゃないかと」と感慨深げに語った言葉に、大きな拍手が巻き起こった。

「この4人で仲良く、真面目にやってきてよかったなって、この光景を見て本当に思います」「ずっとガキのまんま、変わらずやっていく4人だと思うんで。今後も等身大でやってくんで、よかったらついてきてください」と井口がファンに呼びかけ、バンドの初期からのナンバー「McDonald Romance」を披露。常田のギターに乗せて4人が声を重ね、美しいハーモニーを響かせる一曲だ。ダイナミックなロック・サウンドだけでなく、こういうシンプルで思いのこもった曲もKing Gnuの大きな魅力だろう。続くキラーチューン「Teenager Forever」では常田、井口、新井の3人が身を寄せてキメのフレーズ<煌めきを探せよ!>をシャウトし、勢喜がそれを笑顔で見守る。

そして、やはり初期の代表曲「Tokyo Rendez-Vous」を力強く披露し終えると、井口が「次で本当に最後の曲なんで、スマホライトをつけますか」と促す。客席を埋め尽くす光を前に4人は、「ちっちゃいライブハウスでやっていた曲をそのままできているのがありがたいよね」(常田)、「昔の曲も映えるよね」(新井)、「でかい曲が多いんだよ」(勢喜)と、和やかなムードで語り合う。

その実感は、筆者だけでなく、集まったたくさんのオーディエンスが共有していたことだろう。King Gnuは、ドーム公演だからといって、特別な仕掛けや舞台演出を盛り込んだエンターテインメント性の高いショーを作り込んできたわけではなかった。サポート・ミュージシャンやダンサーを従えるわけでもなく、ステージに立ったのは最初から最後までバンドの4人だ。つまり、彼らにとっての東京ドームは、あくまでライブハウスから地続きの場所だった。楽曲のスケール感が最初から巨大だったからこそ、バンドがこの場所に立っていることに大きな必然があるという感じがした。そして、東京ドームは彼らにとって特別な場所だっただろうけれど、ライブを観ていると“到達点”という感じは全然なかった。井口も「もっと広い会場でやりたいよね」と言っていたけれど、この先に前人未到の光景を見せてくれるような予感を感じさせてくれるようなライブだった。

ラストは「サマーレインダイバー」。ライブを締めくくるのにぴったりの高揚感と包容力を持った一曲だ。モニターにはエンドロールのようにスタッフ・クレジットが流れる。4人がステージを去った後にはギターのフィードバック・ノイズが鳴り続けていて、そこにもライブハウスと地続きのような余韻があった。

4人が鮮やかに見せてくれたのは、新時代の“ドームクラスのロックバンド”のあり方だった。King Gnuというバンドだけでなく、日本のロック・ヒストリー全体を後から振り返ったときにも、とてもモニュメンタルなライブになったのではないかと思う。

Text by 柴那典
Photo by 川上智之 / 伊藤滉祐

◎公演情報
【King Gnu Live at TOKYO DOME】
2022年11月19日(土)・20日(日)
東京ドーム

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