「今の若者は指示待ちばかり」と嘆く上司の盲点

「今の若者は指示待ちばかり」と嘆く上司の盲点

  • 東洋経済オンライン
  • 更新日:2022/06/23
No image

「部下が指示待ちで困る」と嘆く前に「そういう人材を採用している」可能性はないか(写真:metamorworks/PIXTA)

「教科書を予習するのに、いちいち調べたり考えたりせずにすむように作られた、手軽な参考書」を指す“あんちょこ”という言葉。「安直」が語源ですが、「仕事にこそ、あんちょこが必要なんです」と話すのは、当サイトで『角田陽一郎のMovingStudies~学び続けてキャリアを伸ばす~』を連載中のバラエティプロデューサー・角田陽一郎氏。

そんな角田氏が、『考具』シリーズで知られる加藤昌治氏とタッグを組んだのが『仕事人生あんちょこ辞典』。昨年9月に代官山蔦屋書店で開催された本書の発売記念イベントを皮切りに、現在も配信にて、お悩み相談に答えるトークイベントを開催中です。

今回取り上げるのは、指示待ち社員に悩む50代女性への“あんちょこ”回答です。

「決定の裁量」と「お金の裁量」

「中小のIT企業で人事を担当しています。会社の事業自体は拡大しており、採用を増やしています。若い人が増え、やりたいことがある人はアイデアを試せる環境もできあがりつつあります。しかし、能力がある人を採用していると思うのですが、みんな言われたことしかやらない「指示待ち族」になってしまっている感があります。社員が自律的に動き出すような職場環境って、どうしたら作れるでしょうか?」(50代・IT企業人事)

角田:加藤君は人材開発に関わる場面もあると思うけれど、このお悩みにはどう答える?

加藤:「指示待ち族」にしないためには、やっぱり裁量を保証することだと思うな。その時の「裁量」には2種類あって、ひとつは何かをやる・やらないを決められる「決定の裁量」。そしてもうひとつは「お金の裁量」。

これは、とある有名なホテルの事例だけど、そこでは従業員一人が一日数万円の予算を使える裁量が与えられていて、自分の判断で使えるんだって。例えば宿泊客が誕生日であることが当日わかって、ちょっとしたプレゼントを用意したい場面があるとするよね。判断の裁量に加えて、ある程度お金の裁量が自分にあるから、迷わず用意することができるという話。自発的に動ける環境を与えてくれる、すごくいい仕組みだと思う。

角田:そういう環境があると誰か動くし、それを見た周りも影響を受けるよね。「自分の判断で使って大丈夫だ」と言われても、本当に大丈夫なのか不安な人はいるから、「怖くない」ことを示してあげないといけないけど、今の話では具体的に「何万まで使っていい」と言われているから、少なくともアーリー・アダプターみたいな人はやり始めるよね。それを見て周りの人も影響を受けるだろうね。

加藤:我々ぐらいの世代だとさ、子どもの頃に「遠足のお菓子は300円まで」というのを経験してるじゃない。お金の裁量と、好きなお菓子を買っていいという判断の裁量が与えられて、まあ子どもながらに……とっても悩み、「ああでもない、こうでもない」買い物かごに何度も出し入れして試行錯誤したよね?

消費税もない時分だったけど、結局300円ぴったり使い切るのは難しくて290円くらいに落ち着いて、自分的にはすごく納得してたんだけど、いざ当日になってみると思いも寄らないお菓子を持ってきた奴がいるのを見て、「次の遠足ではあれ買おう」と誓う……みたいなサイクルを回したわけだ。

仕事でも同じように金額と範囲の裁量が与えられて、事後に上司がハンコを押すにしても基本的には通る、という経験を繰り返すことで、きっと自発的に動く練習になると思う。指示待ち族の人は、自分がどれだけのことをやっていいか、幅がわからなくて怖がってる部分もあるんじゃないかな。だから「○万円です」と幅は決められていて、そこからは自分で選択肢を生み出す、という練習があってもいいんじゃないかな。

負けをちゃんと弔い、リーグ戦で評価する

角田:指示待ち族か、究極的には失敗が怖いわけだよね。「失敗してもいいから」みたいな空気を作ればチャレンジへのモチベーションも上がるのかな。

加藤:その時にも裁量とセットにしないとよくないと思う。そうでないと、どこまで失敗していいのかわからないでしょう。

角田:なるほどね。

加藤:決まった裁量の範囲で、自分が「選択肢を生み出す」立場になることが大事なんだと思うな。ランチに行って「どのメニューも惹かれないな」みたいなことを言うくらいなら、自分で新しいメニューを作る側になってみたらいいんだよ。

「スペシャル定食は人気があるけど、作るのが大変だからあまり注文してほしくないな」とか「ランチ単品じゃ儲からないな。ドリンクセットで少しでも客単価を上げよう」みたいなことを実際に体感したり、自分の考えたメニューが客に選んでもらえるか不安だけれども俎上に乗せたり、そういう経験が「指示待ち」から脱出するには必要なんだと思う。

角田:そういう風に誰かがチャレンジをすると、成功する人もいるけれど失敗する人も当然いるよね。失敗した人への対応が、その職場の空気にとってすごく重要なんだと僕は思う。

というのも、僕がTBSにいた頃にgoomoという子会社を作ったんだけど、いろいろあってうまくいかなくて、僕を含めてgoomoの創立メンバー何人かはその後TBSを辞めているんだ。

それで僕が辞めた時、TBSの年頭の社員集会で、代表が僕らのことを話題にして「あの時に若者の勇み足を助けていたら、もっといい結果になったかもしれない。それを後悔しているから、これからはトライする若者を上の役職の人もできるだけ応援していこう」みたいなことを言っていたんだって。それを聞いて僕はやっぱり嬉しかったし、TBS自体も最近は上向きになっている。

だから、突っ走って討ち死にした人たちをちゃんと弔ってあげることで、相対的に指示待ち族を減らせるんじゃないかな。

加藤:加藤の言い方では、『仕事人生あんちょこ辞典』にも書いているように「トーナメント発想かリーグ戦発想か」ということになるかな。トーナメント発想で考えると一回負けたら終わり、だけど、リーグ戦だと考えれば連戦連勝ではなくても優勝できるわけだよね。会社の仕事は基本的にリーグ戦なんだと思ってる。

それを概念として理解していても、一方で試合数が担保されてないとリーグ戦にならないよね。だから会社とか組織の上の方が「今回は負けだった。じゃあ次は勝てるよう頑張ろう」と次の試合の機会を渡してあげる感覚を持っていないと、下は硬くなっちゃうよね。

角田:硬くなったら屍も増えていくし、それを見て指示待ちに留まる人もさらに増えていくよね。

加藤:だからこそ、1人ひとりに判断の裁量とお金の裁量とセットで渡して、それを使う機会を何試合分か担保してあげる仕組みがあると、自分から動きやすくなるのではないでしょうか。

「指示待ち族」でべつにいいんじゃないですか?

角田:別視点から質問に答えると、質問者の方は「能力がある人を採用している」つもりだけど、実際に入社させると「指示待ち族が多い」と思っているわけでしょう。ということは、じつは指示待ち族的な人を「能力が高い」と評価して、採用してる可能性はないかな。

この方は中小企業とのことだから当てはまるかわからないけれど、大企業は比較的優秀な人が多いのだけど優秀な人が多い会社ほどイノベーションが起こらない肌感があるな。

加藤:なるほどなるほど。

角田:優秀な人って、環境を理解してそこに合わせる能力に長けてるわけだよ。それは実際に仕事の能力なんだけど、だからこそ指示待ち族が多くなるんじゃないかな。

だから僕はTBSに感謝しているんだ。「ああ、こいつは絶対に指示を守らないタイプだな」って雰囲気を面接の時に思い切り出していたのに採用してくれたわけだから。テレビだから「なんか面白そう」と思って採ったのかもしれないね。指示待ちじゃないタイプだったからこそ辞めてしまった、という面もあるんだろうけれど。

加藤:いわゆる「優秀な人」ゆえに「指示待ち族」に近づいてしまう、ということはあるかもしれないね。

指示待ち族じゃない人を採用したいなら

角田:いろいろな会社の人と会う機会があるけれど、「ああ、この人は優秀だけど、周りを分析した通りに動いている、指示通りに働く人だな」と感じることは多いよ。

だから指示待ち族じゃない人を採用したいなら、そのラインを越える人を採用する冒険をしないといけないんだけど、問題はそういうタイプを採用してもイノベーティブまで達するかわからないことだよね。ただのわがままで終わる可能性もある。そもそも、上司の指示の範囲内の中でベストを尽くせる人は、相当能力が高い人なんだよね。

加藤:先日、「ゲーム」と「プレイ」は違う、という話を聞いたんですよ。

遊びには「ゲーム」と「プレイ」の2種類がある。あらかじめルールが決められていて、その枠の中で遊ぶのが「ゲーム」。対する「プレイ」は、ルールが無いところからルールそのものもプレイを通じて生成されてくる。そのうちにプレイがゲームへと固まっていくわけだけど、逆にでも、「ゲームでは優秀だけどプレイができない人」はもちろんいるとして、それが指示待ち族なのかな。

No image

角田:逆に言えばプレイから新しいゲームを創ることはできないけれど、ゲームで高得点とるのは得意なわけだよね。だから質問者の方に対して、指示待ち族タイプでもべつにいいんじゃないの?と思う気持ちもじつはある。

加藤:会社の業績もいいとおっしゃっているし、いまのままでもいいと。

角田:そう。結果として指示待ちタイプな人を「優秀だ」と思って選んでいるわけだけど、だからこそ例えば江戸幕府って260年も続いたわけだしさ。

加藤:確かに、そういう人がいないと組織がグダグダになるからね。

角田:もし質問者の方の上役、例えば社長さんが頭のネジが外れたタイプの経営者なんだとしたら、他の社員はべつに指示待ち族でもいいと思うな。

本連載では大学生や、若手社会人の皆さんからお悩みを募集しています。仕事、就活、受験、生き方……などなど、角田氏と加藤氏に相談したいことをお書きください。応募はこちらからお願いいたします。また次回のあんちょこ配信は6月24日(金)20時から、こちらのYouTubeチャンネルにて開催です。

(角田 陽一郎,加藤 昌治)

角田 陽一郎,加藤 昌治

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加